簡易懸濁・粉砕・一包化の可否の調べ方|どこを見ればいい?
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。「この錠剤、粉砕していい?」「簡易懸濁で経管投与できる?」「一包化していい?」の調べ方をまとめました。この3つは、見る場所がそれぞれ違います。根拠は、日本病院薬剤師会のインタビューフォーム記載要領と、デパケン・バイアスピリン・プラザキサ・プラビックスの実際の記載です。
どこを見る? 添付文書の「14. 適用上の注意」と「20. 取扱い上の注意」、次にインタビューフォームの「ⅩⅢ.1」を見ます。
ⅩⅢ.1の試験結果は、してよい根拠? 冒頭に「加工等の可否を示すものではない」と書かれているので、可否の答えにはなりません。
載っていないときは? 「該当資料なし」は「してよい」という意味ではありません。製薬企業に問い合わせます。
粉砕・簡易懸濁・一包化は、どこを見れば分かる?
粉砕(錠剤をつぶす、カプセルを開けて中身を出す)、簡易懸濁(つぶさず開封もせず、約55℃の温湯に入れて崩壊・懸濁させ、注入器で経管投与する方法)、一包化は、それぞれ別の問いです。同じ薬でも、書かれている場所と答えが違います。
| 知りたいこと | 添付文書 | インタビューフォーム |
|---|---|---|
| 粉砕・脱カプセル | 「14」「20」に、止める文言があるか | ⅩⅢ.1(1)に安定性のデータ。禁止の理由はⅧ.11 |
| 簡易懸濁 | 「14」「20」に、該当する記載があるか | ⅩⅢ.1(2)に崩壊・懸濁性とチューブの通過性 |
| 一包化 | 「14」「20」に、止める文言や吸湿の注意があるか | Ⅳ.6に無包装での安定性。Ⅳ.8に他剤と同時に分包した変化(検討結果があれば) |
調べる順番は?
この記事では、次の順番で調べます。
- 剤形を確認する。インタビューフォームの表紙の「剤形」と「Ⅳ.1 剤形」を見ます。徐放錠や腸溶錠などの区別が分かります。
- 添付文書の「14. 適用上の注意」と「20. 取扱い上の注意」を読む。調剤や服薬の方法を止める文言があるかを見ます。「用法及び用量に関連する注意」に例外がある製品もあります。
- インタビューフォームの「Ⅷ.11」で、止めている理由を読む。理由が「問題が起きる」なのか「データがない」なのかを読み分けます。
- 「ⅩⅢ.1」と「Ⅳ.6」を読む。数値は、試験条件(温度、時間、量、チューブの太さ)とセットで読みます。
インタビューフォームのⅩⅢ.1は、記載要領のとおり「加工等の可否を示すものではない」情報です。承認を受けていない品質に関する情報を含み、医療従事者が臨床適用を検討するための参考情報という位置づけです。
実際の薬では、どう書かれている?
たとえば、同じバルプロ酸ナトリウムでも、デパケン錠とデパケンR錠では添付文書の内容が違います。
| 製品 | 添付文書 | インタビューフォームのⅩⅢ.1(1) 粉砕 |
|---|---|---|
| デパケン錠 | 「14.1 薬剤調製時の注意」に「本剤は一包化調剤を避けること。」。「20」に、吸湿性が強いので服用直前までPTPシートから取り出さないこと | 「該当資料なし」。有効成分の吸湿性が強く、粉砕使用は不可能と書かれている |
| デパケンR錠 | 「14.1 薬剤交付時の注意」に、かみ砕かずに水とともに服薬させること。一包化を避ける文言と「20」の項目はない | 「該当資料なし」。徐放性製剤で、粉砕すると放出制御の特性が失われるおそれがあると書かれている |
- 「一包化」の語がなくても、吸湿の注意は書かれる: プラザキサカプセルの「14.1.2」は、服用直前にPTPシートから取り出すことと、アルミピロー包装のままの調剤が望ましいことを書いています。「14.1.3」には、カプセルを開けて服用しないよう指導することも書かれています。理由はインタビューフォームにあり、内容物を25℃/75%R.H.で保存すると1日で規格外になり、内容物のみを服用するとダビガトランの血中濃度が上昇するおそれがあると書かれています。
- 禁止に例外が書かれる: バイアスピリン錠は、腸溶錠であるため割ったり砕いたりしないことを「14.1.1」に書いています。ただし、急性心筋梗塞と脳梗塞急性期の初期治療で効果を急ぐ初回投与では、「7.1」ですりつぶす・かみ砕くことを示しています。「14」だけを読むと、この例外を見落とします。
- 小見出しは製品ごとに違う: 注意が「薬剤調製時の注意」「薬剤投与時の注意」「薬剤交付時の注意」のどこにあるかは製品で違うので、14の中を全部読みます。
簡易懸濁では、デパケン錠100mgと200mgのインタビューフォーム(第9版)に、約55℃の温湯20mLで5分放置し、15往復横転する試験の結果があります。どちらも10分以内に崩壊・懸濁し、8Fr.チューブを通過したと書かれています。この結果は、その試験条件でのものです。
載っていないときは?
粉砕や簡易懸濁など、承認された製品形態を改変したときのデータは、承認申請時に必要とならず、一律の記載を求めることはできないと、記載要領2018の紹介(日本病院薬剤師会雑誌. 2019)は説明しています。添付文書に記載がないことは、してよいという意味ではありません。
- ⅩⅢ.1が「個別に照会すること」で照会先が書かれていれば、その製薬企業に問い合わせます。
- 「該当資料なし」は、情報が存在しないと製薬企業が書いている状態です。粉砕・簡易懸濁・一包化してよいという意味の文言ではありません。
- 添付文書とインタビューフォームのどちらにも載っていなければ、「簡易懸濁法マニュアル」や「内服薬 経管投与ハンドブック」などの書籍にデータがあるかを探します。
- 書籍にも載っていなければ、製薬企業に問い合わせます。
くわしい条件
インタビューフォームの各項目に書かれること
- Ⅳ.1 剤形:素錠、フィルムコート錠、徐放錠、口腔内崩壊錠、腸溶錠、硬カプセル剤などの区別。放出を制御している製剤は、その内容も可能な限り記載されます。
- Ⅳ.6 製剤の各種条件下における安定性:温度、湿度、光などに対する経時変化。無包装下の安定性の資料があれば、シャーレ(開放状態)などの条件で書かれます。
- Ⅳ.8 他剤との配合変化(物理化学的変化):錠剤等の一包化調剤で他剤と同時に分包した際の変化(検討結果がある場合)。
- Ⅳ.12 その他:自動錠剤分包機での落下耐久性など、各種調剤機器適合性(情報がある場合)。
- Ⅷ.11 適用上の注意:脱カプセルや粉砕を明示的に禁止している場合は理由を解説します。データがないこと・承認外の用法であることのみが理由なら、それを明確にします。
- ⅩⅢ.1(1) 粉砕:粉砕・脱カプセル後の主剤等の安定性(試験条件と結果)、粉砕後に服用した際の薬物動態。
- ⅩⅢ.1(2) 崩壊・懸濁性及び経管投与チューブの通過性:温湯などに放置した際の水温、液量などの条件と結果、懸濁液調製後の安定性。崩壊・懸濁のために前もって製剤を破壊しておく、放置せず振盪する、などが必要な場合は付記されます。
添付文書の記載要領
厚生労働省の記載要領(薬生発0608第1号、平成29年6月8日)は、「14. 適用上の注意」に、投与経路、剤形、注射速度、投与部位、調製方法、患者への指導事項など、適用に際して必要な注意事項を書くとしています。
ⅩⅢ.1の注意書きと「個別に照会すること」
ⅩⅢ.1の冒頭には、次の趣旨の注意が書かれる決まりです。この項には承認を受けていない品質に関する情報が含まれる。試験方法等が確立していない内容も含まれており、記載されている試験方法で得られた結果を事実として提示している。医療従事者が臨床適用を検討する上での参考情報であり、加工等の可否を示すものではない。デパケンとプラザキサのインタビューフォームにも、この注意書きが載っています。製薬企業が、持っている情報をこの項に載せず、個別の照会に対して開示する方針をとる場合は、照会先を明示したうえで「個別に照会すること」と書きます。情報が存在しない場合は「該当資料なし」と書きます。
デパケンとプラビックスの補足
デパケンのⅩⅢ.1には、有効成分は曝露によって健康への有害な影響をもたらす恐れがあるため、粉砕を行う場合は、手袋やガウンといった個人防護具を用いるなど、曝露対策を行うことを推奨します、という【注意】も載っています。デパケンR錠は、ⅩⅢ.1(2)に「該当資料なし」とあり、崩壊・懸濁あるいは粉砕を行うと放出制御の特性が失われるおそれがあり、崩壊懸濁性およびチューブ通過性の評価を行っていないと書かれています。プラビックス錠のⅩⅢ.1(1)は、粉砕された状態での薬物動態試験、有効性試験、安全性試験は実施されておらず、その有効性・安全性を評価する情報は存在しないこと、以上の理由により粉砕投与は推奨されないことを書いています。ⅩⅢ.1(2)は「該当資料なし」です。
版の情報
デパケン錠・デパケンR錠の添付文書は2026年3月改訂の第7版、インタビューフォームは2026年4月改訂の第9版です。バイアスピリン錠100mgの添付文書は2026年1月改訂の第4版です。プラザキサカプセルの添付文書は2025年11月改訂の第5版、インタビューフォームは同第21版です。プラビックス錠のインタビューフォームは、2023年1月改訂の添付文書に基づく第25版です。
簡易懸濁法の試験方法と倉田氏の解説
デパケンのインタビューフォーム(第9版)の試験では、ディスペンサーのピストン部を抜き取り、検体1個を入れてピストンを戻し、約55℃の温湯20mLを吸い取ります。蓋をして5分間放置し、手で15往復横転して崩壊懸濁の状況を観察します。十分に崩壊しないときは、さらに5分間放置して同じ操作をし、それでも十分でないときは、分包した検体を乳棒で数回軽く叩いて破壊して同じ操作をします。通過性は、約2〜3mL/秒で経管チューブに注入し、常水で濯いだときの残存物の有無で見ています。試験は「内服薬 経管投与ハンドブック」(じほう)に準じて実施したと書かれています。
倉田なおみ氏の解説(静脈経腸栄養. 2011)は、錠剤のままでは崩壊しない錠剤は、錠剤表面に亀裂を入れると、内部に水が浸透して崩壊・懸濁するようになると書いています。錠剤を崩壊させる時間は最長10分とし、薬を水に入れて放置する時間が長くなると、安定性を損なったり配合変化を起こしたりする可能性が非常に高まるとも書いています。温湯は、ナースステーションの環境下で10分放置したときに37℃を下回らない温度を確認したところ55℃だったことから「約」55℃としていて、高くしすぎると後で固まってチューブを閉塞させる可能性が高まるとのことです。簡易懸濁法に適する薬の一覧は「内服薬経管投与ハンドブック」(じほう)にあり、載っていない薬や新薬のデータを検索するシステムが簡易懸濁法研究会の会員用ホームページにあると書かれています(2011年時点の記述です)。
一包化のデータの補足
無包装下の安定性の試験法は、平成11年8月20日付「錠剤・カプセル剤の無包装状態での安定性試験法について(答申)」(日本病院薬剤師会)などが参考になると、記載要領に書かれています。デパケンのインタビューフォーム(第9版)のⅣ.6には、申請時のデータとして、デパケン錠100mg・200mgの未包装での結果が載っています。25℃・54%RHで6ヵ月より、40℃・50%RHで0.5ヵ月より、吸湿によって外観が明らかに変化したと書かれています。Ⅷ.11は、添付文書の14.1に対する解説を「Ⅹ.4 取扱い上の注意点」の項参照としていて、一包化を避ける理由はⅧ.11には書かれていません。
日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 第24回報告書は、2020年7月〜9月に報告された配合変化の疑義照会事例のうち、内服薬の錠剤5件が、一包化調剤で変色が起きるオルメサルタン メドキソミル錠とメトホルミン塩酸塩錠の組み合わせだったと書いています。1件は、処方箋に一包化の指示があり、一包化して高温多湿の状態で保管するとメトグルコ錠(メトホルミン塩酸塩錠)が変色するおそれがあるため疑義照会を行い、一包化せずPTPシートのまま交付することになった事例です。
記載要領2018の位置づけ
日本病院薬剤師会雑誌(2019年)の紹介は、インタビューフォームを、記載しがたい情報や不足する情報を、医療関係者が製薬企業のMRなどへのインタビューで追加・補足して充実させていく資料とも位置づけています。
よくある質問
添付文書に粉砕の記載がなければ、粉砕してよいのですか?
添付文書に記載がないことは、粉砕してよいという記載ではありません。粉砕や簡易懸濁など承認された製品形態を改変したときのデータは、承認申請時に必要とならず、一律の記載を求めることはできないと、インタビューフォーム記載要領2018の紹介は説明しています。インタビューフォームの「ⅩⅢ.1」を読み、記載がなければ製薬企業に問い合わせます。
インタビューフォームに崩壊・懸濁の試験結果が載っていれば、簡易懸濁法で投与してよいのですか?
ⅩⅢ.1の冒頭に、承認を受けていない品質に関する情報を含むこと、医療従事者が臨床適用を検討する上での参考情報であり、加工等の可否を示すものではないことが書かれています。試験結果は、書かれている水温、液量、チューブの太さなどの条件のもとでの結果です。
一包化してよいかは、どこに書かれていますか?
添付文書の「14. 適用上の注意」と「20. 取扱い上の注意」に、一包化を避ける文言や、吸湿の注意が書かれている製品があります。たとえばデパケン錠の添付文書(2026年3月改訂 第7版)は「14.1 薬剤調製時の注意」に「本剤は一包化調剤を避けること。」と書いています。インタビューフォームでは、無包装下の安定性は「Ⅳ.6」、他剤と同時に分包した際の変化は「Ⅳ.8」に、情報がある場合に書かれます。
出典
- 日本病院薬剤師会 医薬品インタビューフォーム記載要領 2018(2019年更新版):Ⅳ.1、Ⅳ.6、Ⅳ.8、Ⅳ.12、Ⅷ.11、ⅩⅢ.1 の記載内容
- 後藤 et al. 日病薬誌. 2019;55:255-257(インタビューフォーム記載要領2018の紹介)
- 厚生労働省 医療用医薬品の添付文書等の記載要領について(薬生発0608第1号、平成29年6月8日):「14. 適用上の注意」
- デパケン錠100mg他 添付文書(2026年3月改訂 第7版)
- デパケンR錠100mg他 添付文書(2026年3月改訂 第7版)
- バイアスピリン錠100mg 添付文書(2026年1月改訂 第4版)
- プラザキサカプセル75mg他 添付文書(2025年11月改訂 第5版)
- デパケン錠・細粒・シロップ・R錠 インタビューフォーム(2026年4月改訂 第9版)
- プラビックス錠25mg・75mg インタビューフォーム(2023年1月改訂の添付文書に基づく第25版)
- プラザキサカプセル75mg・110mg インタビューフォーム(2025年11月改訂 第21版)
- 倉田. 栄養サポートチーム加算に必要な簡易懸濁法の知識. 静脈経腸栄養. 2011;26:1105-1109
- 簡易懸濁法マニュアル 第2版(じほう、2021年9月、倉田なおみ・石田志朗 編著)
- 日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 第24回報告書 配合変化に関する疑義照会を行った事例
- 最新の添付文書・インタビューフォームはPMDA 医療用医薬品情報検索で確認できます。

