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抗コリン薬(過活動膀胱)|図解でわかる作用機序 副作用はなぜ起きる?

ひゃくさん

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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。過活動膀胱の抗コリン薬(ムスカリン受容体拮抗薬)の副作用がなぜ起きるのかを、作用機序の図からたどります。主な出典は、各薬の添付文書とインタビューフォーム、ムスカリン受容体の総説、日本老年医学会のガイドライン、厚生労働省のマニュアルです。

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どんな薬? 膀胱の筋肉にあるムスカリン受容体をふさいで、膀胱が勝手に縮むのを抑える薬です。ソリフェナシン、イミダフェナシン、フェソテロジンなどがあります。

副作用はなぜ起きる? 同じ受容体は唾液腺、腸、目、脳にもあります。全身でふさがれるので、口渇や便秘などが出ることがあります。

何に気をつける? 尿閉、閉塞隅角緑内障(トビエースは眼圧が調節できない場合)、腸管の閉塞などは禁忌です。高齢者では認知機能と薬の重なりにも注意します。

抗コリン薬は、どうやって効く?

ふだんは、アセチルコリンが膀胱、唾液腺、腸のムスカリン受容体(膀胱ではM3が主に、腸ではM2とM3)に届いて、膀胱が収縮し、唾液が出て、腸が動く。ムスカリン受容体をふさぐ薬を飲むと、どこでもアセチルコリンが届かなくなり、膀胱の収縮が弱まる一方、唾液が減り、腸の動きが鈍る。β3作動薬は膀胱のβ3受容体を刺激して膀胱をゆるめる、という図

上の図の01のとおり、排尿のときは、副交感神経の端からアセチルコリンが出て、膀胱の筋肉(排尿筋)のムスカリン受容体に結合し、膀胱が縮みます。膀胱の収縮には、ムスカリン受容体のうちM3が主に関わります(総説、Abrams et al. Br J Pharmacol. 2006;148:565-578)。

抗コリン薬は膀胱のムスカリン受容体に結合し、アセチルコリンが受容体に結合するのを阻害します。膀胱の異常な収縮が抑えられます(ベタニスのインタビューフォーム)。効能又は効果は、過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁です(各添付文書の4.)。トビエースは、神経因性膀胱における排尿管理も効能又は効果です。

ただし、ムスカリン受容体は膀胱だけにあるわけではありません。ベタニスのインタビューフォームは、唾液腺や腸管などにも存在し、口内乾燥、便秘、目の調節障害などの副作用を伴うことがある、と書いています。図の02は、同じ薬が膀胱の外でも受容体をふさぐ様子です。唾液腺ではM3が唾液の分泌に主に関わり、腸ではM2とM3が重要です(同じ総説)。

薬ごとの違いもあります。ベシケアはM3への親和性が高く(18.2、in vitro)、ウリトスとステーブラはM3とM1に高い親和性を示します(18.2.2、in vitro)。トビエースは、活性代謝物の5-HMT(トルテロジン5-ヒドロキシメチル体)がM1〜M5にほぼ同程度の親和性を示します(18.1)。ベシケアは、顎下腺より膀胱の平滑筋に対する抑制作用が強かった、とも書いています(18.3.1、in vitro)。

β3作動薬は、機序が違います。 ミラベグロン(ベタニス)とビベグロン(ベオーバ)は、膀胱平滑筋のβ3受容体を刺激して、膀胱をゆるめます(各添付文書18.1)。図の03です。ベタニスのインタビューフォームは、抗コリン薬以外の新規薬剤として開発された、と書いています。厚生労働省の薬剤性せん妄のマニュアルは、ミラベグロンを「抗コリン作用のない」薬と書いています。

副作用はなぜ起きる?

ムスカリン受容体がふさがれることから、口渇、便秘、尿閉、眼圧上昇へつながる道すじの図。唾液腺で唾液の分泌が抑えられ口内乾燥が出る。腸の収縮と運動が抑えられ便秘になる。膀胱の排尿筋で収縮が抑制され排尿困難の悪化や尿閉が出る。瞳孔括約筋が麻痺して散瞳し、狭い隅角が閉塞して房水が流れにくくなり、狭隅角の人で眼圧が上がる。各副作用の箱には「ことがある」の限定語つき

上の図は、4つの副作用が、ムスカリン受容体がふさがれることからつながる道すじです。認知機能、抗コリン作用をもつ薬の重なり、QT延長は図に入れていません。あとで短く書きます。禁忌は、あとの表にまとめています。

口渇(口内乾燥)

なぜ? 唾液腺では、M3とM1が唾液の分泌に関わります(総説)。ベシケアは顎下腺細胞でカルシウム濃度の上昇を抑え(18.3.1、in vitro)、ウリトスは唾液腺の分泌抑制作用より膀胱の収縮抑制作用が相対的に強いと書いています(18.1)。膀胱のほうに強く働いても、唾液腺にも作用が及びます(ベシケア18.3.1)。

どんな症状? 口の渇きです。添付文書の語は「口内乾燥」です。頻度は、ベシケア28.3%、トビエース36.5%などです(11.2)。剤ごとに母集団と用量が違い、直接比べた結果ではありません。ほかの数字は「くわしい条件」にあります。

どう防ぐ・どう伝える? 飲み始める前に、口が渇くことがあると伝えておきます。

くわしい条件

口内乾燥と便秘の頻度(添付文書11.2)

口内乾燥は、ベシケア28.3%、ウリトスとステーブラ33.1%(口渇・口内乾燥)、トビエース36.5%(10%以上)です。便秘は、ベシケア14.4%、ウリトスとステーブラが5%以上、トビエースが1〜10%未満です。ミラベグロンは便秘と口内乾燥が1〜5%未満、ビベグロンは口内乾燥と便秘が1〜2%未満です。別々の試験の数字で、薬どうしを直接比べた結果ではありません。ベシケアの28.3%は、インタビューフォームによると承認時までの国内1,267例の集計です。製造販売後調査等(7,254例)では4.8%です。トビエースの36.5%について、集計の母集団と用量は添付文書11.2に書かれていません。用量別の数字は、国際共同第II相試験(17.1.1、因果関係を否定できない有害事象)の口内乾燥で、プラセボ9.1%、4mg 27.8%、8mg 49.5%です。

高齢者のガイドライン

日本老年医学会のガイドライン(2015)は、高齢者のムスカリン受容体拮抗薬の副作用として、口腔乾燥、便秘、排尿症状の悪化、尿閉を挙げ、低用量から使うよう書いています(30ページ)。このガイドラインは、2025年6月下旬に改訂版が発売予定とされました(厚生労働省 第21回高齢者医薬品適正使用検討会 資料3、3ページ、20ページ)。ここで示すのは2015年版の記載です。2025年版は、開始を考慮すべき薬物にβ3受容体作動薬を追加しました(同資料)。

便秘

なぜ? 便通異常症診療ガイドライン2023(慢性便秘症)は、抗コリン薬は腸管の平滑筋収縮、蠕動運動、腸液分泌の抑制により便秘を引き起こす、と書いています(BQ3-5の解説)。ガイドラインの表で薬品名が挙がっている抗コリン薬は、アトロピンとスコポラミンです。

どんな症状? 便が出にくくなります。重い副作用に麻痺性イレウス(頻度不明)があり、著しい便秘、腹部膨満などがあらわれたら投与を中止し、適切な処置を行うよう書かれています(ベシケア11.1.5、ウリトス11.1.4)。

どう防ぐ・どう伝える? 腸管の閉塞と麻痺性イレウスのある人は禁忌です(表)。日本老年医学会のガイドライン(2015年版)は、高齢者のムスカリン受容体拮抗薬で、必要時に緩下剤を併用するよう書いています(30ページ)。

尿閉(排出障害)

なぜ? 膀胱は、薬が効く場所です。ベシケアのインタビューフォームは、排尿困難のある人に投与すると、本剤の抗コリン作用により膀胱平滑筋の収縮が抑制され、その症状がさらに悪化したり、尿閉を誘発したりする可能性がある、と書いています(9.1.1の解説)。添付文書は、尿閉を禁忌とする理由を、排尿時の膀胱収縮が抑制され、症状が悪化するおそれがあるためと書いています(2.2)。

どんな症状? 尿が出にくい、出ない、という症状です。重大な副作用に尿閉(頻度不明)があります(ベシケア11.1.3)。トビエースは2.0%と記載があります(11.1.1)。

どう防ぐ・どう伝える?

  • 前立腺肥大症などの下部尿路閉塞疾患がある人は、投与前に残尿量を測り、投与後も残尿量の増加に注意します(トビエース9.1.1、ウリトス9.1.1)。ベシケアは、排尿困難のある人で、投与中も定期的に確認するよう書いています(9.1.1)。
  • 前立腺肥大症などを合併している人は、その治療を優先します(5.2)。
  • β3作動薬にも、尿閉が重大な副作用として載っています(ベタニス、ベオーバの11.1.1、頻度不明)。ベタニスは、抗コリン剤と併用するときは尿閉などに十分注意するよう書いています(8.1)。

眼圧上昇(閉塞隅角緑内障)

なぜ? 眼にもムスカリン受容体があり、M3がいちばん多いと総説は書いています。厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアル(緑内障)は、抗コリン作用による瞳孔括約筋の麻痺で散瞳が生じ、狭隅角眼では虹彩根部が房水の流出路である隅角を閉塞し、房水が貯留して眼圧が上昇すると考えられる、と書いています。マニュアルは、散瞳による眼圧上昇の機序として、相対的瞳孔ブロックなど2つを挙げています。リスク因子は、狭隅角眼と原発閉塞隅角緑内障です。日本眼科医会と日本緑内障学会も、抗コリン薬は散瞳作用があるため、閉塞隅角緑内障では医原性の緑内障発作を引き起こす可能性がある、と書いています。ベシケアのインタビューフォームは、毛様筋が弛緩し、水晶体の彎曲が不十分となり、房水流出の抵抗が増大して眼圧が上昇する、とも書いています(2.3の解説)。

どんな症状? 急性緑内障発作では、眼圧の亢進、嘔気、頭痛を伴う眼痛、視力低下などが出ます(ベシケア11.1.7、頻度不明)。霧視などの眼調節障害も起こることがあります(8.1)。

どう防ぐ・どう伝える?

  • トビエースの禁忌は「眼圧が調節できない閉塞隅角緑内障」で、眼圧が調整可能な人は9.1.4にあります。ベシケアとウリトス・ステーブラは閉塞隅角緑内障が禁忌です(表)。
  • マニュアルは、狭隅角眼をリスク因子に挙げています。
  • 霧視、眠気、めまいが出ることがあるので、運転などの危険を伴う作業には注意するよう伝えます(8.1)。
  • ミラベグロンにも、緑内障の患者は定期的な眼科的診察を行う、と書かれています(ベタニス9.1.6)。

認知機能への影響(高齢者)

脳にもムスカリン受容体があり、M1は大脳皮質や海馬に多く、学習や記憶に関わります。総説は、中枢のM1の拮抗が認知機能障害を起こす可能性があり、M2も認知機能に関わると考えられる、と書いています。添付文書には、ベシケアの認知機能障害と幻覚・せん妄(11.2、11.1.6、頻度不明)、ウリトスの幻覚・せん妄(11.1.5)、トビエースの錯乱状態(11.2)が載っています。認知症または認知機能障害のある人は、抗コリン作用により症状を悪化させるおそれがあります(ベシケア9.1.6、ウリトス9.1.4、トビエース9.1.8)。

くわしい条件

マニュアルとガイドライン

厚生労働省のマニュアルは、せん妄の原因として、とくに原因となりやすいのはアセチルコリン神経系の機能低下を起こす薬剤だと書いています(PDFの15ページ)。オキシブチニンによるせん妄が疑われるときは、血液脳関門への透過性が低くM3への選択性が高いダリフェナシンやソリフェナシンなどか、抗コリン作用のないミラベグロンへの変更を検討する、と書いています(27ページ)。日本老年医学会のガイドライン(2015年版)は、オキシブチニンの経口薬を、認知機能低下やせん妄のリスクがあるので、可能な限り使用しないとし、代わりに他のムスカリン受容体拮抗薬を挙げています(30ページ)。

ベシケアのインタビューフォーム

臨床用量(10mgまで)の範囲では、認知機能障害を疑わせる有害事象発現の可能性は低いと考えられる結果が得られた、と書いています。一方で、認知機能障害がすべてのムスカリン受容体拮抗薬に共通して発現する事象であるか否かは不明だが、認知症または認知機能障害のある人では、抗コリン作用により認知症症状の悪化が起こるおそれはある、とも書いています(9.1.6の解説)。

投与対象

過活動膀胱の症状を明確に認識できない認知症または認知機能障害の患者は、投与対象になりません(ベシケアとウリトスの5.3、トビエースは5.3で症状の把握が困難な場合)。

抗コリン薬の累積使用と認知症の観察研究

Gray et al. JAMA Intern Med. 2015;175:401-407は、65歳以上で認知症のない3,434人を平均7.3年追跡した、前向きのコホート研究です。強い抗コリン薬の10年間の累積使用量が多いほど、認知症の発症が多い関連が見られました。累積量が多い群(標準化1日量で1,095超)のハザード比は、使わなかった群に対して1.54(95%信頼区間1.21〜1.96)です。よく使われていた種類は、三環系抗うつ薬、第一世代の抗ヒスタミン薬、膀胱の抗ムスカリン薬でした。観察研究なので、因果関係は確定していません。この論文の抄録は、過活動膀胱の薬だけの結果を示していません。

薬の脳への移行の非臨床データ

ウリトスの添付文書は、ラットの水迷路の試験で、M1受容体拮抗作用により空間認知機能が障害される可能性は低いと推測された、と書いています(18.4.2)。トビエースのインタビューフォームと、メーカー所属の著者による新薬紹介(檜杖 et al. Folia Pharmacol Jpn. 2014;143:203-213)は、ラットで5-HMTの脳内と血漿中の濃度比が0.16で、脳内移行性は低かったと書いています。いずれも動物の試験です。

高齢者への注意(総説)

総説は、脳での拮抗の程度は薬が血液脳関門を通る量にも左右されるとし、高齢者はムスカリン作用をもつ薬を何種類も処方されることが多く、中枢の副作用の影響を受けやすい、と書いています。

抗コリン作用をもつ薬が重なるとき

ほかの薬も、同じ受容体をふさぎます。3剤の添付文書は、抗コリン作用を有する薬剤(三環系抗うつ剤、フェノチアジン系薬剤、モノアミン酸化酵素阻害剤)との併用で、口内乾燥、便秘、排尿困難等があらわれるおそれがあり、抗コリン作用が増強されるおそれがある、と書いています(10.2)。お薬手帳で、これらの薬が入っていないかを確認します。

くわしい条件

併用注意と抗コリン作用をもつ薬の一覧

ベシケアは、抗コリン剤も併用注意に挙げ、これらの薬を併用するときは、上記の症状の発現に注意しながら投与するよう書いています(インタビューフォーム)。厚生労働省のマニュアルの表3は、抗コリン作用をもつ代表的な薬を挙げています。強いものには、三環系抗うつ薬(アミトリプチリンなど)、第一世代の抗ヒスタミン薬(プロメタジンなど)、定型抗精神病薬(クロルプロマジンなど)があります。弱いものには、第二世代の抗ヒスタミン薬(セチリジンなど)、H2受容体拮抗薬(シメチジンなど)、パロキセチンがあります(PDFの15ページ)。日本老年医学会のガイドライン(2015年版)は、ムスカリン受容体拮抗薬、抗パーキンソン病薬、三環系抗うつ薬、定型抗精神病薬、第一世代のH1受容体拮抗薬などの抗コリン薬は、可能な限り使用を控え、代替薬があれば変更し、なければ必要最小限にとどめる、と書いています(101ページ)。

機序が説明されていない副作用(QT延長)

QT延長は、次の記載を押さえておきます。ベシケアのインタビューフォームは、臨床用量としての安全マージンはあるものの、コハク酸ソリフェナシンそのものにQT延長作用があると書き(2.7の解説)、同じインタビューフォームに、hERGカリウムチャネル(ICH S7Bの通知は、hERGがIKr電流の経路となるヒトカリウムチャネルのα-サブユニットに相当すると考えられるとしています。IKrは、活動電位の後期再分極相のカリウムイオン流出にかかわる電流です)の抑制(半数阻害濃度のIC50は270nM、in vitro)と、摘出したモルモット乳頭筋とイヌのプルキンエ線維(3〜300nM)で活動電位に影響がなかった結果も載せています。心電図は、無麻酔イヌへの経口投与(1〜30mg/kg)で影響がなく、ペントバルビタール麻酔イヌへの静脈内投与(0.01〜10mg/kg)では、1mg/kg以上でPR間隔の延長作用が見られ、10mg/kgでは5例中4例で完全房室ブロックが認められ、そのうち1例が死亡しました。9.1.3の解説は、30mg投与時はわずかなQT延長作用が認められるものの臨床上問題とならないと考えられた、としています。ウリトスのインタビューフォームは、QT延長を抗コリン剤共通の注意事項として設定しています(11.1.6の解説)。ベシケアのインタビューフォームは、2.7の記載と安全性薬理試験を因果でつないでいません。ベシケア(11.1.4)、ウリトス(11.1.6)、トビエース(11.1.3)に、QT延長の記載があります。β3作動薬でも、ビベグロンは頻度不明の副作用に載り(11.2)、ミラベグロンは心血管系障害のある人で投与前に心電図検査などをするよう書いています(9.1.1)。

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QTの試験成績と注意

添付文書17.3.1の健康成人女性86例の試験で、ベシケア10mgのQT間隔の変化はプラセボと同程度でした。30mgでは増加しました(外国人データ。国内の1日最高投与量は10mg、17.3.1)。トビエースの外国人のQT/QTc評価試験では、4mg/日と28mg/日で、プラセボとの有意差はありませんでした(インタビューフォーム)。ミラベグロンの17.3.1には、外国人健康成人のQT/QTc評価試験で、女性のQTcが100mgと200mgで延長する傾向がある、と書かれています(承認用量は50mg)。

ベシケアは、QT延長症候群の人と、QT延長を起こすことが知られている薬剤との併用で、過量投与に注意します(9.1.3、10.2)。ウリトスは、不整脈のある人で、抗コリン作用により症状が悪化するおそれがあります(9.1.3)。

同じ薬効群の薬は、どう違う?

禁忌は、全項目を表にまとめました。○は禁忌です。

禁忌 ベシケア ウリトス・ステーブラ トビエース ベタニス ベオーバ
過敏症の既往歴 ○ ○ ○(成分または酒石酸トルテロジン) ○ ○
尿閉 ○ ○ ○
閉塞隅角緑内障 ○ ○ ○(眼圧が調節できない場合)
幽門・十二指腸・腸管の閉塞、麻痺性イレウス ○ ○ ○
胃・腸アトニー ○ 消化管運動・緊張が低下している患者 ○
重症筋無力症 ○ ○ ○
重篤な心疾患 ○ ○ ○ ○
重度の肝機能障害 ○(Child-Pugh C) ○(Child-Pugh C) ○(Child-Pughスコア10以上)
妊婦・授乳婦 ○
フレカイニド・プロパフェノン投与中 ○
作用 M3の親和性が高い M3とM1の親和性が高い 5-HMTがM1〜M5に同程度 β3刺激 β3刺激

ベタニスの警告に、生殖可能な年齢の患者への投与はできる限り避けることがあります。β3作動薬は、β3受容体を刺激して膀胱をゆるめる薬です。口内乾燥と便秘は、副作用の欄に載っています。

くわしい条件

用量に関する記載

ベシケアは、中等度の肝機能障害(Child-Pugh分類B)と重度の腎機能障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)で、1日1回2.5mgから開始し、上限は5mgです(7.1、7.2)。高齢者は5mgから開始します(7.3)。ウリトスは1日2回で、中等度以上の肝障害と重度の腎障害では、1回0.1mgを1日2回とします(7.2、7.3)。トビエースは徐放錠で、重度の腎障害(クレアチニンクリアランス30mL/min未満)、中等度の肝障害(Child-Pugh分類B)、強力なCYP3A4阻害薬の投与中は、1日4mgとし、8mgへの増量はしません(7.)。ミラベグロンは、中等度の肝機能障害と重度の腎機能障害(eGFR15〜29)で、25mgから開始し(7.1、7.2)、血圧上昇があるため、投与前と投与中に定期的に血圧を測ります(8.3)。ビベグロンには、用法及び用量に関連する注意の項がありません。

患者さんには、どう伝える?

たとえば、次のように伝えます。

  • 「膀胱が勝手に縮むのを抑える薬です。同じしくみが唾液や腸の動きにも働くので、口が渇いたり、便秘になったりすることがあります。」
  • 「尿が出にくい、出ない、というときは、早めに連絡してください。」
  • 「目が痛い、頭痛や吐き気を伴う、見えにくい、というときは、すぐに連絡してください。」
  • 「ほかに、うつ病や精神科の薬、アレルギーの薬(第一世代の抗ヒスタミン薬)を飲んでいる場合は、お薬手帳を見せてください。重なると、口の渇きや便秘が強くなることがあります。」

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ご利用にあたって この記事は、薬剤師など医療従事者に向けて、添付文書や公開資料をもとに一般的な情報をまとめたものです。個々の患者さんへの投与や治療の判断は、最新の添付文書と、医師・薬剤師の判断に従ってください。内容の正確さには注意を払っていますが、正確性や最新性を保証するものではありません。この記事の情報を利用したことで生じたいかなる損害についても、当ブログは責任を負いかねます。

よくある質問

過活動膀胱の抗コリン薬で、口の渇きと便秘が出るのはなぜですか?

ムスカリン受容体が膀胱だけでなく、唾液腺や腸にもあるためです。ベタニスのインタビューフォームは、膀胱以外に唾液腺や腸管などにも存在し、口内乾燥、便秘、目の調節障害などの副作用を伴うことがある、と書いています。便通異常症診療ガイドライン2023は、抗コリン薬は腸管の平滑筋収縮、蠕動運動、腸液分泌の抑制により便秘を引き起こす、と書いています。

β3作動薬に変えれば、口の渇きや便秘は出ませんか?

出ることがあります。ミラベグロンとビベグロンは、β3受容体を刺激して膀胱をゆるめる薬です。便秘と口内乾燥は、ベタニスで1〜5%未満、ベオーバで1〜2%未満の副作用として添付文書に載っています。尿閉も重大な副作用に載っています。

高齢者に抗コリン薬を使うとき、認知機能で何に気をつけますか?

認知症または認知機能障害のある人は、抗コリン作用により症状を悪化させるおそれがあります(ベシケア9.1.6、ウリトス9.1.4、トビエース9.1.8)。ベシケアには、認知機能障害と幻覚・せん妄が頻度不明の副作用として載っています。日本老年医学会のガイドライン(2015年版)は、オキシブチニンの経口薬を可能な限り使用しないとし、他のムスカリン受容体拮抗薬は低用量から使うよう書いています。

薬の使い分けをPDFにまとめています。気になる方は薬の使い分けPDFもどうぞ。

出典・更新日

更新日:2026年10月2日。

  • ベシケア錠2.5mg・5mg 添付文書(2020年11月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00051452:2.、5.、7.、8.、9.1、10.2、11.1、11.2、17.3.1、18.1〜18.3
  • ベシケア錠 医薬品インタビューフォーム(2020年12月改訂、第21版):2.3と2.7の解説、8.の解説、9.1.1、9.1.3、9.1.6の解説、10.2の解説、11.1の解説、承認時までの副作用集計、製造販売後調査の集計、安全性薬理試験
  • ウリトス錠0.1mg 添付文書(2026年6月改訂、第3版)。KEGG MEDICUS japic_code=00059398:2.、5.、7.、8.、9.1、10.2、11.1、11.2、18.1〜18.4
  • ステーブラ錠0.1mg 添付文書(2025年6月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00059399(禁忌、副作用、作用機序がウリトスと同じ記載であることを確認)
  • ウリトス錠0.1mg 医薬品インタビューフォーム(2026年6月改訂、第21版):11.1.6の解説
  • トビエース錠4mg・8mg 添付文書(2024年3月改訂、第4版)。KEGG MEDICUS japic_code=00061309:2.、5.、7.、8.、9.1、10.2、11.1、11.2、18.1、18.2
  • トビエース錠 医薬品インタビューフォーム(2023年11月改訂、第7版):QT/QTc評価試験、5-HMTの脳内移行
  • 檜杖 et al. Folia Pharmacol Jpn. 2014;143:203-213(トビエースの新薬紹介。メーカー所属の著者による)
  • ベタニス錠25mg・50mg 添付文書(2021年8月改訂、第2版)。KEGG MEDICUS japic_code=00059757:1.、2.、8.、9.1、11.1、11.2、17.3.1、18.1
  • ベタニス錠 医薬品インタビューフォーム(2023年4月改訂、第17版):開発の経緯、薬効薬理
  • ベオーバ錠50mg 添付文書(2026年3月改訂、第6版)。KEGG MEDICUS japic_code=00072008:2.、6.、9.1、11.1、11.2、18.1
  • Abrams P et al. Muscarinic receptors: their distribution and function in body systems, and the implications for treating overactive bladder(総説). Br J Pharmacol. 2006;148:565-578
  • 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会. 便通異常症診療ガイドライン2023 慢性便秘症. BQ3-5
  • 日本老年医学会. 高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015. 30ページ、101ページ
  • 厚生労働省. ヒト用医薬品の心室再分極遅延(QT間隔延長)の潜在的可能性に関する非臨床的評価について(ICH S7B). 平成21年10月23日薬食審査発第1023004号
  • 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 緑内障(平成21年5月)
  • 日本眼科医会・日本緑内障学会. 抗コリン薬と緑内障
  • 厚生労働省 第21回高齢者医薬品適正使用検討会 資料3(令和7年12月25日)、20ページ
  • 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 薬剤性せん妄(令和4年2月). PDFの15ページ、27ページ
  • Gray SL et al. JAMA Intern Med. 2015;175:401-407

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