オレキシン受容体拮抗薬|図解でわかる作用機序 副作用はなぜ起きる?
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。オレキシン受容体拮抗薬の副作用がなぜ起きるのかを、作用機序の図からたどります。主な出典は、ベルソムラ、デエビゴ、クービビック、ボルズィの添付文書です。
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どんな薬? オレキシンが受容体に結合するのをふさいで、眠りを誘う薬です。4剤(ベルソムラ、デエビゴ、クービビック、ボルズィ)を扱います。
副作用はなぜ起きる? 眠気の持ち越しは、薬の影響が服用の翌朝以後に及んで起こることがあります。悪夢や睡眠時麻痺は、スボレキサントの論文ではレム睡眠との関係が前提として述べられています。
何に気をつける? 強いCYP3A阻害薬との併用は、デエビゴだけが併用注意で、ほかの3剤は禁忌です。ナルコレプシーは、4剤とも症状を悪化させるおそれがある注意の対象です。
オレキシン受容体拮抗薬は、どうやって効く?

上の図のとおり、オレキシンA・Bという神経ペプチドは、覚醒を促進しています。オレキシンは、オレキシン1受容体(OX1R)とオレキシン2受容体(OX2R)に結合して働きます。
ベルソムラとデエビゴの添付文書は、オレキシンA及びBのOX1・OX2受容体への結合を可逆的に阻害すると書いています。その結果、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させ、睡眠を誘発すると考えられる、という説明です(各18.1)。クービビックの添付文書は、OX1RとOX2Rの両方の活性を抑制するデュアルオレキシン受容体拮抗薬、と書いています(18.1)。ボルズィの添付文書は、OX1・OX2受容体への結合を阻害することにより、覚醒から睡眠へ移行させると考えられる、と書いています(18.1)。
ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動薬は、別の経路です。ゾルピデム(マイスリー)の添付文書は、GABAA系の抑制機構を増強するものと考えられる、と書いています。ブロチゾラム(レンドルミン)の添付文書は、抑制性伝達物質であるGABAを介して視床下部や大脳辺縁系を抑制する(ラット)、と書いています(各18.1)。
副作用はなぜ起きる?

上の図は、4つの道すじです。持ち越しと、CYP3A阻害薬との併用による傾眠の増強は、添付文書に書かれています。悪夢や睡眠時麻痺は、添付文書とIFに理由が書かれておらず、論文でレム睡眠との関係が前提として述べられている段階です。ナルコレプシーは、IFの解説に設定の理由があります。
傾眠・眠気の持ち越し
なぜ? ベルソムラ、デエビゴ、クービビックの添付文書は、ほぼ同じ文で書いています。本剤の影響が服用の翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある(各8.1)。ボルズィの8.1は、書き方が違います。不眠症あるいは本剤の影響により、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがある。運転等の適否を慎重に判断し、眠気等があらわれた場合は従事しないよう患者に指導する。「翌朝以後に及び」の語はありません。IFの解説には、剤ごとに設定の理由があります(くわしい条件)。
どんな症状? 朝の眠気、集中しにくさ、反応の遅れです。
どう防ぐ・どう伝える?
- 自動車の運転など危険を伴う機械の操作は、ベルソムラ、デエビゴ、クービビックは従事させないよう注意します。ボルズィは、適否を慎重に判断し、眠気等があらわれた場合は従事しないよう指導します(各8.1)。
- 就寝の直前に服用します。睡眠途中で一時的に起床して仕事等で活動する可能性があるときは、服用させません(ベルソムラ7.1、デエビゴ7.2、クービビック7.1、ボルズィ7.2)。
- 症状が改善したら、投与継続の要否を検討します。漫然と投与しません(4剤とも8.2)。
- アルコールと、フェノチアジン誘導体、バルビツール酸誘導体などの中枢神経抑制剤は、4剤とも併用注意です。ベルソムラ、デエビゴ、ボルズィは、飲酒を避けさせると書いています(10.2)。
- 他の不眠症治療薬と併用したときの有効性と安全性は、4剤とも確立されていません(ベルソムラ7.3、デエビゴ7.6、クービビック7.5、ボルズィ7.6)。
くわしい条件
デエビゴとボルズィの増量と傾眠
ボルズィの添付文書は、通常用量を超えて増量する場合には、傾眠等の副作用が増加することがあるので、状態を十分に観察しながら慎重に投与し、症状の改善に伴って減量に努める、と書いています(7.1)。デエビゴの添付文書は、効果不十分でやむを得ず通常用量を超えて増量する場合は1日1回10mgまでとし、傾眠等の副作用が増加することがあるので、状態を十分に観察しながら慎重に投与し、症状の改善に伴って減量に努める、と書いています(7.1)。
食事との関係
4剤とも、入眠効果の発現が遅れるおそれがあるので、食事と同時又は食直後の服用は避けると書いています(ベルソムラ7.2、デエビゴ7.3、クービビック7.2、ボルズィ7.3)。
IFの設定理由
ベルソムラは、運転能力評価試験で運転能力の低下が認められたため。クービビックは、運転シミュレーター試験で投与初日の翌朝の運転能力が事前に規定した基準内ではなかったこと(反復投与の翌朝は低下なし)と、類薬の注意喚起。デエビゴは、有意な影響は認められませんでしたが、類薬と同様の記載です。ボルズィは、運転技能評価試験で投与9時間後に臨床的に意義のある影響は認められませんでしたが、第III相試験で傾眠等が報告されていることを踏まえ、翌朝以後に運転等をする際にも十分留意するよう注意喚起するため、です。
IFが書く運転能力試験の条件
ベルソムラは、外国人健康成人28例に20mgまたは40mg(高齢者24例は15mgまたは30mg)を就寝前に投与し(承認用量は成人20mg、高齢者15mgで、40mgと30mgは超える用量です)、翌朝(投与後9時間)に自動車走行検査を実施しました。クービビックは、健康中年及び高齢男女60例(50〜79歳)に50mgまたは100mgを投与し(承認用量は25mgと50mgで、100mgは超える用量です)、翌朝(前夜の投与から9時間後)の運転シミュレーターで評価しました。4日間反復投与の翌朝には運転能力の低下は認められず、国内外の第III相試験では持ち越し効果を示す傾向は確認されなかった、と書いています。デエビゴは、5mgまたは10mgの単回及び8日間反復投与で、健康成人と健康高齢者のいずれも統計学的に有意な運転能力への影響は認められなかった、と書いています。ボルズィは、10mgまたは20mgを8日間反復投与し、単回及び反復のいずれも投与9時間後に臨床的に意義のある運転技能への影響は認められなかった、と書いています(承認用量は10mgまでで、20mgは超える用量です)。
CYP3A阻害薬・誘導薬との相互作用
なぜ? 4剤は、主に薬物代謝酵素CYP3A(ボルズィの添付文書の表記はCYP3A4)で代謝されます(10.の序文)。CYP3Aを阻害する薬を併用すると、血漿中濃度が上がります。ベルソムラの添付文書は、強いCYP3A阻害薬が代謝酵素を強く阻害し、血漿中濃度を顕著に上昇させるため、作用を著しく増強させるおそれがあるとして、併用を禁忌にしています(10.1)。クービビックとボルズィも、強いCYP3A阻害薬を併用禁忌にしています(10.1)。中程度のCYP3A阻害薬との併用でも、傾眠等の副作用が増強するおそれがあると、4剤とも書いています(7.4)。
どんな症状? 阻害薬との併用では、傾眠等の副作用の増強です。ベルソムラの添付文書は、中等度のCYP3A阻害薬との併用で、傾眠、疲労、入眠時麻痺、睡眠時随伴症、夢遊症などの副作用が増強するおそれがあると書いています(7.4)。誘導薬との併用では、血漿中濃度が下がり、効果が弱まるおそれがあります(10.2)。
どう防ぐ・どう伝える? 禁忌か併用注意かは、剤ごとに違います。次の表で整理します。ボルズィの10.2には、グレープフルーツジュースが併用注意として載っています。ほかの3剤の添付文書では確認できませんでした。
くわしい条件
デエビゴの薬物相互作用試験
デエビゴの添付文書には、健康成人15例(外国人データ)にイトラコナゾール200mgを1日1回反復投与しながら10mgを単回投与したとき、AUC(0-inf)が270%増加した、という記載があります(16.7.1)。リファンピシン600mgの1日1回反復投与中では、AUC(0-inf)が97%減少しました(16.7.3)。IFは、フルコナゾールまたはイトラコナゾールとの併用でAUCが317%または270%増加した結果を踏まえ、中程度又は強いCYP3A阻害剤の併用時は2.5mgとした、と書いています(7.4の解説)。
悪夢・異常な夢、睡眠時麻痺、幻覚
なぜ? ベルソムラのIFの用語解説は、入眠時幻覚を睡眠開始時レム睡眠期に一致して起こるもの、悪夢と睡眠麻痺を通常レム睡眠に随伴する睡眠時随伴症の例としています。用語の説明にとどまり、この薬で起こる理由には触れていません。ベルソムラ7.4は、中等度のCYP3A阻害薬との併用で入眠時麻痺などが増強するおそれと書いています。増強する条件を述べた記載にとどまり、起こる理由には触れていません。
Yasudaらの論文(スボレキサント、精神疾患のある患者の単施設後ろ向き研究)は、導入部で、スボレキサントの拮抗作用がレム睡眠の増加と関連し、患者の状態によっては悪夢につながりうると述べています。抄録に、この研究がレム睡眠を測った記載はありません。睡眠構造では、デュアルオレキシン受容体拮抗薬が総睡眠時間を増やすのは主にレム睡眠を増やすことによる、とまとめた系統的レビューがあります(Clark JW et al. Sleep Med Rev. 2020;53:101332)。ただし、レム睡眠の増加が悪夢や睡眠時麻痺の原因だと示した研究は、ここで挙げた資料にはありません。
どんな症状? 睡眠時麻痺は、入眠時に全身の脱力状態が起こり、身動きできなくなることです(ベルソムラIFの用語解説)。悪夢と睡眠時麻痺は、4剤とも11.2に載っています。異常な夢と幻覚(ベルソムラは入眠時幻覚)は、ベルソムラ、デエビゴ、クービビックの11.2にあり、ボルズィの11.2には載っていません。
どう防ぐ・どう伝える?
- 11.2の前書きは、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うこと、と書いています。観察の手段として、夢の内容が変わったときや、眠りぎわに体が動かなくなったときは教えてもらうよう、飲み始めに伝えておく方法があります(筆者の提案)。
くわしい条件
頻度(11.2の列)
傾眠は、デエビゴで10.7%、クービビックとボルズィで3%以上、ベルソムラで1〜5%未満と載っています。試験の対象や用量が剤ごとに違うので、数字を並べて優劣はつけられません。
悪夢は、ベルソムラで1〜5%未満、デエビゴ、クービビック、ボルズィで1〜3%未満です。睡眠時麻痺は、ベルソムラ、クービビック、ボルズィで1%未満、デエビゴで1〜3%未満です。デエビゴには、錯乱状態(1%未満)も載っています。
睡眠時随伴症
夢遊症、ねごと等の睡眠時随伴症は、ベルソムラ、デエビゴ、クービビックで頻度不明として載っています。ボルズィの11.2には載っていません。ベルソムラの睡眠時随伴症と夢遊症は、海外臨床試験でみられた副作用で、高用量群(成人40mg、高齢者30mg)を含みます。
ボルズィのIFの有害事象
ボルズィのIFは、国内第III相長期投与試験(367例)の有害事象として、ナルコレプシー様症状に関連するものが5mg群3例(1.6%)、10mg群3例(1.6%)あり、内訳は入眠時幻覚(5mg群1例、10mg群2例)と睡眠時麻痺(5mg群2例、10mg群1例)だった、と書いています。睡眠時随伴症に関連するものは5mg群2例(1.1%)、10mg群8例(4.4%)で、悪夢が5mg群2例、10mg群6例、ほかに異常な夢と爆発頭部症候群が各1例でした。11.2の頻度は、国内第III相検証的試験と長期投与試験を統合した760例で、3例(0.4%)以上みられた副作用の集計です。ここに書いた数字は、IFが長期投与試験の項に載せている「特に関心のある有害事象」の集計で、11.2とは集計の種類が違います。
論文の数字
Naらのメタ解析は、無作為化比較試験11本、7,703例で、オレキシン受容体拮抗薬群はプラセボ群より睡眠時麻痺が多い(リスク比3.40、95%信頼区間1.18〜9.80)と報告しています。対象は、スボレキサント、レンボレキサント、ダリドレキサントです。Yasudaらは、宮崎大学医学部附属病院でスボレキサントを投与された精神疾患のある患者(論文の題名は psychiatric patients)440例のうち、9.1%(40例)が悪夢を経験し、20〜39歳でオッズ比が高かったと報告しています。単施設の後ろ向き研究です。
ナルコレプシー・カタプレキシー
なぜ? 4剤の添付文書は、ナルコレプシー又はカタプレキシーのある患者について、症状を悪化させるおそれがあると書いています(9.1.1)。IFの解説は、デエビゴで「本剤の作用機序を考慮するとナルコレプシー又はカタプレキシーの症状を悪化させるおそれがあるため設定した」、クービビックで「本剤の薬理作用を考慮して設定した」と書いています。ボルズィのIFは、「ボルノレキサントの作用機序を考慮すると、ナルコレプシー又はカタプレキシーの症状を悪化させる可能性を否定できないことから設定した」と書いています。ベルソムラのIFは、国内及び外国の臨床試験でカタプレキシーの発現は認められていないが、症状を悪化させるおそれがあることから設定した、と書いています。
どんな症状? ナルコレプシーは、耐え難い睡眠欲求と、歩行中などの居眠りが特徴です。カタプレキシーは、大笑い、驚き、怒りなどの強い感情を引き金に、筋肉の力が突然抜ける発作です(国立精神・神経医療研究センター)。
どう防ぐ・どう伝える?
- 9.1.1は注意の項で、4剤とも禁忌の項には入っていません。
くわしい条件
ボルズィの臨床試験
ボルズィのIFは、臨床試験ではナルコレプシー等の患者を除外し、臨床試験で本剤投与によるカタプレキシーの発現は認められていない、と書いています。9.1.1の解説には、長期投与試験でナルコレプシー様症状に関連する有害事象が5mg群3例(1.6%)、10mg群3例(1.6%)あり、いずれも2週時までに発現した、という記載もあります(内訳は悪夢の節のくわしい条件)。
ナルコレプシーではない患者での症例報告
Kulkarniらは、ナルコレプシーではない39歳男性が、スボレキサントの開始直後に、感情で誘発される両側の眼瞼下垂、不明瞭な発語、ふらつきを繰り返した、1例の症例報告をしています。スボレキサントの中止と、不眠症の認知行動療法、エスシタロプラム、持続陽圧呼吸療法を併せた治療のあとに、症状は大きく軽減し、軽い症状は残りました。著者は、感受性のある人でレム睡眠の侵入によってカタプレキシー様の現象が起こりうる、と考察しています。症例報告1例で、頻度や因果関係は分かりません。
機序とは別に注意する副作用
頭痛、浮動性めまい、倦怠感・疲労、悪心なども11.2に載っています。
同じ薬効群の薬は、どう違う?
4剤の効能は、どれも不眠症です(4.)。この節では、禁忌と、CYP3A阻害薬・誘導薬との併用の違いを、添付文書で確認できた範囲で整理します。
| 剤 | 禁忌 | CYP3A阻害薬・誘導薬 |
|---|---|---|
| スボレキサント(ベルソムラ) | 2項目。本剤の成分に対する過敏症の既往歴と、強いCYP3A阻害薬(下の12剤)の投与中。重度の肝機能障害は禁忌に入っておらず、注意の項(9.3.1) | 強い阻害薬は併用禁忌。中等度の阻害薬(ジルチアゼム、ベラパミル、フルコナゾール等)は、1日1回10mgへの減量を考慮し、慎重に観察。強い誘導薬(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)は併用注意で、作用の減弱のおそれ |
| レンボレキサント(デエビゴ) | 2項目。本剤の成分に対する過敏症の既往歴と、重度の肝機能障害 | 併用禁忌の記載はなし。阻害薬(中程度又は強力。フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル、イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)は併用注意で、可否を判断し、併用する場合は1日1回2.5mg。誘導薬(リファンピシン、フェニトイン等)は併用注意で、作用の減弱のおそれ |
| ダリドレキサント(クービビック) | 3項目。本剤の成分に対する過敏症の既往歴、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)、強いCYP3A阻害薬(下の8種類)の投与中 | 強い阻害薬は併用禁忌。中程度の阻害薬(ジルチアゼム、ベラパミル、エリスロマイシン、フルコナゾール等)は、可否を判断し、投与する場合は1日1回25mg。強い又は中程度の誘導剤(リファンピシン、フェニトイン、エファビレンツ、カルバマゼピン等)は併用注意で、効果が減弱するおそれ。誘導作用のない又は弱い薬剤への代替を考慮 |
| ボルノレキサント(ボルズィ) | 3項目。本剤の成分に対する過敏症の既往歴、重度の肝機能障害(Child-Pugh分類C)、強いCYP3A阻害薬(下の8種類)の投与中 | 強い阻害薬は併用禁忌。中程度のCYP3A阻害作用を有する薬剤(フルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミル塩酸塩等)は併用注意で、1日1回2.5mgとする。グレープフルーツジュースも併用注意。誘導作用を有する薬剤(リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトイン等)は併用注意で、作用の減弱のおそれ |
ベルソムラの禁忌の12剤は、次のとおりです(2026年8月改訂、第6版)。イトラコナゾール(イトリゾール)、ポサコナゾール(ノクサフィル)、ボリコナゾール(ブイフェンド)、クラリスロマイシン(クラリシッド)、ボノプラザン・アモキシシリン・クラリスロマイシン(ボノサップ)、ラベプラゾール・アモキシシリン・クラリスロマイシン(ラベキュア)、リトナビル(ノービア)、ニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッド)、エンシトレルビル(ゾコーバ)、セリチニブ(ジカディア)、ツカチニブ(ツカイザ)、ロナファルニブ(ゾキンヴィ)。
クービビックとボルズィの禁忌の8種類は、同じ薬剤です。イトラコナゾール、クラリスロマイシン、ボリコナゾール、ポサコナゾール、リトナビル含有製剤、コビシスタット含有製剤、セリチニブ、エンシトレルビル フマル酸。
くわしい条件
用法・用量
ベルソムラは、成人に1日1回20mg、高齢者に1日1回15mgを就寝直前に経口投与します(6.)。デエビゴは、成人に1日1回5mgを就寝直前に経口投与し、症状により適宜増減しますが、1日1回10mgを超えません(6.)。クービビックは、成人に1日1回50mgを就寝直前に経口投与し、患者の状態に応じて1日1回25mgを投与できます(6.)。ボルズィは、成人に1日1回5mgを就寝直前に経口投与し、症状により適宜増減しますが、1日1回10mgを超えません(6.)。
中等度の肝機能障害
デエビゴは、1日1回5mgを超えないこととし、慎重に投与します(7.5)。クービビック(Child-Pugh分類B)は、1日1回25mgとし、慎重に投与します(7.3)。ボルズィ(Child-Pugh分類B)は、1日1回2.5mgとします(7.5)。ベルソムラは、7.に中等度の肝機能障害の用量規定がありません。
BZD受容体作動薬とは、どう違う?
作用のしくみは、先の機序の節で見ました。ここでは、ゾルピデムとブロチゾラムの添付文書(出典欄)と比べます。
| 項目 | オレキシン受容体拮抗薬(4剤) | BZD受容体作動薬(2剤) |
|---|---|---|
| 重症筋無力症・急性閉塞隅角緑内障 | 4剤とも、禁忌に入っていない | どちらも禁忌(ゾルピデム2.3・2.4、ブロチゾラム2.1・2.2) |
| 依存性・離脱症状 | 4剤とも、本文に「依存」「離脱」の語は確認できない。臨床薬理試験の項に薬物乱用の試験があるのは、ベルソムラ17.3.1、デエビゴ17.1.2、クービビック17.3.3で、ボルズィの17.3にはない。規制区分は習慣性医薬品 | 重大な副作用に、ゾルピデムは「依存性、離脱症状」(11.1.1)、ブロチゾラムは「依存性」(11.1.3)。規制区分は第三種向精神薬と習慣性医薬品 |
| 健忘・睡眠随伴症状 | 睡眠時随伴症が11.2に頻度不明で載るのは、ベルソムラ、デエビゴ、クービビックで、ボルズィの11.2にはない。一過性前向性健忘の記載は、4剤とも確認できない | 重大な副作用に、ゾルピデムは一過性前向性健忘・もうろう状態・睡眠随伴症状(11.1.3)、ブロチゾラムは一過性前向性健忘・もうろう状態(11.1.2)。ゾルピデムは、睡眠随伴症状として異常行動を発現したことがある患者が禁忌(2.5) |
| 呼吸 | 重大な副作用の項に、呼吸抑制は確認できない | どちらも重大な副作用に呼吸抑制(頻度不明)(11.1.4) |
| 翌朝以後の眠気など | 4剤とも8.1に記載(ボルズィは「不眠症あるいは本剤の影響により」) | ゾルピデム8.2、ブロチゾラム8.1に同様の記載 |
ゾルピデムは悪夢(0.1〜5%未満)と幻覚(0.1%未満、11.1.2)が、ブロチゾラムは悪夢と幻覚(頻度不明)が11.2に載っています。禁忌は、表に挙げた以外にもあります。ゾルピデムは5項目(過敏症、重篤な肝障害、重症筋無力症、急性閉塞隅角緑内障、睡眠随伴症状として異常行動を発現したことがある患者)、ブロチゾラムは2項目です。
患者さんには、どう伝える?
たとえば、次のように伝えます。
- 「飲むのは、寝る直前にしてください。」
- 「翌朝に眠気が残ることがあります。運転など危険を伴う作業は、飲んだ翌朝以後も気をつけてください。」
- 「怖い夢を見たり、眠りぎわに体が動かなくなったりしたら、教えてください。」
- 「感染症やピロリ菌除菌の薬、抗真菌薬など、新しい薬が出たときは、この睡眠薬を飲んでいることを、医師と薬剤師に伝えてください。お酒は避けてください。」
- 「ボルズィを飲んでいる人は、グレープフルーツジュースも、飲む前に相談してください。」
お酒について、ベルソムラとデエビゴは飲酒を避けさせる、クービビックは飲酒に注意する必要がある、と添付文書は書いています。
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ご利用にあたって この記事は、薬剤師など医療従事者に向けて、添付文書や公開資料をもとに一般的な情報をまとめたものです。個々の患者さんへの投与や治療の判断は、最新の添付文書と、医師・薬剤師の判断に従ってください。内容の正確さには注意を払っていますが、正確性や最新性を保証するものではありません。この記事の情報を利用したことで生じたいかなる損害についても、当ブログは責任を負いかねます。
よくある質問
デエビゴは、ナルコレプシーやCYP3A誘導薬が禁忌ですか?
禁忌ではありません。デエビゴの禁忌は、本剤の成分に対する過敏症の既往歴と、重度の肝機能障害の2項目です(2.)。ナルコレプシー又はカタプレキシーのある患者は、症状を悪化させるおそれがあるという注意の対象です(9.1.1)。リファンピシン、フェニトイン等のCYP3A誘導薬は、併用注意で、作用を減弱させるおそれがあります(10.2)。デエビゴに併用禁忌の記載はありません。
強いCYP3A阻害薬との併用は、4剤でどう違いますか?
ベルソムラ、クービビック、ボルズィは、併用禁忌です。デエビゴは併用注意で、CYP3Aを中程度又は強力に阻害する薬との併用は、患者の状態を慎重に観察した上で可否を判断し、併用する場合は1日1回2.5mgとします(7.4)。ただし、重度の肝機能障害があり、強いCYP3A阻害薬も飲んでいる人は、ベルソムラは併用禁忌、デエビゴ、クービビック、ボルズィは重度の肝機能障害が禁忌なので、4剤とも使えません。
悪夢や睡眠時麻痺は、なぜ起きるのですか?
Yasudaらの論文(スボレキサント、精神疾患のある患者の単施設後ろ向き研究)は、導入部で、スボレキサントの拮抗作用がレム睡眠の増加と関連し、患者の状態によっては悪夢につながりうると述べています。抄録に、この研究がレム睡眠を測った記載はありません。睡眠構造では、デュアルオレキシン受容体拮抗薬が総睡眠時間を増やすのは主にレム睡眠を増やすことによる、とまとめた系統的レビューがあります(Clark JW et al. Sleep Med Rev. 2020;53:101332)。ただし、レム睡眠の増加が悪夢や睡眠時麻痺の原因だと示した研究は、ここで挙げた資料にはありません。悪夢と睡眠時麻痺は、4剤とも11.2に載っています。
薬の使い分けをPDFにまとめています。気になる方は薬の使い分けPDFもどうぞ。
出典・更新日
更新日:2026年10月2日。
- ベルソムラ錠 添付文書(2026年8月改訂、第6版)。KEGG MEDICUS japic_code=00066563:2.、4.、6.、7.、8.、9.1.1、9.3.1、10.、11.2、16.1、18.1、18.2
- デエビゴ錠 添付文書(2025年12月改訂、第4版)。KEGG MEDICUS japic_code=00068463:2.、4.、6.、7.、8.、9.1.1、9.3.1、10.2、11.2、16.1、16.7、18.1、18.2
- クービビック錠 添付文書(2025年12月改訂、第4版)。KEGG MEDICUS japic_code=00071539:2.、4.、6.、7.、8.、9.1.1、9.3、10.、11.2、16.1.1、18.1、18.2
- ボルズィ錠 添付文書(2025年11月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00071820:2.、4.、6.、7.、8.、9.1.1、9.3、10.、11.2、17.3、18.1
- マイスリー錠 添付文書(2023年6月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00046478:2.、8.2、9.1.1、11.1、18.1
- レンドルミン錠0.25mg 添付文書(2025年10月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00052533:2.、8.1、9.1.1、11.1、18.1
- ベルソムラ錠 医薬品インタビューフォーム(2026年8月改訂、第17版)。8.1、9.1.1、11.2の解説と用語解説
- デエビゴ錠 医薬品インタビューフォーム(2025年12月改訂、第11版)。7.4、8.1、9.1.1の解説
- クービビック錠 医薬品インタビューフォーム(2025年12月改訂、第4版)。8.1、9.1.1の解説
- ボルズィ錠 医薬品インタビューフォーム(2025年11月改訂、第3版)。8.1、9.1.1、10.2、11.2の解説と、長期投与試験の有害事象
- Yasuda K et al. Neuropsychopharmacol Rep. 2025;45:e12506
- Clark JW et al. Sleep Med Rev. 2020;53:101332
- Kulkarni N et al. J Sleep Res. 2026;35:e70310
- Na HJ et al. Sleep. 2024;47:zsad293
- 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 睡眠・覚醒障害研究部. 中枢性過眠症

