DPP-4阻害薬|図解でわかる作用機序 副作用はなぜ起きる?
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。DPP-4阻害薬の副作用がなぜ起きるのかを、作用機序の図からたどります。主な出典は、各薬の添付文書とインタビューフォーム(IF)、日本糖尿病学会のRecommendation、論文です。
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どんな薬? DPP-4という酵素をふさぎ、体のインクレチン(GLP-1とGIP)が分解されにくくします。血糖が高いときのインスリン分泌を助ける飲み薬です。
副作用はなぜ起きる? 低血糖は、スルホニルウレア剤やインスリン製剤との併用で注意します。類天疱瘡は機序がほとんど不明、急性膵炎は理由が確認した資料に書かれていません。
何に気をつける? 水ぶくれやただれ(類天疱瘡)と、嘔吐を伴う激しい腹痛です。腎機能が低いときの用量は、薬によって調節の有無が違います。
DPP-4阻害薬は、どうやって効く?

食事をとると、消化管からインクレチンが出ます。インクレチンは、GLP-1とGIPというホルモンの総称です。血糖が高いときに、インスリンが出るのを助けます。ただし、DPP-4という酵素で短時間のうちに分解されます(上の図の01)。トラゼンタのIFは、GLP-1の血漿中での半減期はわずか数分、と書いています。
薬は、このDPP-4をふさぎます(上の図の02)。ジャヌビアの添付文書は、シタグリプチンがDPP-4を阻害してインクレチンの分解を抑え、活性型インクレチンの濃度を上げる、と書いています。その結果、血糖値依存的にインスリンの分泌を促す作用と、グルカゴンの濃度を下げる作用が強まります(18.1)。
トラゼンタとテネリアも、DPP-4の活性を阻害します(18.1)。
DPP-4は、多くの組織にある酵素でもあります。トラゼンタの添付文書は、腎臓、肝臓、腸、リンパ球、血管内皮細胞などに広く発現している、と書いています(18.1)。
副作用はなぜ起きる?

低血糖
なぜ? 日本糖尿病学会のRecommendationは、単独で用いた場合の低血糖リスクは低いが、インスリン製剤やスルホニルウレア剤などとの併用では重症低血糖に十分に注意する、としています。ジャヌビアの添付文書は、併用で本剤の血糖降下作用が増強されるため、低血糖のリスクが増加するおそれがある、と書いています(10.2)。ジャヌビアのIFは、単独療法でも低血糖が認められているため、低血糖の発現に注意する必要がある、と書いています(11.1.3の解説)。
低血糖は、ジャヌビア、トラゼンタ、テネリアの重大な副作用です(11.1)。ジャヌビアとテネリアは、インスリン製剤またはスルホニルウレア剤との併用で、重篤な低血糖症状があらわれ、意識消失に至った例も報告されている、と書いています。トラゼンタは、スルホニルウレア剤との併用で意識消失に至った例を書いています。3剤とも、これらの薬の減量を検討するよう書いています(10.2)。ジャヌビアは、速効型インスリン分泌促進薬も、減量の検討対象に書いています。
学会は、高齢者や腎機能低下者(軽度の腎機能低下を含む)で、スルホニルウレア剤の治療中にDPP-4阻害薬を追加した例で、重症低血糖が散見された、としています。原文は、「高齢者,腎機能低下者(含 軽度腎機能低下者),あるいは両者が併存する場合には,SU薬〔スルホニルウレア剤〕を減量の上,DPP-4阻害薬を追加することを必須としている」と書き、続けて「具体的には」として、次の量を超えて使っている場合は、この量以下に減じた上でDPP-4阻害薬を開始する、と書いています。
- グリメピリド(アマリール錠など):2mg/日
- グリベンクラミド(オイグルコン錠、ダオニール錠など):1.25mg/日
- グリクラジド(グリミクロン錠など):40mg/日
目標のHbA1cに届かなければ必要に応じてスルホニルウレア剤を増やし、低血糖が出ればさらに減らす、とも書かれています。インスリン製剤とグリニド薬も、用量を減じるなどしたうえでインクレチン関連薬を追加し、重症低血糖にならないよう注意が必要、と書かれています。
どんな症状? ふらつき、冷汗、動悸、ふるえなどです(ジャヌビアとトラゼンタのIF)。
どう防ぐ・どう伝える? 低血糖の症状と対処の方法を、患者さんに十分に説明します(8.1)。症状が出たら、糖質を含む食品をとります。α-グルコシダーゼ阻害剤と併用しているときは、ブドウ糖を使います(11.1)。下垂体・副腎の機能不全、栄養不良・飢餓・衰弱状態、不規則な食事、激しい筋肉運動、過度のアルコール摂取がある人は、低血糖を起こすおそれがあります(9.1)。ジャヌビアとグラクティブ、マリゼブは、高齢者も入っています。
類天疱瘡
なぜ? 機序は、確認した資料ではほとんど分かっていません。総説(Tasanen et al. 2019)は、DPP-4阻害薬に関連する類天疱瘡の発症機序は、ほとんど不明、と書いています。別の総説(de Nicolas-Ruanes et al. 2023)は、BP180(類天疱瘡で免疫反応の標的になる、皮膚のたんぱく質)の分解が妨げられることと、免疫の調節異常が組み合わさって、引き金になる可能性がある、と書いています。
学会は、リスクとして、男性、高齢者、HLA-DQB1*03:01(ヒト白血球抗原の型のひとつ)の保因者、選択性の低いDPP-4阻害薬の使用を、指摘しています。薬による差は、研究ごとに結果が分かれていて、結論は出ていません(数字はくわしい条件)。
どんな症状? 水疱、びらんです(11.1)。頻度は、確認した10製品のすべてで頻度不明です。テネリアの使用成績調査では、安全性解析対象10,696例のうち5例(0.05%)で報告され、いずれも重篤でした(IF)。
どう防ぐ・どう伝える? 水疱、びらんがあらわれたら、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行います(11.1)。学会は、皮膚科専門医に相談して早く診断し、DPP-4阻害薬を中止する、と書いています。さらに、副腎皮質ステロイドの外用薬や経口薬による治療が始まるため、血糖コントロールについて、地域連携の枠組みを用いて糖尿病専門医へのコンサルテーションを推奨しています。
急性膵炎
なぜ? ジャヌビアのIFは、市販後に急性膵炎が報告されたことから、注意事項を記載した、としています。心血管アウトカム試験のメタ解析(Abd El Aziz et al. 2020)では、DPP-4阻害薬で急性膵炎が有意に増え(rate ratio=観察人年あたりの発生数の比、1.75、95%信頼区間1.14〜2.70)、GLP-1受容体作動薬では有意な増加がありませんでした。
どんな症状? 持続的な激しい腹痛と嘔吐です。ジャヌビアは、海外の自発報告で、出血性膵炎や壊死性膵炎も報告されている、と書いています(11.1.6)。
どう防ぐ・どう伝える? 初期症状が出たら、すぐに医師の診察を受けるよう、患者さんに伝えます(8.2〜8.5)。異常が認められたら、投与を中止します(11.1)。学会は、アルコール多飲、胆石、肥満などがある人は、インクレチン関連薬の使用にかかわらず、上腹部痛や嘔気、嘔吐があれば迅速に診断し治療するよう勧めています。
イレウス(腸閉塞を含む)
なぜ? トラゼンタのIFが、理由を書いています。外因性GLP-1は胃内容排泄を遅延させることにより、腸閉塞やイレウス関連事象を引き起こすと考えられています。DPP-4阻害剤のトラゼンタも同様の作用機序を有するため、用語を「イレウス」に改めた、とあります(11.1.2の解説)。
どんな症状? 高度の便秘、腹部膨満、持続する腹痛、嘔吐です。
どう防ぐ・どう伝える? 異常が認められたら、投与を中止します(11.1)。腹部手術やイレウスの既往がある患者さんでは、イレウスを起こすおそれがあります(9.1)。頻度は、ジャヌビアとトラゼンタが頻度不明、テネリアが0.1%です。
機序とは別に注意する副作用
- 肝機能障害:ジャヌビア、トラゼンタ、テネリアの重大な副作用です。エクアは、重度の肝機能障害が禁忌で、投与前と開始後1年は少なくとも3か月ごとに肝機能検査を行います(8.2)。
- 間質性肺炎:3剤の重大な副作用です。咳嗽、呼吸困難、発熱などがあれば、胸部X線などで検査します。
- 心不全:オングリザは、海外臨床試験で心不全による入院が投与群3.5%、プラセボ群2.8%でした(9.1.1)。エクア、ネシーナ、テネリアは、NYHA分類(心不全の重症度の分類)III〜IVの患者さんで、使用経験がなく安全性が確立していません。
- RS3PE症候群、胆のう炎:学会は、RS3PE症候群の頻度とメカニズムは不明、胆のう炎はDPP-4阻害薬の使用期間が長いほどリスク上昇が報告されている、と書いています。
- そのほか:ジャヌビアはアナフィラキシー反応、皮膚粘膜眼症候群、剥脱性皮膚炎、エクアは血管性浮腫、テネリアはQT延長の注意が載っています。
このほかにも重大な副作用があります(横紋筋融解症など)。禁忌は、次のとおりです。文言は薬ごとに少し違うので、処方前に各薬の添付文書で確認してください。
| 禁忌 | 薬 |
|---|---|
| 成分に対する過敏症の既往歴のある人 | 確認した10製品すべて |
| 糖尿病性ケトアシドーシスまたは重症ケトーシス、糖尿病性昏睡(前昏睡を含む薬もあります)、1型糖尿病の人(書き方は薬により違います) | 確認した10製品すべて |
| 重症感染症、手術前後、重篤な外傷のある人(マリゼブは「インスリン注射による血糖管理が望まれる」と限定した書き方) | 確認した10製品すべて |
| 重度の肝機能障害のある人 | エクア |
GLP-1受容体作動薬とは、どう違う?
どちらも、GLP-1の受容体を介した血糖降下作用を持つ薬です。学会は、DPP-4阻害薬はGIPとGLP-1の活性を生理学的濃度の範囲内で高める薬、GLP-1受容体作動薬は薬理学的レベルで補充する薬、と説明しています。
| 項目 | DPP-4阻害薬 | GLP-1受容体作動薬 |
|---|---|---|
| 働き方 | DPP-4をふさぎ、体のインクレチンの分解を抑える | GLP-1受容体に薬が直接結合する |
| 剤形 | 経口薬(1日1回、1日2回、週1回の薬がある) | 注射薬が中心。経口薬のリベルサスもある |
| 低血糖 | 学会は、単独で用いた場合の低血糖リスクは低い、としている。スルホニルウレア剤・インスリン製剤との併用でリスクが増すおそれ | 学会は、単独で用いた場合の低血糖リスクは低い、としている。インスリン製剤・スルホニルウレア剤との併用でリスクが増すおそれ |
| 類天疱瘡 | 確認した9成分すべてで、重大な副作用に載っている | 学会は、現在までに使用に伴う類天疱瘡は問題視されていない、としている |
| 急性膵炎 | 重大な副作用に載っている。メタ解析では、頻度は低いが有意に増える(学会) | 重大な副作用に載っている。メタ解析では、有意な増加なし(学会) |
| イレウス | 確認した9成分すべてで、重大な副作用に載っている | 5剤とも、重大な副作用に載っている |
| お互いの併用 | 併用した臨床成績はなく、有効性と安全性は確認されていない、と添付文書に書かれています(ジャヌビア8.6、トラゼンタ8.5。テネリア8.4は「確立されていない」)。 | |
同じ薬効群の薬は、どう違う?
添付文書で確認できた違いは、用法と、腎機能による用量調節です。主な3剤を並べます。残りの薬は「くわしい条件」にあります。クレアチニンクリアランス(CrCl)の単位は、mL/minです。
| 一般名(商品名) | 通常の用法 | 腎機能による用量調節 |
|---|---|---|
| シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ) | 50mgを1日1回。効果不十分なら100mgまで | 目安の表がある。中等度(CrCl 30以上50未満)は通常25mg・最大50mg、重度・末期腎不全(CrCl 30未満)は通常12.5mg・最大25mg |
| リナグリプチン(トラゼンタ) | 5mgを1日1回 | 添付文書に、腎機能による用量調節の記載はない。IFは、胆汁排泄型で、腎機能・肝機能の程度によらず同一用量、と説明している |
| テネリグリプチン(テネリア) | 20mgを1日1回。効果不十分なら40mgまで | 添付文書に、腎機能による用量調節の記載はない。40mgへの増量は、腎機能障害者・肝機能障害者の臨床試験での使用経験が限られていることなどに留意し、可否を慎重に判断する(IF) |
ジャヌビアとトラゼンタは、用量調節の有無を体からの出ていき方で説明しています。トラゼンタのIFは、主に胆汁から排泄されるため腎機能によらず同一用量、と書いています。ジャヌビアの添付文書は、主に腎臓で排泄されるため、腎機能障害のある患者さんでは用量を調節する、と書いています(7.1)。健康成人に単回投与したとき、シタグリプチンの79〜88%(推測値)が、尿中に未変化体で排泄されました(16.5.1)。

患者さんには、どう伝える?
- インスリンや、スルホニルウレア剤と併用しているとき:「冷や汗、手のふるえ、動悸、ふらつきが出たら、低血糖かもしれません。糖質を含む食品をとってください。対処の方法を、いっしょに確認しておきましょう。」
- 水ぶくれやただれ:「水ぶくれやただれが出たら、がまんせずに、早めに相談してください。」
- 強い腹痛:「嘔吐を伴う強い腹痛が続くときは、すぐに受診してください。」
- 便秘やお腹の張り:「ひどい便秘、お腹の張り、続く腹痛、嘔吐があるときは、すぐに連絡してください。」
くわしい条件
腎機能障害での血中濃度(AUC)
腎機能障害のある外国人に、シタグリプチン50mgを単回投与したとき、AUC0-∞(血中濃度−時間曲線下面積)は、健康成人の約2.3倍(中等度)、約3.8倍(重度)、約4.5倍(血液透析が必要な末期腎不全)に上がりました(16.6.1)。
トラゼンタは、日本人の健康成人に5mgを単回投与したとき、24時間までの尿中未変化体排泄率が約0.6%でした(16.5.1)。IFは、主に胆汁から未変化体で排泄されるため、腎機能・肝機能の程度によらず同一用量、と説明しています。それでも、腎機能障害のある患者さんに5mgを単回投与したとき、AUC0-24hは健康被験者の約1.3倍(軽度)、1.6倍(中等度)、1.4倍(高度)、1.5倍(末期)に上がっています(16.6.1)。テネリアは、腎機能障害者(外国人、普通錠)の単回投与で、AUC0-∞が健康成人の約1.25倍(軽度)、約1.68倍(中等度)、約1.49倍(高度)でした(16.6.1)。
ジャヌビアの活性型インクレチン濃度
ジャヌビアは、2型糖尿病の患者で、活性型GLP-1と活性型GIPの血漿中濃度が約2倍に上がりました(18.3.1)。
そのほかの薬の用法と腎機能による用量調節
- ビルダグリプチン(エクア):50mgを1日2回、朝と夕。患者の状態に応じて50mgを1日1回朝。中等度以上の腎機能障害と透析中の末期腎不全では、50mgを1日1回朝にするなど慎重に投与する。重度の肝機能障害は禁忌
- アログリプチン(ネシーナ):25mgを1日1回。中等度(CrCl 30以上50未満)は12.5mg、高度・末期腎不全(CrCl 30未満)は6.25mg
- アナグリプチン(スイニー):1回100mgを1日2回。1回200mgまで。重度以上(CrCl 30未満)は、100mgを1日1回
- サキサグリプチン(オングリザ):5mgを1日1回。患者の状態に応じて2.5mg。中等度以上(CrCl 50未満)は、2.5mg
- トレラグリプチン(ザファテック):100mgを週1回。中等度は50mg、高度・末期腎不全は25mgを週1回
- オマリグリプチン(マリゼブ):25mgを週1回。重度・末期腎不全(eGFR(推算糸球体濾過量)30未満)は、12.5mgを週1回
低血糖の副作用発現割合(添付文書の試験・52週まで)
- ジャヌビア(50mgまたは100mg):単独投与0.6%、グリメピリド併用5.3%(7例/131例)、ピオグリタゾン併用0.8%、メトホルミン併用0.7%、ボグリボース併用0.8%、ナテグリニドまたはミチグリニド併用6.5%(10例/153例)、インスリン製剤併用17.4%(45例/258例)(17.1)
- テネリア(20mgまたは40mg):単独療法1.4%(3例/212例)、グリニド系薬剤併用3.8%、ビグアナイド系薬剤併用1.1%、α-グルコシダーゼ阻害剤併用1.3%、グリメピリド併用7.3%(7例/96例)、ピオグリタゾン併用1.9%、インスリン製剤併用15.6%(12例/77例)(17.1、17.2.1)
- トラゼンタ(5mg):ビグアナイド薬併用0%(0例/82例)、速効型インスリン分泌促進薬併用0%(0例/66例)、チアゾリジン薬併用1.4%(1例/74例)、スルホニルウレア剤併用11.9%(17例/143例)、α-グルコシダーゼ阻害薬併用1.2%(1例/85例)。インスリン製剤との併用(国際共同試験の日本人のみ)は、トラゼンタ群26.9%(14例/52例)、プラセボ群18.0%(9例/50例)(17.1.2、17.2.1)
試験ごとに対象や併用薬が違うため、薬どうしの比較には使えません。
類天疱瘡:薬による差と日本の調査
- 福岡県の後期高齢者医療の請求データ(33,241人、3年追跡、Harano et al. 2023)では、88人(0.26%)が類天疱瘡を発症しました。ビルダグリプチンとリナグリプチンで有意にリスクが高く(ハザード比2.411、2.550)、シタグリプチンとアログリプチンでは有意な上昇がみられませんでした(0.911、1.600)。この解析に、テネリグリプチンは入っていません。
- 米国の保険請求データ(Lee et al. 2020)では、DPP-4阻害薬を始めた人は、第二世代スルホニルウレア剤を始めた人より類天疱瘡のリスクが高く(ハザード比1.42、95%信頼区間1.17〜1.72)、リナグリプチンでは1.68(1.16〜2.43)でした。
- ランダム化比較試験138件のメタ解析(Silverii et al. 2020)では、類天疱瘡は、DPP-4阻害薬群17例、対照群1例で、オッズ比は4.44(1.31〜15.00)でした。リナグリプチンの試験だけでも、有意な増加がありました(4.69)。著者は、ほかのDPP-4阻害薬のデータは、同様の影響を否定するには不十分、としています。
- 日本の皮膚科施設の全国調査(Sugiyama et al. 2022)では、DPP-4阻害薬関連の類天疱瘡で、炎症の目立たない型が33.3%(それ以外の類天疱瘡は14.6%)でした。診断後に79.9%でDPP-4阻害薬が中止され、17.6%は、全身ステロイドや補助療法なしに、中止だけで自然に寛解しました。
急性膵炎:試験の数字と学会の勧め
- 学会は、2型糖尿病では急性膵炎のリスクが高く、アルコール多飲、胆石、肥満などがある人は、インクレチン関連薬の使用にかかわらず、上腹部痛や嘔気、嘔吐があれば迅速に診断し治療するよう勧めています。
- シタグリプチンの心血管アウトカム試験(TECOS)に参加した14,671人を中央値3年追跡した解析(Buse et al. 2017)では、急性膵炎はシタグリプチン群23例(0.3%)、プラセボ群12例(0.2%)でした(ハザード比1.93、95%信頼区間0.96〜3.88、P=0.065)。重症の膵炎(うち2例は死亡)が、シタグリプチン群の4人に起きました。
- メタ解析(Abd El Aziz et al. 2020)では、DPP-4阻害薬で急性膵炎のrate ratioが1.75(1.14〜2.70)、GLP-1受容体作動薬で1.05(0.78〜1.41)でした。膵臓がんと悪性腫瘍全体は、どちらの薬でも有意な増減がありませんでした。
腎機能で用量を変えない2剤の、尿・糞中の排泄
- トラゼンタ:外国人の健康成人に14C-リナグリプチン10mgを単回経口投与したとき、96時間までに、投与放射能の約5%が尿中に、約80%が糞中に排泄されました(16.5.2)。
- テネリア:外国人の健康成人に14C標識のテネリグリプチン20mgを単回投与したとき、216時間までに、投与放射能の45.4%が尿中に、46.5%が糞中に排泄されました(16.5.2)。
併用注意(代表例)
- ジャヌビア:ジゴキシン(併用で血漿中濃度がわずかに増加したとの報告。機序不明)
- トラゼンタ:血糖降下作用を減弱する薬剤(リファンピシンなど)、増強する薬剤(リトナビルなど)
- テネリア:QT延長を起こすことが知られている薬剤(クラスIA、クラスIIIの抗不整脈薬)
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ご利用にあたって この記事は、薬剤師など医療従事者に向けて、添付文書や公開資料をもとに一般的な情報をまとめたものです。個々の患者さんへの投与や治療の判断は、最新の添付文書と、医師・薬剤師の判断に従ってください。内容の正確さには注意を払っていますが、正確性や最新性を保証するものではありません。この記事の情報を利用したことで生じたいかなる損害についても、当ブログは責任を負いかねます。
よくある質問
DPP-4阻害薬を1剤だけ使うなら、低血糖は起きませんか?
学会のRecommendationは、単独で用いた場合の低血糖リスクは低い、としています。ただし、添付文書では重大な副作用に載っています。ジャヌビアのIFは、単独療法でも低血糖が認められているため、低血糖の発現に注意する必要がある、と書いています。スルホニルウレア剤やインスリン製剤と併用すると、低血糖のリスクが増すおそれがあるため、これらの薬の減量を検討するよう書かれています。
類天疱瘡は、どのDPP-4阻害薬でも起こりますか?
確認した9成分の添付文書は、すべて類天疱瘡を重大な副作用に載せています。薬による差は、研究ごとに結果が分かれていて、結論は出ていません。機序も、確認した総説ではほとんど不明とされています。水疱やびらんがあらわれたら、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行います。
腎機能が低いとき、用量は変えますか?
薬によって違います。シタグリプチン、アログリプチン、サキサグリプチンなどは、腎機能に応じた用量が添付文書に書かれています。リナグリプチンとテネリグリプチンは、確認した添付文書に、腎機能による用量調節の記載がありません。
薬の使い分けをPDFにまとめています。気になる方は薬の使い分けPDFもどうぞ。
出典・更新日
更新日:2026年10月2日。添付文書とIFは、いずれも2026年10月2日に確認しました。
- ジャヌビア錠 添付文書(2026年6月改訂、第5版)。KEGG MEDICUS japic_code=00061993:2.、7.1、8.1〜8.6、9.1、10.2、11.1、11.2、16.5.1、16.6.1、17.1、18.1、18.3.1
- グラクティブ錠 添付文書(2026年3月改訂、第6版)。KEGG MEDICUS japic_code=00061994:2.、6.、7.、11.1
- トラゼンタ錠5mg 添付文書(2025年10月改訂、第3版)。KEGG MEDICUS japic_code=00059755:2.、6.、8.、9.1、10.2、11.1、16.5、16.6.1、17.1.2、17.2.1、18.1
- テネリア錠20mg・40mg 添付文書(2025年12月改訂、第4版)。KEGG MEDICUS japic_code=00067748:2.、6.、8.、9.1、10.2、11.1、16.5、16.6.1、17.1、17.2.1、18.1
- エクア錠50mg 添付文書(2026年1月改訂、第6版)。KEGG MEDICUS japic_code=00058445:2.、6.、7.、8.2、9.1.1、11.1
- ネシーナ錠 添付文書(2025年10月改訂、第4版)。KEGG MEDICUS japic_code=00058529:2.、6.、7.、9.1.1、11.1
- スイニー錠100mg 添付文書(2025年10月改訂、第3版)。KEGG MEDICUS japic_code=00060777:6.、7.、11.1
- オングリザ錠2.5mg・5mg 添付文書(2025年10月改訂、第3版)。KEGG MEDICUS japic_code=00061787:6.、7.、9.1.1、11.1
- ザファテック錠 添付文書(2025年10月改訂、再審査結果、第4版)。KEGG MEDICUS japic_code=00068251:6.、7.1、11.1
- マリゼブ錠 添付文書(2025年10月改訂、再審査結果、第5版)。KEGG MEDICUS japic_code=00065936:6.、7.1、11.1
- ジャヌビア錠 インタビューフォーム(2026年6月改訂、第35版):8.1、8.4、9.1.1、11.1.3、11.1.6、11.1.8の解説
- トラゼンタ錠5mg インタビューフォーム(2025年10月改訂、第20版):Ⅰ.1と特徴4)、8.1の解説、9.2、11.1.1・11.1.2の解説
- テネリア錠 インタビューフォーム(2025年12月改訂、第20版):Ⅴ.3、Ⅴ.の使用成績調査、Ⅷ.9.2、8.1、11.1.1の解説
- 日本糖尿病学会 薬剤の安全使用に関する委員会. インクレチン関連薬の安全な使用に関するRecommendation 第2版. 2024年5月18日. https://www.jds.or.jp/uploads/files/recommendation/incretin.pdf
- Tasanen et al. Front Immunol. 2019;10:1238(総説)
- de Nicolas-Ruanes et al. Int J Mol Sci. 2023;24:16786(総説)
- Harano et al. J Diabetes Investig. 2023;14:756-766
- Lee et al. JAMA Dermatol. 2020;156:1107-1114
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- Sugiyama et al. J Dermatol. 2022;49:697-702
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