KCl(塩化カリウム注射液)の投与速度・濃度・1日量とmEq計算
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。塩化カリウム注射液は、希釈後の濃度、投与速度、1日量に上限がある薬です。添付文書の上限値、急速投与が禁止の理由、mEqとmLの換算、国試で出る計算までまとめました。
濃度と速度は? カリウムとして40mEq/L以下に必ず希釈し、20mEq/hrを超えない速度で投与します(KCL注キット「テルモ」、KCL補正液1mEq/mL)。
1日量は? KCL注20mEqキット「テルモ」とK.C.L.点滴液15%は、カリウムとして100mEqを超えないこと。KCL補正液1mEq/mLは記載なしです。
急速静注は? 禁止で、点滴専用です。希釈せずにワンショット静注すると、不整脈や心停止のおそれがあります。
濃度・速度・1日量の上限は?
塩化カリウム注射液は、必ず希釈して点滴静脈内注射する薬です。上限値の書き方は製品の添付文書ごとに違うので、製品名とセットで覚えます。
| 製品 | 濃度・速度の上限 | 1日量の上限 |
|---|---|---|
| KCL注10mEq/20mEqキット「テルモ」 (「7.用法及び用量に関連する注意」) |
カリウムイオン濃度として40mEq/L以下に必ず希釈し、十分に混和して投与。ゆっくり静脈内に投与し、カリウムイオンとして20mEq/hrを超えない | カリウムイオンとして100mEqを超えない |
| KCL補正液1mEq/mL(大塚製薬工場) (「7.用法及び用量に関連する注意」) |
カリウムイオン濃度として40mEq/L以下に必ず希釈し、十分に混和して投与。カリウムイオンとして20mEq/hrを超えない | 「用法及び用量に関連する注意」に1日量の記載なし |
| K.C.L.点滴液15%(丸石製薬) (「6.用法及び用量」と「14.適用上の注意」) |
6.「その液の濃度は0.3w/v%(カリウムとして40mEq/L)以下」「1分間8mLを超えない速度で静脈内注射する」(希釈した液の速度) 14.「カリウムとして40mEq/L以下の濃度に必ず希釈し、よく振盪混和した後、投与すること」「補正用として用いる場合の投与速度はカリウムとして20mEq/hrを超えないこと」 |
6.「1日の投与量は7.5g(カリウムとして100mEq)を超えない量とする」 |
- 3つとも、濃度の上限は40mEq/Lです。
- 濃度の上限と速度の上限は、別々の条件です。KCL注20mEqキット「テルモ」、KCL補正液1mEq/mL、K.C.L.点滴液15%のどの添付文書にも、速度を落とすことを条件に40mEq/Lを超える濃度にしてよい、という記載はありません。濃度と速度の両方を守ります。
- K.C.L.点滴液15%の「1分間8mL」は、希釈した液の速度です。40mEq/Lの液なら、40mEq/L×8mL/分=0.32mEq/分で約19.2mEq/hr(8mL/分=480mL/hr)になり、補正用の上限20mEq/hrとほぼ同じです。40mEq/Lより薄い液では、1分間8mLのほうが先に上限になります。
なぜ急速投与は禁止なの?
K.C.L.点滴液15%の添付文書には、次のように書かれています。
カリウム剤を急速静注すると、不整脈、場合によっては心停止を起こすので、点滴静脈内注射のみに使用すること
つまり、急速に静注すると不整脈が起こり、場合によっては心停止に至るので、点滴専用です。KCL補正液1mEq/mLでは、20mEq/hrを超えない理由が「高カリウム血症を起こすことがあるので」と書かれています。
医療安全情報も同じ注意です。PMDA医療安全情報No.19(2010年9月)は、希釈せずにワンショット静注すると、不整脈や心停止を起こすおそれがあり大変危険だと注意しています。日本医療機能評価機構の医療安全情報No.98(2015年1月)は、「カリウム製剤の急速静注は禁止です」と呼びかけています。
急速静注は禁止です。点滴専用で、必ず希釈して、上限の濃度と速度を守って投与します。
K.C.L.点滴液15%の添付文書には、次の患者への投与禁忌が書かれています(KCL注10mEq/20mEqキット「テルモ」とKCL補正液1mEq/mLには、禁忌の項目はありません)。
- 重篤な腎機能障害(前日の尿量が500mL以下、あるいは投与直前の排尿が1時間あたり20mL以下)
- 副腎機能障害(アジソン病)
- 高カリウム血症
- 高カリウム血性周期性四肢麻痺
- エプレレノン(高血圧症)またはエサキセレノンを投与中の患者
- 本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者
mEqとmLは、どう換算する?
カリウムは1価の陽イオンなので、カリウム1mmolは1mEqです。塩化カリウム(KCl)1分子からカリウムイオンは1個できるので、塩化カリウム1mmolからカリウム1mEqが得られます。国試ではK=39.0、Cl=35.5と与えられるので、塩化カリウムの分子量は74.5です。
1モル塩化カリウム液は1mL中に1mEqです。KCL注20mEqキット「テルモ」は20mL中に塩化カリウム1.491gを含み、カリウム20mEqです。K.C.L.点滴液15%は20mL中にカリウム40mEq(1mL中2mEq)です。計算に使う式は2つだけです。
- 濃度(mEq/L)=カリウムの量(mEq)÷薬液を含めた総液量(L)
- 速度(mEq/hr)=濃度(mEq/L)×点滴する量(L/hr)
mLとLの単位をそろえることと、薬液の量も総液量に含めることに気をつけます。
計算してみよう
ここの計算は、数値を変えた学習用の練習問題です。実際の指示や調製の手順は、各施設の手順と医師の指示に従ってください。
問題 1mEq/mLの塩化カリウム補正液30mL(カリウム30mEq)を輸液に混ぜます。カリウム濃度を40mEq/L以下にするには、薬液を含めた総液量を何mL以上にすればよいでしょうか。
答え 30mEq÷40mEq/L=0.75L=750mL以上です。補正液30mLも総液量に入ります。
問題 KCL注20mEqキット「テルモ」で、カリウム濃度30mEq/Lの点滴液を作りました。添付文書の上限(カリウムとして20mEq/hr、1日100mEq)で投与するとき、1時間あたりと1日あたり、何mLまで投与できますか。
答え 1時間あたりは20mEq/hr÷30mEq/L=0.667L/hrで、約667mL/hr以下です。1日あたりは100mEq÷30mEq/L=3.33Lで、約3,330mL以下です。速度と1日量は、どちらも守ります。
第98回 問331(要点を言い換え) 塩化カリウム点滴液15w/v% 10mLと生理食塩液500mLを、6時間かけて点滴静注します。患者に供給されるカリウム量は、1分間あたり何mmol(mEq)でしょうか。K及びClの原子量は39.0及び35.5とします(選択肢は0.45、0.22、0.11、0.055、0.028)。原文は厚生労働省の公表資料で確認できます。
解き方 15w/v%は100mL中に15gなので、10mLには1.5gの塩化カリウムが入っています。1.5g÷74.5g/mol≒0.020mol=20mmolで、カリウムは20mEqです。これを6時間=360分で投与するので、20mEq÷360分≒0.056mEq/分です。
答え 0.055(選択肢4)です。厚生労働省が公表している正答も4です。総液量は約510mLなので、濃度は約39mEq/L、速度は約3.3mEq/hrで、添付文書の上限(40mEq/L以下、20mEq/hr以下)に収まっています。
よくある間違いは?
医療安全情報にある、カリウム製剤の事例です。
- 混注の指示なのに、側管からワンショット静注した。カリウム製剤2アンプルを高カロリー輸液に混注する指示だったのに、患者ルートの側管からワンショット静注した事例があります(PMDA医療安全情報No.19)。
- 専用針を付けずに、注射器に吸い取った。KCL注20mEqキットに専用針を付けず、注射器に10mL吸い取って、側管から注入した事例があります(医療安全情報No.98)。KCL注10mEq/20mEqキット「テルモ」の添付文書には、必ず専用針を用いて輸液剤等に混ぜること、シリンジポンプでは使用しないこと、輸液セットの三方活栓や側管(ト字管等)から直接静注しないことが書かれています。
- 投与速度と投与方法が、指示に書かれていなかった。「K.C.L.点滴液15%+生理食塩液20mL、側管から」という指示で、中心静脈ラインの側管から注入し、途中でSpO2低下のアラームが鳴って中止した事例があります(医療安全情報No.98)。
- 容器の形や液の色で、他の薬と取り違えた。カリウム含有製剤は黄色だけではないこと、カリウム製剤は他の医薬品と区別して保管・管理することが呼びかけられています(PMDA医療安全情報No.19)。
くわしい条件
各製品の「用法及び用量」
KCL注10mEq/20mEqキット「テルモ」とKCL補正液1mEq/mLの「用法及び用量」には、電解質補液に添加して点滴静脈内注射するか、腹膜透析液に添加して腹腔内投与すると書かれています。K.C.L.点滴液15%の「用法及び用量」には、電解質補液の補正には電解質補液に添加して点滴静脈内注射すると書かれています。KCL注20mEqキット「テルモ」の中身は、1mL中にカリウム1mEqを含む原液(補正用1モル塩化カリウム液)で、キットでも使うときに必ず希釈します。
上限値の記載場所は、KCL注10mEq/20mEqキット「テルモ」とKCL補正液1mEq/mLは「用法及び用量に関連する注意」、K.C.L.点滴液15%は「用法及び用量」と「適用上の注意」です。時間あたりの上限は、キットと補正液が20mEq/hr、K.C.L.点滴液15%は希釈した液で1分間8mLに加えて、補正用なら20mEq/hrです。
K.C.L.点滴液15%の重要な基本的注意
「重要な基本的注意」には、筋緊張低下や心機能異常が出ることがあり、著明な高カリウム血症では心停止をきたすので、血清電解質と心電図の変化に注意すること、高カリウム血症があらわれたら投与を中止すること、点滴静脈内注射にのみ使用し、注射液の濃度と投与速度に注意することが書かれています。KCL注10mEq/20mEqキット「テルモ」とKCL補正液1mEq/mLには、禁忌の項目はありません。
医療安全情報の補足
日本医療機能評価機構の医療安全情報No.98(2015年1月)は、2011年1月から2014年11月までに、急速静注が禁止されているカリウム製剤を静脈ラインから急速静注した事例が5件報告されたとしています。PMDA医療安全情報No.19には、高カロリー輸液に混注する予定のリン酸二カリウム補正液(20mL)を、別に指示されていた薬剤の溶解液(5%ブドウ糖20mL)と勘違いして、側管からワンショット静注した事例もあります。このキット製剤は、先端が外ネジで付属の専用針しか接続できない、誤投与防止対策品として紹介されています。
医療安全情報No.98には、事例が発生した医療機関の取り組みとして、投与指示(投与量、投与方法、投与速度)のルールを守ること、薬剤マスタのカリウム製剤名に「点滴専用」や「要希釈」と記載すること、払い出し時に「急速静注禁止」の紙を入れることが紹介されています。
練習問題(換算)
問題 塩化カリウム1.491gに含まれるカリウムは何mEqですか。K及びClの原子量は39.0及び35.5とします。解き方 塩化カリウムの分子量は39.0+35.5=74.5です。1.491g÷74.5g/mol=0.0200mol=20mmolで、カリウムは1価なので20mEqです。
K.C.L.点滴液15%で例題2を解くと
希釈した液は1分間8mL(480mL/hr)を超えない速度なので、30mEq/Lの液では480mL/hr(30mEq/L×0.48L/hr=14.4mEq/hr)が先に上限になります。製品ごとに上限の書き方が違うので、計算の前に、どの製品の添付文書かを確認します。
よくある質問
塩化カリウム注射液の投与速度の上限はどれくらいですか?
KCL注10mEq/20mEqキット「テルモ」とKCL補正液1mEq/mLの添付文書では、カリウムイオンとして20mEq/hrを超えないことと書かれています。K.C.L.点滴液15%は、希釈した液を1分間8mLを超えない速度で静脈内注射し、補正用として用いる場合の投与速度はカリウムとして20mEq/hrを超えないこと、と適用上の注意に書かれています。
点滴を遅くすれば、40mEq/Lより濃くしてもいいですか?
いいえ。濃度の上限と速度の上限は別々の条件で、KCL注20mEqキット「テルモ」、KCL補正液1mEq/mL、K.C.L.点滴液15%のどの添付文書にも、速度を落とすことを条件に濃度を上げてよいという記載はありません。必ず40mEq/L以下に希釈します。
1日量の上限は、どの製品も100mEqですか?
製品によって違います。KCL注20mEqキット「テルモ」とK.C.L.点滴液15%には、カリウムとして1日100mEqを超えないことが書かれています。KCL補正液1mEq/mLの「用法及び用量に関連する注意」には、1日量の記載がありません。
出典
- KCL注10mEq/20mEqキット「テルモ」添付文書(2023年4月改訂)、KCL補正液1mEq/mL「大塚」添付文書(2023年10月改訂)、K.C.L.点滴液15%「丸石」添付文書(2023年11月改訂、PMDA掲載PDF)。最新の添付文書はPMDA 医療用医薬品情報検索で確認できます。
- PMDA医療安全情報No.19 カリウム(K)製剤の誤投与について. 2010年9月
- 日本医療機能評価機構 医療安全情報No.98 カリウム製剤の投与方法間違い. 2015年1月
- 厚生労働省 第98回薬剤師国家試験問題及び解答(平成25年3月実施) 問331

