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薬剤師

ベンゾジアゼピン受容体作動薬(睡眠薬)|図解でわかる作用機序 副作用はなぜ起きる?

ひゃくさん

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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。睡眠薬のベンゾジアゼピン受容体作動薬は、ふらつきや健忘、依存など、気をつける副作用が多い薬です。その副作用がなぜ起きるのかを、作用機序の図と添付文書から整理します。主な出典は、レンドルミン、マイスリー、ルネスタの添付文書、PMDAの「医薬品適正使用のお願い」、日本睡眠学会と日本老年医学会のガイドラインです。

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どんな薬? 脳の活動をおさえるGABAの働きを強めて、眠りやすくする薬です。ブロチゾラム、ゾルピデム、エスゾピクロンなどがあります。

副作用はなぜ起きる? 添付文書には、翌朝以後の眠気、前向性健忘、依存、呼吸抑制が載っています。

何に気をつける? 主に、お酒と一緒に飲まないこと、長く続けないこと、高齢者の転倒の3つです。急にやめると離脱症状が出ることがあります。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、どうやって効く?

GABAが受容体に結合するとCl⁻が神経細胞の中に入り、神経の活動がおさえられること。ベンゾジアゼピン受容体作動薬がBZD結合部位に結合すると、GABAの作用が強まる(Cl⁻の流入を促進すると考えられている)ことを、ふだんと薬を飲んだときで比べた図

上の図のとおり、脳の神経細胞の膜には、GABAA受容体があります。GABA(ギャバ)は、脳の活動をおさえる物質です(レンドルミン18.1)。GABAが受容体に結合すると、Cl⁻(塩化物イオン)の通り道が開いて、Cl⁻が神経細胞の中に入ります。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、この受容体のBZD結合部位(ベンゾジアゼピン結合部位)に結合する薬です。ルネスタの添付文書(18.1)は、エスゾピクロンが結合したあと、GABAによるCl⁻の神経細胞内への流入を促進し、GABAの作用を増強する、と「考えられる」と書いています。マイスリーの添付文書(18.1)は、ゾルピデムがω1(BZD1)受容体に選択的な親和性を示し、GABAA系の抑制機構を増強すると考えられる、と書いています。

ブロチゾラムはベンゾジアゼピン系、ゾルピデムとエスゾピクロンは非ベンゾジアゼピン系です(睡眠薬GL2013の分類)。非ベンゾジアゼピン系は、Z薬とも呼ばれます。この記事では、3剤をまとめてベンゾジアゼピン受容体作動薬と呼びます。

副作用はなぜ起きる?

ベンゾジアゼピン受容体作動薬を飲むことを起点に、持ち越し、健忘・もうろう状態、依存と離脱、呼吸抑制の4つの副作用を並べた図。副作用の箱には「ことがある」「おそれ」の限定語つき。健忘・もうろう状態、依存と離脱、呼吸抑制は、しくみが添付文書に記載なしと注記している

持ち越し・ふらつき・転倒

なぜ? 3剤の添付文書は、いずれも「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある」と書いています(ブロチゾラム8.1、ゾルピデム8.2、エスゾピクロン8.2。エスゾピクロンは「翌朝以降」、ゾルピデムは「反射運動能力などの低下」)。睡眠薬GL2013は、持ち越し効果は消失半減期より長く持続する可能性がある、と書いています(Q6の勧告)。高齢者の項(9.8)には、3剤とも運動失調の記載があります。

どんな症状? 眠気、頭の働きの低下、ふらつきです(Q6の患者向け解説)。転倒は、ゾルピデムに頻度不明で載り、「転倒により高齢者が骨折する例が報告されている」と注記があります。

どう防ぐ・どう伝える?

  • 就寝の直前に服用します。睡眠途中で一時的に起床して仕事等をする可能性があるときは、服用させません。服用したら、すぐ就床するよう伝えます。
  • 運転など危険を伴う機械の操作は控えるよう伝えます(8.)。
  • 高齢者には少量から始めます。ゾルピデムは1回5mgから(1回10mgを超えない)、エスゾピクロンは1回1mg(増量しても2mgを超えない)です。ブロチゾラムは、9.8に「少量から投与を開始するなど慎重に」とあり、数値の規定はありません。
くわしい条件

3剤の消失半減期(試験の条件は別々です)

ブロチゾラムは約7時間です(健康成人・経口投与、16.1)。ゾルピデムは1.78〜2.30時間です(健康成人6例・2.5〜10mgの単回投与、16.1.1)。エスゾピクロンは4.83〜5.16時間です(日本人健康成人男性・1〜3mgを7日間反復投与した7日目、16.1)。直接比較した試験ではありません。

睡眠薬GL2013の患者向け解説(Q4、Q6)

作用時間が最も短い睡眠薬であっても、服用後6〜7時間は眠気や頭の働きの低下が持続することが示されている、と書いています。夜中に目が覚めたときの頓用は、超短時間作用型の睡眠薬を起床時刻の6〜7時間前までに服用することが望ましい、とされています(Q6の勧告)。一部の睡眠薬には脱力やふらつきなどの副作用があるため、転倒を避けるためにも服用後は速やかに就床する、と書いています(Q4)。

高齢者の運動失調の記載(9.8)

ブロチゾラムは「運動失調等の副作用が発現しやすい」、ゾルピデムは「運動失調が起こりやすい」、エスゾピクロンは「血中濃度が高い傾向が認められており、運動失調等の副作用が起こりやすい」です。ゾルピデムのインタビューフォームは、高齢者で血中濃度(Cmax、AUC)が上がっていることが、ふらつきの発現頻度の高さに影響していることは否定できない、と書いています。

そのほかの頻度

エスゾピクロンは浮動性めまいが1〜3%未満です。ブロチゾラムとエスゾピクロンの添付文書には、転倒の語はありません。

前向性健忘・もうろう状態

なぜ? 睡眠薬GL2013の患者向け解説(Q32)は、一時的な記憶障害や、不完全に目覚めたためのもうろう状態が原因と考えられている、と書いています。ゾルピデムの添付文書は、もうろう状態と睡眠随伴症状(夢遊症状等)は用量依存的にあらわれる、と書いています(7.1)。

どんな症状? 十分に覚醒しないまま、車の運転、食事等を行い、その出来事を記憶していない、という報告があります(ゾルピデム11.1.3、ブロチゾラム11.1.2、エスゾピクロン11.1.6)。ゾルピデムは、死亡を含む重篤な自傷・他傷行為、事故等の報告もあります。ゾルピデムとエスゾピクロンは、この副作用を警告に書いています。

どう防ぐ・どう伝える?

  • 服用後は直ぐ就寝させ、睡眠中に起こさないよう注意します。薬効が消失する前に活動を開始する可能性があるときは、服用させません(ゾルピデム11.1.3、7.2)。
  • 睡眠薬GL2013は、この副作用のリスクが高い多剤併用の人、高齢者、飲酒者には、適切な服用法を指導し、少量から慎重に投与する、としています(Q32の勧告)。
  • ゾルピデムは、睡眠随伴症状(夢遊症状等)として異常行動を発現したことがある人が禁忌です(2.5)。エスゾピクロンは、同じ人について投与の中止を検討します(9.1.5)。
くわしい条件

頻度と警告

ゾルピデムは、一過性前向性健忘が0.1〜5%未満、もうろう状態と睡眠随伴症状が頻度不明です(11.1.3)。ブロチゾラムに警告の項はなく、11.1.2に重大な副作用として載っています。

ゾルピデムの7.2と5mg/10mg

十分な睡眠時間がとれなかった場合や、睡眠途中に一時的に起床して仕事等を行った場合に、健忘があらわれたとの報告があります(7.2)。インタビューフォームによると、国内でもうろう状態等が報告された症例では、5mgより10mgを飲んでいた人が多かったとのことです(報告された症例の中での比較です)。

依存と離脱症状

なぜ? PMDAの「医薬品適正使用のお願い」(No.11、2024年5月更新)は、ベンゾジアゼピン受容体作動薬には、承認用量の範囲内でも漫然とした長期間の服用により身体依存が生じることがあり、減量や中止時にさまざまな離脱症状があらわれることがある、と書いています。

どんな症状? PMDAが挙げる主な離脱症状は、不眠、不安、焦燥感、頭痛、嘔気・嘔吐、せん妄、振戦、痙攣発作などです。

どう防ぐ・どう伝える? PMDAの注意は3つです。

  • 漫然とした継続投与による長期使用を避けます。投与を継続する場合は、治療上の必要性を検討します。
  • 用量を守り、類似薬の重複処方がないことを、他の医療機関の処方も含めて確認します。長期投与、高用量投与、多剤併用で、依存形成のリスクが高まります。
  • 中止するときは、漸減、隔日投与等で慎重に減薬・中止します。急に中止すると、原疾患の悪化に加えて、重篤な離脱症状があらわれます。患者さんには、自己判断で中止しないよう指導します。
くわしい条件

添付文書の離脱症状の記載

  • ブロチゾラム: 不眠、不安等(11.1.3、頻度不明)。「反跳」の語は、添付文書にありません。
  • ゾルピデム: 反跳性不眠、いらいら感等(11.1.1、0.1〜5%未満)。
  • エスゾピクロン: 不安、異常な夢、悪心、胃不調、反跳性不眠等(11.1.2、頻度不明)。

耐性

睡眠薬GL2013のQ33(耐性)の勧告には、ベンゾジアゼピン系薬物の耐性の形成にはGABAA受容体の機能変化が関与していると推測される、とあります。

呼吸抑制

なぜ? 呼吸抑制は、3剤とも重大な副作用に載っています(ブロチゾラム11.1.4、ゾルピデム11.1.4、エスゾピクロン11.1.3。いずれも頻度不明)。関係する記載は麻酔剤との併用の項(10.2)で、ゾルピデムは「相加的に呼吸が抑制される可能性がある」です。

どんな症状? 肺性心、肺気腫、気管支喘息、脳血管障害の急性期などで呼吸機能が高度に低下している人では、炭酸ガスナルコーシスを起こすおそれがあります(9.1.1)。ゾルピデムとエスゾピクロンは「起こしやすい」、ブロチゾラムは「おそれがある」と書いています。

どう防ぐ・どう伝える?

  • 呼吸機能が高度に低下している人には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き、投与しません(9.1.1)。
  • 麻酔剤との併用では、呼吸抑制があらわれることがあります(ゾルピデム10.2、エスゾピクロン10.2)。
  • 睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の患者さんについて、睡眠薬GL2013のQ17の勧告は、睡眠中の呼吸状態の悪化が報告されている一方、軽症〜中等症では悪化しないとの報告もあり見解は一致していない、重症例では影響を否定できないためCPAP等で十分に管理した上で投与が望まれる、と書いています。
くわしい条件

睡眠時無呼吸症候群(Q17の患者向け解説)

睡眠薬によって上気道の筋肉の緊張が低下してふさがりやすくなる危険性が指摘されている、と書いています。これは睡眠時無呼吸症候群の患者さんについての記述です。

筋弛緩

なぜ? ベンゾジアゼピンには筋弛緩作用がある、と総説は書いています(Sigel et al. Trends Pharmacol Sci. 2018;39:659-671)。レンドルミン18.1は、既存のベンゾジアゼピン系薬剤と比べて筋弛緩作用は比較的弱い(動物)と書き、高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(p.46)は、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロンは筋弛緩作用が弱い、と書いています。

どんな症状? 添付文書の「その他の副作用」の骨格筋の欄には、ブロチゾラムのだるさ・倦怠感と下肢痙攣、ゾルピデムの下肢脱力感と筋痙攣があります(11.2)。エスゾピクロンには骨格筋の欄はなく、「その他」に筋肉痛(頻度不明)があります(11.2)。

どう防ぐ・どう伝える? 重症筋無力症は、3剤とも禁忌です(ブロチゾラム2.2、ゾルピデム2.3、エスゾピクロン2.2)。ゾルピデムとエスゾピクロンの添付文書は、理由を「筋弛緩作用により症状を悪化させるおそれ」と書いています。ゾルピデムのIFは、マウスで筋弛緩作用はベンゾジアゼピン系睡眠薬よりも弱いことが認められたが、安全性を考慮しベンゾジアゼピン系睡眠薬の使用上の注意に準じて記載している、と書いています(禁忌2.3の解説)。

アルコールとの併用

なぜ? 3剤とも、アルコールは併用注意です(10.2)。ゾルピデムの添付文書は、アルコールはGABAA受容体に作用すること等により中枢神経抑制作用を示すため、併用により相互に中枢神経抑制作用を増強することがある、と書いています。ブロチゾラムは、併用でクリアランスの低下と排泄半減期の延長がみられている、と書いています。

どんな症状? ゾルピデムは「精神機能・知覚・運動機能等の低下が増強することがある」、ブロチゾラムは「鎮静作用、倦怠感等が増強されるおそれ」、エスゾピクロンは「相互に作用を増強することがある」です。睡眠薬GL2013の患者向け解説は、ふらつき、物忘れ、おかしな行動などを生じやすくなる、と書いています(Q8)。エスゾピクロンは、アルコールと併用したときの過量投与が致死的となることがあります(13.1)。

どう防ぐ・どう伝える? ブロチゾラムは「アルコールとの服用は避けさせることが望ましい」、ゾルピデムは「できるだけ飲酒を控えさせること」と書いています(10.2)。睡眠薬GL2013の勧告は、アルコールと睡眠薬の併用は副作用の頻度と強度を高める可能性があるため原則禁忌としたうえで、アルコールを代謝した後の服用は可能だが、代謝には一般に考えられているより長時間を要する、と書いています(Q8)。

高齢者で特に気をつけること

高齢者の股関節骨折の、使っていない人に比べた相対リスクが、ベンゾジアゼピン系で1.52倍、Z薬で1.90倍だったことを示すメタ解析の図。両者を直接比べた研究はなく、著者の結論は、両者のリスクの差は小さい

なぜ? 添付文書の高齢者の項は、3剤とも運動失調などの副作用が起こりやすいと書いています(9.8)。ゾルピデムとエスゾピクロンは、高齢者で血中濃度が上がることが数字で書かれています(16.6.3)。

どんな症状? 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015(p.44)は、ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬は認知機能低下、転倒・骨折、日中の倦怠感などのリスクがあるので可能な限り使用は控え、特に長時間作用型は使用するべきでない、としています。非ベンゾジアゼピン系にも転倒・骨折のリスクが報告されており、漫然と長期投与せず、少量にとどめるなど慎重に使う、としています。対象は、75歳以上と、75歳未満でもフレイルから要介護状態の高齢者です。上の図は、高齢者の股関節骨折のメタ解析で、著者は両者のリスクの差は小さい、と結論しています(Donnelly et al. PLoS One. 2017;12:e0174730)。

どう防ぐ・どう伝える? 高齢者には少量から始めます。Z薬なら安全、とは言えません。

くわしい条件

高齢者の血中濃度(試験の条件は別々です)

ゾルピデムは、高齢患者7例(67〜80歳、平均75歳)に5mgを就寝直前に投与したとき、健康成人に比べて、Cmaxで2.1倍、AUCで5.1倍、消失半減期で2.2倍でした(16.6.3)。エスゾピクロンは、日本人高齢者(平均69歳)に3mgを7日間反復投与したとき、健康成人と比べて、CmaxとAUC0-24がいずれも32%増え、消失半減期は64%延びました(16.6.3)。

ガイドラインの対象とメタ解析の数字

Donnelly et al.は、ベンゾジアゼピン系とZ薬を直接比べた研究はなく、使っていない人に比べた調整済みRRが、ベンゾジアゼピン系の使用で1.52(95%CI 1.37-1.68)、Z薬で1.90(95%CI 1.68-2.13)で、新しく処方された人でリスクが最も高い、と結論しています。含まれた研究は非ランダム化で、Z薬はザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロンを指し、エスゾピクロンは含まれません。Treves et al. Age Ageing. 2018;47:201-208は、Z薬の使用は骨折のリスク上昇と関連し(OR 1.63、95%CI 1.42-1.87)、転倒は約2倍になる傾向があるが有意ではなかった(OR 2.40、95%CI 0.92-6.27)と報告しています。含まれた研究は観察研究で、交絡の影響を受けやすい、と著者は限界を書いています。

睡眠薬GL2013 Q1の勧告

非ベンゾジアゼピン系はベンゾジアゼピン系に比べて副作用の頻度は低いが、ふらつきにはなお留意する必要がある、と書いています(2013年の記述です)。

機序とは別に注意する副作用

3剤とも、重大な副作用に肝機能障害と黄疸があります。エスゾピクロンには、ショック、アナフィラキシーもあります。せん妄は、ゾルピデムとエスゾピクロンでは重大な副作用の「精神症状、意識障害」に、ブロチゾラムでは「その他の副作用」に載っています。「精神症状、意識障害」には、せん妄のほか、錯乱、幻覚、興奮なども載っています。ほかにもあります。

同じ薬効群の薬は、どう違う?

3剤を、添付文書で確認できた範囲で比べます。禁忌は、表のあとに全項目を書きます。

薬 効能と用量 特徴
ブロチゾラム(レンドルミン) 不眠症、麻酔前投薬。不眠症は1回0.25mgを就寝前 ベンゾジアゼピン系。消失半減期は約7時間。警告の項はない
ゾルピデム(マイスリー) 不眠症(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く)。1回5〜10mg、高齢者は5mgから、1日10mgを超えない 非ベンゾジアゼピン系。消失半減期は健康成人で約2時間(単回)。警告あり
エスゾピクロン(ルネスタ) 不眠症。成人は1回2mg、高齢者は1回1mgを就寝前。成人3mg、高齢者2mgを超えない 非ベンゾジアゼピン系。消失半減期は約5時間(反復)。警告あり。食事と同時または食直後の服用は避ける(7.4)

禁忌(2.)の全項目

  • ブロチゾラム(2項目): 急性閉塞隅角緑内障(抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがある)、重症筋無力症(重症筋無力症を悪化させるおそれがある)。
  • ゾルピデム(5項目): 本剤の成分に対する過敏症の既往歴、重篤な肝障害、重症筋無力症、急性閉塞隅角緑内障、本剤により睡眠随伴症状(夢遊症状等)として異常行動を発現したことがある患者。
  • エスゾピクロン(3項目): 本剤の成分またはゾピクロンに対する過敏症の既往歴、重症筋無力症、急性閉塞隅角緑内障。

ゾピクロン(アモバン)などは、それぞれの添付文書で同じ項目を見てください。

オレキシン受容体拮抗薬とは、どう違う?

オレキシン受容体拮抗薬は、覚醒を促すオレキシンの働きを止める薬です。3剤と、オレキシン受容体拮抗薬4剤(ベルソムラ、デエビゴ、クービビック、ボルズィ)の添付文書を、同じ項目で見比べます。オレキシン受容体拮抗薬の欄は、4剤の本文を検索して確認した内容です。

項目 ベンゾジアゼピン受容体作動薬 オレキシン受容体拮抗薬
作用機序(18.1) GABAの働きに関わる(18.1の書き方は剤ごとに違う) オレキシンA・Bが受容体に結合するのを阻害し、覚醒から睡眠へ移行させると考えられる
依存・離脱 3剤とも、8.で漫然とした長期使用を避けるよう書き、重大な副作用に依存性がある 「薬物依存」「離脱」の語は4剤の本文にない。8.2に漫然と投与しない旨がある
前向性健忘・もうろう状態 3剤とも重大な副作用に載っている 「健忘」「もうろう」の語は4剤にない。睡眠時随伴症は、ベルソムラ、デエビゴ、クービビックの「その他の副作用」にある
筋弛緩・呼吸 重症筋無力症は3剤とも禁忌。呼吸機能が高度に低下した人には、治療上やむを得ない場合を除き投与しない(9.1.1) 「重症筋無力症」の語は4剤にない。呼吸機能障害は9.1にあり、禁忌には入っていない
翌朝の眠気・アルコール 3剤とも、8.に翌朝以後の眠気などの記載があり、アルコールは併用注意(10.2) 4剤とも、アルコールは併用注意(10.2)。ベルソムラ、デエビゴ、クービビックの8.1に「服用の翌朝以後に及び」とある。ボルズィの8.1に「翌朝」の語はない

表は、添付文書に書かれている内容の比較です。語が見当たらないことは、その副作用が起こらないことを示すものではありません。

くわしい条件

作用機序(18.1)

ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、ルネスタが「GABAの作用を増強」、マイスリーが「GABAA系の抑制機構を増強」、レンドルミンが「GABAを介して」抑制すると書いています。ベルソムラの添付文書は、スボレキサントがγ-アミノ酪酸(GABA)の受容体に対して親和性を示さなかった(Ki > 10μM)、と書いています。ダリドレキサントは、OX1RとOX2Rの両方の活性を抑制するデュアルオレキシン受容体拮抗薬、と書かれています。

依存・離脱

8.2は「症状が改善した場合は、本剤の投与継続の要否について検討し、本剤を漫然と投与しないよう注意すること」です(4剤)。

健忘・もうろう状態

睡眠時随伴症は、スボレキサント(海外臨床試験・高用量群を含む)、レンボレキサント、ダリドレキサントの「その他の副作用」にあります(11.2)。ボルノレキサントにはありません。デエビゴ17.1.2は、健康被験者(55歳以上)で投与約4時間後に10mgで注意力及び記憶力の低下が認められた、と書いています(外国人データ)。

呼吸機能障害(9.1)

臨床試験を実施していない、使用経験がない、など剤ごとに内容が違います。

翌朝の眠気(8.1)

スボレキサント、レンボレキサント、ダリドレキサントは「服用の翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある」です。ボルノレキサントは「不眠症あるいは本剤の影響により、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある」で、「翌朝」の語はありません。

アルコール(10.2)

スボレキサント、レンボレキサント、ボルノレキサントは「飲酒は避けさせる」、ダリドレキサントは「飲酒に注意する必要がある」です。ベンゾジアゼピン受容体作動薬は、ゾルピデムが「できるだけ飲酒を控えさせる」、ブロチゾラムが「アルコールとの服用は避けさせることが望ましい」です。

高齢者の用量

ゾルピデムは1回5mgから、エスゾピクロンは1回1mgで、ブロチゾラムは数値の規定がありません。オレキシン受容体拮抗薬で高齢者の用量が6.にあるのはスボレキサントだけです(1日1回15mg)。

患者さんには、どう伝える?

  • 「飲んだら、すぐ布団に入ってください。起きて何かをすると、あとで覚えていないことがあります。」
  • 「お酒と一緒には飲まないでください。ふらつきや物忘れが出やすくなります。」
  • 「朝まで眠気が残るときは、運転を控えて、相談してください。」
  • 「長く飲んでいる薬を、自分の判断で急にやめないでください。眠れなくなったり、不安が強くなったりすることがあります。やめ方は、医師や薬剤師に相談してください。」

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ご利用にあたって この記事は、薬剤師など医療従事者に向けて、添付文書や公開資料をもとに一般的な情報をまとめたものです。個々の患者さんへの投与や治療の判断は、最新の添付文書と、医師・薬剤師の判断に従ってください。内容の正確さには注意を払っていますが、正確性や最新性を保証するものではありません。この記事の情報を利用したことで生じたいかなる損害についても、当ブログは責任を負いかねます。

よくある質問

Z薬(非ベンゾジアゼピン系)なら、ベンゾジアゼピン系より安全ですか?

安全とは言い切れません。日本老年医学会の高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015は、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬にも転倒・骨折のリスクが報告されており、漫然と長期投与せず、少量の使用にとどめるなど慎重に使う、と書いています。高齢者の股関節骨折のメタ解析(2017年)は、ベンゾジアゼピン系でRR 1.52、Z薬でRR 1.90で(使っていない人と比べた値で、両者を直接比べた研究はありません)、著者は両者のリスクの差は小さい、と結論しています。一方、睡眠薬GL2013は、非ベンゾジアゼピン系ではベンゾジアゼピン系に比べて副作用の頻度は低いが、ふらつきにはなお留意する必要がある、と書いています。

睡眠薬を急にやめると、どうなりますか?

PMDAの「医薬品適正使用のお願い」は、ベンゾジアゼピン受容体作動薬には、承認用量の範囲内でも漫然とした長期間の服用により身体依存が生じることがあり、減量や中止のときに離脱症状があらわれることがある、と書いています。主な離脱症状は、不眠、不安、焦燥感、頭痛、嘔気・嘔吐、せん妄、振戦、痙攣発作などです。急に中止すると重篤な離脱症状があらわれるため、漸減や隔日投与等で慎重に減薬・中止します。

睡眠薬を飲む日に、お酒を飲んでもいいですか?

ブロチゾラムの添付文書は「アルコールとの服用は避けさせることが望ましい」、ゾルピデムの添付文書は「できるだけ飲酒を控えさせること」、エスゾピクロンの添付文書は「相互に作用を増強することがある」と書いています。睡眠薬GL2013の勧告は、アルコールと睡眠薬の併用は副作用の頻度と強度を高める可能性があるため原則禁忌としたうえで、アルコールを代謝した後の服用は可能だが、代謝には一般に考えられているより長時間を要する、と書いています。

薬の使い分けをPDFにまとめています。気になる方は薬の使い分けPDFもどうぞ。

出典・更新日

更新日:2026年10月2日。

  • レンドルミン錠0.25mg 添付文書(2025年10月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00052533:2.、6.、7.1、8.、9.1.1、9.8、10.2、11.1、11.2、16.1、18.1
  • マイスリー錠 添付文書(2023年6月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00046478:1.、2.、6.、7.、8.、9.1.1、9.8、10.2、11.1、11.2、16.1.1、16.6.3、18.1
  • ルネスタ錠 添付文書(2024年12月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00060331:1.、2.、6.、7.、8.、9.1、9.8、10.2、11.1、11.2、13.、16.1、16.6.3、18.1
  • ベルソムラ錠 添付文書(2026年8月改訂、第6版)japic_code=00066563、デエビゴ錠 添付文書(2025年12月改訂、第4版)japic_code=00068463、クービビック錠 添付文書(2025年12月改訂、第4版)japic_code=00071539、ボルズィ錠 添付文書(2025年11月改訂、第2版)japic_code=00071820(いずれもKEGG MEDICUS):2.、6.、8.、9.1、10.2、11.2、17.1.2(デエビゴ)、18.1
  • マイスリー錠 医薬品インタビューフォーム(2026年8月改訂、第35版)。JAPIC IF00006954:用法及び用量の設定経緯・根拠、用法及び用量に関連する注意の解説、禁忌(2.3)の解説
  • PMDA. PMDAからの医薬品適正使用のお願い No.11「ベンゾジアゼピン受容体作動薬の依存性について」。2017年3月、2024年5月更新
  • 厚生労働科学研究班・日本睡眠学会ワーキンググループ 編. 睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン. 2013年10月22日改訂:Q1、Q4、Q6、Q8、Q17、Q32、Q33
  • 日本老年医学会 編. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015:p.44、p.46
  • Sigel E et al. Trends Pharmacol Sci. 2018;39:659-671
  • Donnelly K et al. PLoS One. 2017;12:e0174730
  • Treves N et al. Age Ageing. 2018;47:201-208

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ひゃくさん
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Instagramフォロワー:13万人/エムスリー薬剤師でコラム執筆
病院で働く薬剤師。薬剤師国家試験合格までの経験や薬剤師として学んだ事感じた事をブログやInstagramで発信しています。Instagramフォロワー13万人
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