分光分析法の光源とガスクロマトグラフィーの検出器を理屈で覚える
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。国試の物理では「この測定法の光源は?」「このガスクロマトグラフィーの検出器は何に反応する?」がくり返し出ます。語呂は使わず、なぜその光源・検出器なのかの理屈で整理しました。解いて確かめたいときは必須問題を毎日18問解ける国試クイズを、物理・化学・生物の勉強全体は物化生の対策記事を使ってください。
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光源は? 光源は、何を測るかの原理から絞れます。紫外は重水素放電管、可視はタングステンランプ、蛍光はキセノンランプなど、ラマンはレーザーです。
旋光度とICPは? 旋光度はナトリウムD線、ICP発光分光分析法はアルゴンプラズマです。この2つは日本薬局方の記載として覚えます。
検出器は? ガスクロマトグラフィーの検出器は、何に反応するかで対象が決まります。FIDはC-H結合をもつ有機化合物、ECDはハロゲンです。
光源は、何を測るかで決まる
光源も検出器も、暗記の前に「①何を測るか(光を吸収する・出す・散らす) ②それにはどんな光が要るか」と考えると、候補が絞れます。
たとえば紫外可視吸光度測定法は、波長を少しずつ変えて吸収を測るので、広い範囲で連続して光る光源が要ります。原子吸光光度法は、原子が吸収する波長がとても狭いので、その元素に合わせた光源が要ります。旋光度とICP発光分光分析法の光源は、日本薬局方の記載として覚えます。
分光分析法の光源は何?
日本薬局方の一般試験法に載っている測定法の光源です。条番号がついた内容は日本薬局方の記載で、ついていない内容は一般的な機器の構成です。
| 測定法(日本薬局方の条) | 測るもの | 光源 |
|---|---|---|
| 紫外可視吸光度測定法(2.24) | 波長200〜800 nmの光の吸収 | 紫外部は重水素放電管(重水素ランプ)、可視部はタングステンランプが一般的 |
| 蛍光光度法(2.22) | 励起光を当てたときに出る蛍光の強度 | キセノンランプ、レーザーなど(日本薬局方の記載) |
| 原子吸光光度法(2.23) | 基底状態の原子が吸収する特有の波長の光 | 中空陰極ランプ、放電ランプ |
| 赤外吸収スペクトル測定法(2.25) | 赤外線の吸収(波数4000〜400 cm-1で測定) | 一般には、熱して赤外線を出す光源 |
| ラマンスペクトル測定法(2.26) | 照射光とは波長が違う、非常に弱い散乱光 | 単色光を安定に放射できるレーザー(He-Neレーザーなど) |
| 誘導結合プラズマ発光分光分析法(2.63) | 励起された原子が出す発光線の波長と強度 | アルゴンプラズマ(励起源) |
| 旋光度測定法(2.49) | 偏光面が回転する角度 | ナトリウムランプのナトリウムD線(水銀ランプの輝線も使える) |
検出器や使うセルは、末尾の「くわしい条件」にまとめました。
なぜその光源になる?
- 紫外可視:波長を走査するので、連続して光る光源が要ります。可視部はタングステンランプ(白熱電球と同じ仕組み)、紫外部は重水素放電管です。ガラスは紫外線を吸収するので、紫外部の測定には石英製のセルを使います。
- 蛍光:励起光を安定に放射できる、キセノンランプやレーザーなどを使います。蛍光強度は濃度、温度、pH、溶媒などの影響を受けやすいので、比較する標準の溶液を用意します。
- 原子吸光:原子が吸収する波長はとても狭いので、同じ元素の原子が出す光をぶつけるのがいちばん効率よく吸収されます。そのため中空陰極ランプは、測る元素ごとに専用のものを用意します。
- 赤外とラマン:どちらも分子の振動を見ますが、見ている性質が違います。赤外線を吸収するのは、振動で双極子モーメントが変わるとき、ラマン散乱が観測されるのは、化学結合の振動で分極率が変わるときです。
- 旋光度:旋光度は波長によって変わるので、単色光で測ります。日本薬局方は、通例、ナトリウムD線を使うと定めています。重水素放電管は、紫外部の吸光度測定で使う光源です。
ガスクロマトグラフィーの検出器は何を検出する?
ガスクロマトグラフィーは、気体(キャリヤーガス)を移動相にして成分を分ける方法です。分けた成分を見つける装置が検出器で、成分が起こす現象のうち何を信号にするかで種類が分かれます。名前と現象をセットで覚えると、対象は自然に決まります。
| 検出器(略称) | 主な検出対象 | 理屈 |
|---|---|---|
| 熱伝導度検出器(TCD) | 有機化合物も無機化合物も、ほとんどの物質(水や永久気体も含む) | 熱の伝わりやすさはどんな物質にもあるので、対象を選びません。感度は高くありません |
| 水素炎イオン化検出器(FID) | C-H結合をもつ有機化合物(炭化水素など) | 炎の中でC-H結合の炭素がイオンになるためです。水や二酸化炭素のようにC-H結合をもたない物質には応答しません |
| 電子捕獲検出器(ECD) | ハロゲンを含む化合物(有機塩素化合物など)、ニトロ基をもつ化合物など | 電子を取り込みやすい物質ほど、電流を大きく減らします |
| 炎光光度検出器(FPD) | 硫黄化合物、リン化合物 | 炎の中で特有の発光をする元素を、光として検出します |
| アルカリ熱イオン化検出器(FTD、NPDともいう) | 窒素化合物、リン化合物 | 窒素(N)とリン(P)を選んで検出します。NPDはその頭文字です |
| 質量分析計(MS) | 気化できてイオン化できる化合物 | 質量電荷比(m/z)で分けて検出するので、何の物質か、分子量や構造の情報も得られます |
日本薬局方の2.02は検出器の名前だけを挙げているので、この表の「理屈」は一般的な原理の説明です。
水や二酸化炭素のように、FIDで検出できない物質は、TCDで検出します。
過去問では、どう問われる?
厚生労働省が公開している第105〜111回の問題から、光源や検出器が問われたものを並べました。
| 回・問 | 問われたこと | 答え |
|---|---|---|
| 第105回 問93 | 蛍光光度法の光源 | キセノンランプ |
| 第106回 問94 | 測定波長254 nm(紫外部)の検出の光源 | 重水素放電管(タングステンランプは可視部の光源なので誤り) |
| 第107回 問203 | 旋光度の光源 | ナトリウムD線(重水素放電管は誤り) |
| 第108回 問97 | 可視吸光光度計(測定波長570 nm)の光源 | タングステンランプ |
| 第109回 問100 | 電子捕獲検出器の対象 | ハロゲンを含む化合物(C-H結合の有機化合物はFIDの対象) |
| 第111回 問95 | 赤外吸収スペクトル | 双極子モーメントの変化で観測される(分極率の変化で観測されるのはラマン散乱) |
問題と正答は、厚生労働省のページで公開されています。第111回薬剤師国家試験問題及び解答から、各回のページに移れます。
くわしい条件
各測定法の検出器・セル・そのほか
- 紫外可視(2.24):分光光度計または光電光度計を使います。紫外部の測定には石英製、可視部にはガラス製または石英製のセルを使います。日本薬局方の2.24で重水素放電管が出てくるのは、波長の校正に輝線(486.00 nmと656.10 nm)を使う場面です。吸光度Aは、溶液の濃度cと層長lに比例します(A=kcl)。
- 蛍光(2.22):蛍光分光光度計を使います。励起光とは別の方向から蛍光を観察するため、四面が透明で無蛍光の石英セルを使います。蛍光強度Fは、励起光の強さI0に比例します(F=kI0φεcl)。
- 原子吸光(2.23):試料原子化部(フレーム・電気加熱・冷蒸気)、分光部(回折格子または干渉フィルター)、測光部の検出器で構成されます。水銀は常温でも蒸気になるので、冷蒸気方式で低圧水銀ランプを使います。
- 赤外(2.25):分散型またはフーリエ変換赤外分光光度計を使い、臭化カリウム錠剤法などで試料を調製します。スペクトルは、横軸に波数、縦軸に透過率または吸光度をとったグラフで表します。波数4000 cm-1は、波長に直すと2.5 μmです。
- ラマン(2.26):分散型ではCCD検出器などの多素子検出器を使います。
- ICP(2.63):分光部と、光電子増倍管または半導体検出器を使います。質量分析計を検出器にすると、ICP質量分析法です。
- 旋光度(2.49):旋光計は、光源・偏光子・測定管・検光子で構成されます。
ガスクロマトグラフィーの検出器が信号にする現象
- TCD:キャリヤーガスと試料成分の熱伝導率の差で、加熱した金属線(フィラメント)の温度が変わります。キャリヤーガスには、熱伝導率が大きい水素やヘリウムを使います。
- FID:水素炎の中で、C-H結合をもつ有機化合物の炭素がイオンになり、そのイオンの電流を測ります。
- ECD:放射線源から出る電子による定常電流が、電子を取り込む物質で減ります。電子を取り込みやすい(電子親和力が大きい)物質ほど、電流を大きく減らします。ハロゲンは電子を引き込む性質が強い元素です。
- FPD:水素炎の中で、硫黄やリンの化合物が出す光を測ります。
- FTD(NPD):加熱したアルカリ金属塩の部分(ビーズ)で、窒素やリンの化合物が出す信号が大きくなります。
- MS:イオン化した成分を質量電荷比(m/z)で分けて検出します。イオン化には、電子イオン化(EI)や化学イオン化(CI)を使います。
ガスクロマトグラフィーのそのほかの事項
- 日本薬局方(2.02)が挙げる検出器は、アルカリ熱イオン化検出器、炎光光度検出器、質量分析計、水素炎イオン化検出器、電子捕獲検出器、熱伝導度検出器です。
- 検出したい物質から選ぶと、有機塩素系の農薬などハロゲンを含む化合物はECD、リンはFPDのほかFTD(NPD)でも検出できます。何の物質かを確かめたい、構造を知りたいときは質量分析計(GC/MS)です。
- 確認試験では、試料の成分と標準品の成分で、保持時間が一致することを確かめます。定量は、通例、内標準法を使います。適当な内標準物質がない場合は、絶対検量線法を使います(2.02)。
- 液体クロマトグラフィーの検出器として日本薬局方(2.01)が挙げているのは、紫外又は可視吸光光度計、蛍光光度計、示差屈折計、電気化学検出器、化学発光検出器、電気伝導度検出器、質量分析計です。紫外可視吸光光度計と蛍光光度計は、分光分析法の装置を検出器にしたものなので、光源の知識は液体クロマトグラフィーの問題でも使えます。
過去問の解説
- 第105回 問93:フルオレセインナトリウムの励起スペクトルと蛍光スペクトルを示して、蛍光光度法に関する正しい記述を2つ選ぶ問題です。正答は3と4です。肢3の「蛍光強度は、希薄溶液であれば濃度に比例する」と、肢4の「一般に光源として、キセノンランプを用いる」が正しい記述でした。肢5の「温度が変化しても蛍光強度には変化がない」は誤りで、蛍光強度は温度などの条件で変わるので、標準の溶液を使って比較します(2.22)。
- 第106回 問94:ヒドロコルチゾンコハク酸エステルの定量法(紫外吸光光度計、測定波長254 nm)から、正しい記述を2つ選ぶ問題です。正答は2と4です。肢3の「検出に用いる光源は、タングステンランプである」は誤りです。波長254 nmは紫外部で、タングステンランプは可視部の光源だからです。
- 第107回 問203:セフジニルの旋光度の項を示して、正しい記述を2つ選ぶ問題です。正答は3と4です。肢1の「旋光度の測定には、通例、光源として重水素放電管が用いられる」は誤りで、光源はナトリウムD線です(2.49)。
- 第108回 問97:L-アラニンの純度試験に使う液体クロマトグラフィー(検出器は可視吸光光度計、測定波長570 nm)から、正しい記述を2つ選ぶ問題です。正答は1と3です。570 nmは可視部なので、可視部の光源のタングステンランプを使います。
- 第109回 問100:ガスクロマトグラフィーに関する正しい記述を2つ選ぶ問題です。正答は3と5です。肢1の「電子捕獲検出器は、主にC-H結合を有する有機化合物の検出に用いられる」は誤りで、C-H結合の有機化合物はFIDの対象、ECDの対象はハロゲンを含む化合物です。肢2の「定量には内標準法が用いられるが、絶対検量線法は用いられない」も誤りで、適当な内標準物質がない場合は絶対検量線法を使います(2.02)。肢5は、電子イオン化と化学イオン化がガスクロマトグラフィー/質量分析法のイオン化法という記述で、正しい記述でした。
- 第111回 問95:日本薬局方の赤外吸収スペクトル測定法に関する正しい記述を2つ選ぶ問題です。正答は2と5です。肢2は、波数4000 cm-1の波長が2.5 μmという記述、肢5は、固体だけでなく液体や気体の試料でも測定できるという記述で、どちらも正しい記述です(2.25に、液体用の溶液法や液膜法、気体試料測定法があります)。肢3の「赤外吸収は、振動によって分子の分極率が変化するときに観測される」は誤りで、分極率の変化で観測されるのはラマン散乱です(2.26)。
よくある質問
紫外可視吸光度測定法の光源は何ですか?
一般には、紫外部は重水素放電管(重水素ランプ)、可視部はタングステンランプを使います。紫外部の測定には、石英製のセルを使います(日本薬局方2.24)。
水素炎イオン化検出器で検出できない物質は何ですか?
水素炎イオン化検出器は、C-H結合をもつ有機化合物(炭化水素など)を検出します。炎の中でC-H結合の炭素がイオンになるためです。水や二酸化炭素のように、C-H結合をもたない物質には応答しません。こうした物質は、熱伝導度検出器で検出します。
赤外吸収スペクトルとラマンスペクトルの違いは何ですか?
赤外吸収は、分子の振動で双極子モーメントが変わるときに観測されます。ラマン散乱は、化学結合の振動で分極率が変わるときに観測されます(日本薬局方2.26)。光源も違い、ラマンでは単色光のレーザーを使います。
出典
- 日本薬局方 第十八改正の一般試験法(2.01、2.02、2.22〜2.26、2.49、2.63)。厚生労働省「第十八改正日本薬局方」のページのPDFで確認できます。
- 厚生労働省 第111回薬剤師国家試験問題及び解答(第105〜111回の問題と正答)

