経口ステロイド|図解でわかる作用機序 副作用はなぜ起きる?
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。経口ステロイドの副作用がなぜ起きるのかを、作用機序の図からたどります。主な出典は、プレドニン錠・デカドロン錠・メドロール錠の添付文書、インタビューフォーム、日本骨代謝学会と日本内分泌学会の資料です。
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どんな薬? 細胞の中の受容体に結合し、核で遺伝子の転写を調節して、炎症や免疫を抑える薬です。プレドニゾロン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロンがあります。
副作用はなぜ起きる? 添付文書は、免疫抑制作用のほか、広範囲にわたる代謝作用があると書いています。免疫が抑えられると感染症、糖新生が増えると高血糖につながります。
何に気をつける? 服用量と期間、そして急に中止しないことです。プレドニゾロン換算7.5mg/日以上で骨折リスクが上がった国内の解析があります。
ステロイドは、どうやって効く?

上の図のとおり、プレドニゾロンなどのステロイドは、細胞質にあるグルココルチコイド受容体に結合して働きます。メドロール錠の添付文書は、糖質コルチコイドは細胞膜を通過し、受容体との結合を介して遺伝子の転写を調節する、と書いています(18.1)。プレドニゾロン錠(旭化成)のインタビューフォームによると、薬と結合した受容体は核の中へ移り、標的遺伝子の調節部位にあるDNA配列に2量体で結合します。遺伝子の転写を調節し、mRNAと蛋白質の量を増減させて、抗炎症作用と免疫抑制作用をあらわします。
プレドニン錠の添付文書(18.1)は、炎症を抑える流れを次のように書いています。
- 単量体のステロイドと受容体が複合体をつくる場合: NFκBとAP-1の機能を抑えます。どちらも、サイトカインの産生や細胞接着分子の発現を調節している転写因子です。
- 2量体の受容体と結合する場合: リポコルチンなどの誘導を介すると考えられています。
免疫抑制の仕組みは多彩で、Tリンパ球の遊出やインターロイキン2(IL-2)の産生を抑え、好中球の遊走能と貪食能も障害します(18.1)。代謝作用も広範囲にわたります(18.2)。プレドニン錠は、糖尿病の患者では糖新生作用等により血糖が上昇し、骨粗鬆症の患者では蛋白異化作用等により骨粗鬆症が増悪するおそれがある、と書いています(9.1.3、9.1.4)。
副作用はなぜ起きる?

上の図は、機序を添付文書や指針から追える4つを描いています。ほかの副作用は、あとの「機序とは別に注意する副作用」でまとめます。
感染症
なぜ? 免疫抑制作用のためです。図のとおり、Tリンパ球やIL-2、好中球の働きが抑えられます。プレドニン錠の添付文書は、感染症の患者に「免疫機能抑制作用により、感染症が増悪するおそれがある」と書いています(9.1.2)。
どんな症状? 誘発感染症や感染症の増悪です(プレドニン錠11.1.1、頻度不明)。B型肝炎ウイルスの増殖による肝炎や、進行性多巣性白質脳症(PML)も載っています。
どう防ぐ・どう伝える?
- 水痘または麻疹に感染すると、致命的な経過をたどることがあります。投与前に既往と予防接種の有無を確認し、既往のない患者で感染が疑われたら、直ちに受診するよう指導します。既往や予防接種のある人も、投与中に発症しうるので留意します(プレドニン錠8.1.3)。
- プレドニン錠とデカドロン錠は、長期あるいは大量の投与中の患者と、投与中止後6ヵ月以内の患者に、生ワクチンを接種しないよう書いています(8.2)。メドロール錠は、免疫抑制が生じる量の投与中の生ワクチンを禁忌としています(2.3)。
- B型肝炎ウイルスのキャリアと既往感染者は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーをモニタリングします(プレドニン錠9.1.9)。
量との関係では、対照のある試験71本の併合解析の層別で、プレドニゾンの1日量が10mg未満、または累積量が700mg未満の患者では、感染症は増えていませんでした。
くわしい条件
1989年の併合解析
Stuckらは、対照のある臨床試験71本のデータを併合しています。感染症の合併は、全身性ステロイド群で12.7%(2,111例)、対照群で8.0%(2,087例)で、相対危険度は1.6(95%信頼区間1.3〜1.9)でした。用量が増えると、ステロイド群でもプラセボ群でも感染症の発生率が上がったため、ステロイドだけでなく基礎疾患も関係している可能性がある、と抄録は書いています。
メドロール錠の記載
メドロール錠の添付文書は、感染症の発現頻度は副腎皮質ホルモン剤を増量すると高くなるとの報告がある、と書いています(11.1.1)。プレドニン錠とデカドロン錠のこの項には、この文はありません。
高血糖
なぜ? プレドニン錠の添付文書は、ステロイドが「肝臓での糖新生を促進し、末梢組織での糖利用を抑制する」と書いています(10.2、糖尿病用薬の項の機序欄)。糖尿病の患者では、血糖が上昇し、糖尿病が増悪するおそれがあります(9.1.3)。
どんな症状? 糖尿病(頻度不明)が、重大な副作用に載っています(プレドニン錠11.1.2)。厚生労働省のマニュアルの症例では、メチルプレドニゾロン500mg/日のパルス療法(入院6〜8日目)のあと、9日目からプレドニゾロン60mgを内服した人が、13日目に口渇と全身倦怠感を訴えました。
どう防ぐ・どう伝える?
- 糖尿病用薬やインスリン製剤を使っている人では、効果が弱まることがあります。併用するときは、用量に注意します(プレドニン錠10.2)。
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院した人の持続血糖測定の研究(Burt et al.)では、午後から夜に高くなっていました。プレドニゾロンを使った、既知の糖尿病がない40人の12〜24時の平均血糖(間質液グルコース)は142mg/dLで、使っていない群の117mg/dLより有意に高い値でした。
- 血糖を下げる治療を受けている人では、ステロイドを減らしたり中止したりするときに、治療によって低血糖が起こらないよう、英国の入院患者向けのガイドライン(2023年)が注意を促しています。
- 空腹時血糖だけでは、特に朝1回の中間作用型のステロイドで、高血糖を過小評価することがあります(Suh et al.)。測る時間帯は、くわしい条件に書きます。
くわしい条件
英国のガイドラインの時間帯の記載
Joint British Diabetes Societies for Inpatient Care(JBDS-IP)の2023年のガイドラインは、入院患者のためのものです。朝に飲むプレドニゾロンのような単回または短期のステロイドでは、影響を受けやすい人で、昼前までに血糖が上がり、夕方まで続き、翌朝には元の値に戻ることが多い、と書いています。血糖は、経口ステロイドの投与からおよそ4〜8時間後に上がると予測できる、とも書いています。ステロイドによる糖尿病のリスクがあると考えられる人では、ステロイドを始めるとき、昼食か夕食の前か後に、1日1回の血糖測定を始めるよう書いています。
総説(Suh et al.)は、ほとんどのグルココルチコイドで、空腹時血糖の測定は高血糖を過小評価することがあり、特に朝1回の中間作用型の投与でそうだ、と書いています。
日本のガイドライン
日本糖尿病学会の診療ガイドライン2024は、インスリン非依存状態の糖尿病の人でも、ステロイド治療による高血糖を認める場合は、インスリン療法を考慮する、と書いています(Q5-1)。厚生労働省の重篤副作用疾患別対応マニュアルは、肝での糖新生の亢進が主な原因と考えられている、と書いています。症例の昼食前血糖は443mg/dLで、プレドニゾロンの開始以前より耐糖能異常があった可能性も否定できない、と考察にあります。
Burtらの研究の数字と限界
0〜12時の平均血糖は、プレドニゾロン群が112mg/dLで、ステロイドを使っていない群の108mg/dLと差がありませんでした。抄録には、プレドニゾロンを飲んだ時刻の記載がありません。プレドニゾロンの有無のほかに、入院の理由も群で違います。
骨粗鬆症
なぜ? 添付文書の理由は、薬ごとに違います。プレドニン錠は「蛋白異化作用等により」、デカドロン錠は「骨形成抑制作用及びカルシウム代謝の障害を起こすことにより」、メドロール錠は「骨基質の合成を阻害し、骨形成を抑制する」です(9.1.4)。総説(川合 2009)は、カルシウムの負のバランスから二次性副甲状腺機能亢進を来たし、骨吸収が増加する、骨芽細胞に直接作用して骨形成も阻害する、と書いています。
どんな症状? 骨粗鬆症のほか、大腿骨や上腕骨などの骨頭無菌性壊死が、重大な副作用に載っています(プレドニン錠11.1.6)。メドロール錠は、脊椎圧迫骨折や病的骨折を起こすことがある、と書いています(11.1.3)。

量との関係は、日本骨代謝学会のガイドライン2014年改訂版の解析にあります。関節リウマチが中心の国内903例で、プレドニゾロン換算の1日量が5mg未満を基準にすると、新規の椎体骨折のハザード比は、7.5mg以上で2.166(95%信頼区間1.405〜3.338)でした。5mg以上7.5mg未満は1.149(95%信頼区間0.754〜1.756)で、有意差はありませんでした。
どう防ぐ・どう伝える? 以下は、2014年改訂版の基準です(2023年版も、薬物療法を始めるスコアの基準は2014年版のものを使うことを推奨しています)。
- 対象は、経口ステロイドを3ヵ月以上使用中、または使用予定の18歳以上です。投与量や期間にかかわらず、生活習慣の改善、食事・栄養の指導、運動療法を行います。
- 既存骨折、年齢、ステロイドの投与量、腰椎骨密度をスコアで評価し、3以上なら薬物療法です。
- 薬の推奨は、2023年版で変わっています。2023年版は、ビスホスホネート、抗RANKL抗体、テリパラチド(骨折リスクが高い人で)、エルデカルシトールを推奨しています(英語版で確認)。
くわしい条件
骨量と骨折の数字
ガイドラインは、長期ステロイド治療を受けている患者の30〜50%に骨折が起こるとの報告もある、と書いています。ステロイドの開始後の骨減少率は、最初の数ヵ月は8〜12%と高く、その後は年2〜4%です。骨密度が減る前に、骨折リスクの増加が起きる、とも書いています。1日量が1mg増えるごとに、骨折リスクは3.8%高くなりました。
骨折リスクのスコア
| 項目 | 区分 | スコア |
|---|---|---|
| 既存骨折 | なし / あり | 0 / 7 |
| 年齢 | 50歳未満 / 50歳以上65歳未満 / 65歳以上 | 0 / 2 / 4 |
| ステロイド投与量(プレドニゾロン換算) | 5mg/日未満 / 5mg以上7.5mg未満 / 7.5mg以上 | 0 / 1 / 4 |
| 腰椎骨密度(若年成人平均値に対する%、%YAM) | 80以上 / 70以上80未満 / 70未満 | 0 / 2 / 4 |
スコアが3未満なら経過観察で、胸腰椎のX線と骨密度測定を、6ヵ月〜1年ごとに行います。
2023年版の推奨
Tanakaらの2023年版(英語版)は、スコア3以上の人に、ビスホスホネート(CQ8、エビデンスレベルA)、抗RANKL抗体(CQ11)、副甲状腺ホルモン1受容体作動薬のテリパラチド(骨折リスクが高い人で推奨、CQ10)、エルデカルシトールなどの活性型ビタミンD製剤(CQ7)を推奨しています。選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)は「提案」です(CQ9)。薬物療法を始めるスコアの基準は、2014年版のものを使うことを推奨しています(CQ6)。2014年版では、アレンドロネートとリセドロネートが推奨度Aの第1選択薬で、デノスマブとエルデカルシトールは推奨度Cでした。
この資料の範囲
2023年版のうち確認したのは英語版(PubMed掲載の要旨と推奨一覧)で、日本語の書籍は確認していません。数字は、2014年改訂版の和文概略版のものです。
換算の扱い
2014年版の概略版は、投与量をプレドニゾロン換算で評価しています。
副腎不全(急な中止)
なぜ? 日本内分泌学会の指針は、生理的な量を超えるグルココルチコイドを長期間投与すると、体の中の視床下部-下垂体-副腎系が抑えられ、急に中止したり急に減量したりすると、副腎クリーゼが起こることがある、と書いています(指針 I-4.3)。
どんな症状? 副腎クリーゼのほか、添付文書は、連用後に急に中止すると、ときに発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋肉痛、関節痛、ショック等の離脱症状があらわれることがある、と書いています(プレドニン錠8.1.4)。続発性副腎皮質機能不全は、重大な副作用に載っています(11.1.2)。
どう防ぐ・どう伝える?
- 投与を中止するときは、徐々に減量するなど慎重に行います。離脱症状があらわれたら、直ちに再投与または増量します(プレドニン錠8.1.4)。
- 減量の方法は、プレドニン錠の添付文書が、関連学会のガイドライン等、最新の情報を参考にするよう書いています(7.1)。
- 投与中は、事故、手術等の場合に増量するなど、適切な処置を行います(8.1.2)。
減量の方法くわしい条件
機序とは別に注意する副作用
道すじ図にない副作用を、症状と気づき方を中心にまとめます。
消化性潰瘍 消化管潰瘍、消化管穿孔、消化管出血が重大な副作用に載り(プレドニン錠11.1.3)、胃痛、胸やけ、悪心・嘔吐、腹部膨満感も載っています(11.2)。ステロイドそのものが潰瘍を増やすかどうかは、以前の研究の結果が食い違う、と症例対照研究(Piper et al.)の論文は書いています。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との併用で危険が高まる、という研究があります。メドロール錠はNSAIDsとの併用で消化器系の副作用のおそれが高くなると書いています(10.2)。プレドニン錠の10.2には、この注意は書かれていません。消化性潰瘍の患者には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しません(9.1.1)。ステロイドと胃薬の併用が要るかどうかは、確認できた資料の範囲では結論が出ていません。研究の数字は、くわしい条件にあります。
精神症状 精神変調、うつ状態、痙攣が重大な副作用に載り(プレドニン錠11.1.5)、多幸症、不眠、易刺激性も載っています(11.2)。精神病の患者には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しません(9.1.1)。
高血圧・浮腫 3剤とも、その他の副作用に浮腫が載っています(11.2)。文献では、鉱質コルチコイド作用は、ヒドロコルチゾンを1としたとき、メチルプレドニゾロンやデキサメタゾンでほぼ0とされています(川合 2009)。利尿剤(カリウム保持性利尿剤を除く)との併用では低カリウム血症が出ることがあるので、用量に注意します(プレドニン錠10.2)。高血圧症の患者には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しません(9.1.1)。理由の書き方は薬ごとに違います(くわしい条件)。
満月様顔貌 3剤とも、満月様顔貌、野牛肩を載せています(11.2)。顔が丸くなる副作用です。開始時に、副作用として説明できます。
緑内障・白内障 連用により眼圧上昇、緑内障、後嚢白内障を来すことがあるので、定期的に検査をすることが望ましい、と添付文書は書いています(プレドニン錠8.3)。緑内障や後嚢白内障の患者には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しません(9.1.1)。後嚢白内障の症状は眼のかすみで、中心性漿液性網脈絡膜症では視力の低下や、ものがゆがんで見える症状が出ます(11.1.7)。
そのほか 重大な副作用には、膵炎、ミオパチー、血栓症、心筋梗塞・脳梗塞・動脈瘤、腱断裂、硬膜外脂肪腫も載っています(プレドニン錠11.1)。血栓症には、血液凝固促進作用との記載があります(9.1.1)。キノロン系抗菌剤との併用は、腱障害のリスクを増加させるとの報告があります(10.2)。
くわしい条件
消化性潰瘍の研究の数字
ステロイドまたはACTHを使った二重盲検試験93本の併合解析(Conn et al.)では、報告された消化性潰瘍は、プラセボ群0.3%、ステロイド群0.4%で、有意差はありませんでした。症例対照研究(Piper et al.)では、現在経口ステロイドを使っている人の潰瘍の推定相対危険度は、使っていない人に比べて2.0(1.3〜3.0)でした。NSAIDsを併用していない人では1.1(0.5〜2.1)、併用している人では4.4(2.0〜9.7)で、両方使っている人の危険は、どちらも使っていない人の15倍でした。二重盲検試験159本の併合解析(Narum et al.)では、消化管出血と穿孔のオッズ比が1.43(1.22〜1.66)で、有意差があったのは入院患者だけでした。外来の患者で出血または穿孔が起きたのは、8,651人中11人(0.13%)で、増加は有意ではありませんでした。7つの住民データベースの上部消化管出血114,835人の解析(患者自身を対照にした症例シリーズ、Masclee et al.)では、非選択的NSAIDsとステロイドの併用が、発生率比12.8と、組み合わせの中で最大でした。
プレドニン錠の10.2には、NSAIDsの併用による消化器系の副作用の注意は書かれていません。サリチル酸誘導体の項は、減量時のサリチル酸中毒の注意です。
各研究の限定
併合解析のうち1本は、ステロイドまたはACTHを、どの量でも、どの期間でも使った試験が対象で、アウトカムは報告された消化性潰瘍です。症例対照研究の対象は、胃・十二指腸潰瘍または原因不明の上部消化管出血で入院した人です。159本の解析は、内服のほか静注と筋注を含み、入院患者は重症度の代理指標とされています。
精神症状と高血圧の補足
二重盲検試験93本の併合解析では、精神病がプラセボ群よりステロイド群で多く報告されました(P<0.001)。1983年の症例報告と文献レビューでは、重い精神症状は約5%で、多くは治療の早い時期に出る、とされています。同じレビューは、女性、全身性エリテマトーデス、高用量のプレドニゾンが危険因子かもしれない、と書いています。
文献の表では、鉱質コルチコイド作用の強さは、ヒドロコルチゾンを1として、プレドニゾロンが0.8、メチルプレドニゾロンとデキサメタゾンがほぼ0です(川合 2009)。同じ論文は、メチルプレドニゾロンなどでもミネラルコルチコイド作用は依然として存在し、超大量投与ではナトリウム保持やカリウム排泄などの副作用が起こり得る、と書いています。
精神病の患者への注意の理由は、プレドニン錠が「大脳辺縁系の神経伝達物質に影響を与え」、デカドロン錠が「中枢神経系に影響し」、メドロール錠が「中枢神経刺激作用により」と書いています(9.1.1)。
高血圧症の患者への注意の理由は、プレドニン錠が「電解質代謝作用により」、デカドロン錠が「ナトリウム・水貯留作用等により」、メドロール錠が「ナトリウム貯留作用により」と書いています(9.1.1)。メドロール錠は、試験成績の項(18.3)では、ヒトの経口と副腎摘出ラット(皮下)でナトリウムの貯留作用を「貯留作用なし」としています。
眼と満月様顔貌の補足
緑内障の理由は、プレドニン錠が「眼圧の亢進により」、デカドロン錠が「眼圧が上昇し」、メドロール錠が「眼圧を上昇させ」です。後嚢白内障の患者も同じ条件で、デカドロン錠は「水晶体線維に影響し」、メドロール錠は「水晶体嚢の透過性を変化させ」と書いています。プレドニン錠は理由を書いていません(9.1.1)。満月様顔貌について、プレドニン錠は、脂肪肝の患者に「脂肪分解・再分布作用により」と書いています(9.1.6)が、これは脂肪肝の理由です。副腎不全を疑う手がかりとして、日本内分泌学会の指針は、ステロイドを長期に続けている患者は、外見にクッシング現象を示すことがある、と書いています。
同じ薬効群の薬は、どう違う?
プレドニゾロン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロンの添付文書で確認できた違いを並べます。重要な基本的注意(8.1)の冒頭は、3剤ともほぼ同じ文です。違いは、用量の幅、効能、禁忌、一部の書きぶりにあります。
| 薬 | 通常用量(成人) | 添付文書の違い |
|---|---|---|
| プレドニゾロン(プレドニン錠5mg) | 1日5〜60mgを1〜4回に分割(川崎病の急性期などは別の記載) | 減量の方法は、関連学会のガイドライン等を参考にするよう書く(7.1)。禁忌は、過敏症の既往と、デスモプレシン(男性の夜間頻尿)の投与中 |
| デキサメタゾン(デカドロン錠0.5mg・4mg) | 1日0.5〜8mgを1〜4回に分割(悪心・嘔吐、全身性ALアミロイドーシスは別の用法) | 悪心・嘔吐の効能がある。CYP3A4の誘導作用をもつ(10)。禁忌は、過敏症の既往と、デスモプレシン、リルピビリン含有製剤の使用中 |
| メチルプレドニゾロン(メドロール錠2mg・4mg) | 1日4〜48mgを1〜4回に分割 | 禁忌は、過敏症の既往、デスモプレシンの投与中、免疫抑制が生じる量の投与中の生ワクチンの接種。試験成績の項(18.3)に、ヒトの経口での効力比の表がある |
禁忌は、この3剤の添付文書に書かれているものを、上の表ですべて挙げています。
くわしい条件
力価の換算
確認した3剤の添付文書には、力価の換算表は載っていません。文献の対応量の表(大島 2011)では、プレドニゾロン5mgに相当する量は、メチルプレドニゾロン4mg、ヒドロコルチゾン20mg、デキサメタゾン0.75mgです。川合 2009の表は、ヒドロコルチゾンを1としたときの力価で、プレドニゾロン4、メチルプレドニゾロン5、デキサメタゾン25です。デキサメタゾンの対応量を0.5〜0.75mgとする文献もあります(山﨑 2020)。
メドロール錠の効力比の表
ヒトの経口では、血糖上昇作用と好酸球減少作用の効力比が、ヒドロコルチゾンを基準にすると5、プレドニゾロンを基準にすると5/4です。副腎抑制作用は、プレドニゾロンと同程度です(18.3)。
患者さんには、どう伝える?
たとえば、次のように伝えます。
- 「ステロイドは炎症を抑えますが、免疫も下がります。熱が出たときや、水ぼうそう、はしかの人と接したときは、すぐ連絡してください。」
- 「自分の判断で急にやめると、熱、頭痛、だるさなどが出ることがあります。やめるときは、医師の指示で少しずつ減らします。」
- 「飲み始めに、眠れない、気分が落ち着かないといった変化が出ることがあります。気になったら早めに教えてください。」
- 「眼がかすむときや、ものがゆがんで見えるときは、眼科を受診してください。」
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ご利用にあたって この記事は、薬剤師など医療従事者に向けて、添付文書や公開資料をもとに一般的な情報をまとめたものです。個々の患者さんへの投与や治療の判断は、最新の添付文書と、医師・薬剤師の判断に従ってください。内容の正確さには注意を払っていますが、正確性や最新性を保証するものではありません。この記事の情報を利用したことで生じたいかなる損害についても、当ブログは責任を負いかねます。
よくある質問
ステロイドを飲むと、胃潰瘍は増えますか?
研究ごとに、見ているものが違います(潰瘍、出血・穿孔、薬の併用)。ステロイドまたはACTHを使った二重盲検試験93本の解析(Conn et al.)では、報告された消化性潰瘍は、プラセボ群0.3%、ステロイド群0.4%で、有意差はありませんでした。症例対照研究(Piper et al.)では、現在経口ステロイドを使っている人の潰瘍の推定相対危険度は、使っていない人に比べて2.0(1.3〜3.0)で、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用していない人では1.1(0.5〜2.1)、併用している人では4.4(2.0〜9.7)でした。二重盲検試験159本の解析(Narum et al.)では、消化管出血と穿孔のオッズ比が1.43(1.22〜1.66)で、有意だったのは入院患者だけでした。この解析は内服のほか静注と筋注を含み、入院患者は重症度の目安とされています。外来の患者では、出血または穿孔が8,651人中11人(0.13%)で、増加は有意ではありませんでした。ステロイドと胃薬の併用が要るかどうかは、確認できた資料の範囲では結論が出ていません。
ステロイドを急にやめると、なぜいけないのですか?
日本内分泌学会の指針は、生理的な量を超えるグルココルチコイドを長期間投与すると、体の中の視床下部-下垂体-副腎系が抑えられ、急に中止したり急に減量したりすると、副腎クリーゼが起こることがある、と書いています。プレドニン錠の添付文書は、連用後に急に中止すると、ときに発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋肉痛、関節痛、ショック等の離脱症状があらわれることがあるので、徐々に減量するなど慎重に行う、と書いています(8.1.4)。離脱症状があらわれたら、直ちに再投与または増量します。
デキサメタゾンやメチルプレドニゾロンなら、むくみにくいですか?
文献では、鉱質コルチコイド作用の強さは、ヒドロコルチゾンを1として、プレドニゾロンが0.8、メチルプレドニゾロンとデキサメタゾンがほぼ0とされています(川合 2009)。同じ論文は、メチルプレドニゾロンなどでもミネラルコルチコイド作用は依然として存在し、超大量投与ではナトリウム保持やカリウム排泄などの副作用が起こり得る、と書いています。デカドロン錠の添付文書は、ナトリウム・水貯留作用等により高血圧症が増悪するおそれがある、と書いています(9.1.1)。プレドニン錠、デカドロン錠、メドロール錠の3剤とも、その他の副作用に浮腫が載っています(11.2)。
薬の使い分けをPDFにまとめています。気になる方は薬の使い分けPDFもどうぞ。
出典・更新日
更新日:2026年10月2日。
- プレドニン錠5mg 添付文書(2026年3月改訂、第6版)。KEGG MEDICUS japic_code=00010794:2.、7.1、8.1〜8.3、9.1、9.8、10.2、11.1、11.2、18.1、18.2
- デカドロン錠0.5mg・4mg 添付文書(2026年4月改訂、第5版)。KEGG MEDICUS japic_code=00062800:2.、6.、8.2、9.1、10、11.2
- メドロール錠2mg・4mg 添付文書(2026年3月改訂、第5版)。KEGG MEDICUS japic_code=00053639:2.、6.、9.1、10.2、11.1、11.2、18.1、18.3
- プレドニゾロン錠1mg・5mg(旭化成) 医薬品インタビューフォーム(2026年4月改訂、第22版)。JAPIC IF00007052:Ⅵ.2.(1)
- 日本骨代謝学会. ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン: 2014年改訂版(和文概略版)。Suzuki Y et al. J Bone Miner Metab. 2014;32:337-350(doi:10.1007/s00774-014-0586-6)
- Tanaka Y et al. J Bone Miner Metab. 2024;42:143-154(The 2023 Guidelines for the management and treatment of glucocorticoid-induced osteoporosis。英語版)
- Yanase T et al. Endocr J. 2016;63:765-784(日本内分泌学会. 副腎クリーゼを含む副腎皮質機能低下症の診断と治療に関する指針)
- Burt MG et al. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96:1789-1796
- Suh S et al. Endocrinol Metab. 2017;32:180-189
- Joint British Diabetes Societies for Inpatient Care. Management of Hyperglycaemia and Steroid (Glucocorticoid) Therapy. 2023年1月改訂
- 日本糖尿病学会. 糖尿病診療ガイドライン2024(Q5-1)
- 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 高血糖(令和5年12月改定)
- Stuck AE et al. Rev Infect Dis. 1989;11:954-963
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