蓄積率・累積係数の計算|定常状態に届く回数(計算ツールつき)
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。薬を同じ間隔で飲み続けると、血中濃度は1回目より高いところまで上がり、やがて一定の幅で上下するようになります。この記事では、その上がり幅(蓄積率)を、半減期と投与間隔から計算する方法をまとめました。半減期と投与間隔を入れると答えが出る計算ツールもあります。
蓄積率は? R = 1 / (1 − e−kτ)。kは0.693 ÷ 半減期、τは投与間隔です。
定常状態には、いつ届く? 半減期の4倍の時間で93.75%、5倍で96.9%に届きます。
投与間隔を長くすると? 蓄積率は1に近づきます。半減期の4倍の間隔なら約1.07です。
蓄積率を計算するには?
半減期、投与間隔、投与回数を入れると、蓄積率と、n回目の投与直後のピーク濃度が定常状態のピーク濃度のどこまで届いているかが出ます。単位は、半減期と投与間隔で同じものをそろえてください(時間でも日でも構いません)。
蓄積率の計算
静脈内に1回で投与し、体を1つの容器とみなして、消失が一次速度式に従う場合の式で計算しています。用量は毎回同じ、投与間隔は一定です。
この計算は、学習用に単純化したモデルです。実際の患者さんの投与設計は、添付文書と各施設の手順、医師の指示に従ってください。
蓄積率とは?
投与間隔に比べて半減期が長い薬を繰り返し投与すると、前の投与の薬が体に残っているうちに次を投与することになり、体内の薬物が累積します。血中濃度は単回投与のときより上がり、やがて同じ推移を繰り返すようになります。この状態を、定常状態に達したといいます。定常状態のピーク濃度が、1回目のピーク濃度の何倍かを表すのが蓄積率Rです(累積係数ともいいます)。
蓄積率は、どう計算する?
式は R = 1 / (1 − e−kτ) です。e−kτ は (1/2)τ/半減期 と書き換えられるので、投与間隔τが半減期の何倍かが分かれば暗算できます。
たとえば、半減期12時間の薬を12時間ごとに投与すると、τは半減期の1倍です。e−kτ = (1/2)の1乗 = 0.5なので、R = 1 ÷ (1 − 0.5) = 2です。定常状態のピーク濃度は、1回目の2倍になります。
半減期24時間の薬を12時間ごとに投与するなら、τは半減期の0.5倍です。e−kτ = (1/2)0.5 = 0.7071で、R = 1 ÷ (1 − 0.7071) = 3.41になります。投与間隔が短いほど、よく蓄積します。
| τ ÷ 半減期 | e−kτ | 蓄積率 R |
|---|---|---|
| 0.5 | 0.7071 | 3.41 |
| 1(半減期ごと) | 0.5 | 2.00 |
| 2 | 0.25 | 1.33 |
| 4 | 0.0625 | 1.07 |
定常状態には、いつ届く?
半減期の4倍の時間で、定常状態のピーク濃度の93.75%に届きます。この割合は、投与間隔の長さに関係なく、初回投与からの時間tが半減期の何倍かだけで決まり、1 − (1/2)t/半減期 で求められます。
たとえば、半減期24時間の薬を12時間ごとに投与したときを考えます。90%に届く時間は半減期の3.32倍で、3.32 × 24 = 79.7時間です。79.7 ÷ 12 = 6.6なので、7回目の投与直後のピーク濃度で、定常状態の91.2%(90%以上)に届きます。95%以上に届くのは、半減期の4.32倍の時間が必要なので、9回目の投与直後のピーク濃度(95.6%)です。
この式は、どんな薬に使える?
この記事の式は、次の条件を置いて導きました。
- 静脈内に1回で投与し、体を1つの容器とみなす1-コンパートメントモデルです。
- 消失は一次速度式に従います。用量に比例しない動態の薬には使えません。
- 毎回同じ量を、同じ間隔で投与します。
条件から外れる薬では、実際の値が式から外れます。
国試では、どう解く?
半減期と投与間隔が分かれば、次の順で解けます。
- 投与間隔τが、半減期の何倍かを出します。
- e−kτ = (1/2)τ/半減期 を出します。τが半減期と同じなら0.5、半減期の2倍なら0.25です。
- R = 1 ÷ (1 − e−kτ) を計算します。
- 濃度を聞かれたら、1回目の濃度にRをかけます。到達率を聞かれたら、1 − (1/2)経過時間÷半減期 を計算します。初回投与から、n回目の投与間隔の終わりまでの経過時間は、nτです。
薬物速度論の全体の学び方や、過去問の解き方は、薬学生のページにまとめた記事から探せます。参考書で式を体系的に確認したいときは、国試のおすすめ参考書・問題集が選ぶ手がかりになります。模試の得点を比べたいときは、薬ゼミ模試の平均点一覧が使えます。
くわしい条件
式の導き方(重ね合わせ)
静脈内に1回で投与し、1-コンパートメントモデルで、消失が一次速度式に従う薬を考えます。1回の投与で、投与直後の血中濃度がC0になるとします。この濃度は、時間tが経つと C0e−kt に減ります。
投与間隔τで同じ量を繰り返すと、n回目の投与直後の濃度は、それまでの各回の投与が残っている分の合計です。1回目の分は τ ごとに e−kτ 倍になるので、次のとおりです。
Cn = C0 × (1 + e−kτ + e−2kτ + … + e−(n−1)kτ)
かっこの中は、初項1、公比e−kτの等比数列の和なので、Cn = C0 × (1 − e−nkτ) / (1 − e−kτ) になります。nを大きくすると、e−nkτは0に近づきます。定常状態でのピーク濃度Cssは C0 / (1 − e−kτ) です。1回目のピーク濃度C0との比が、蓄積率Rです。
R = Css / C0 = 1 / (1 − e−kτ)
n回目のピーク濃度と定常状態のピーク濃度の比は、Cn / Css = 1 − e−nkτ です。谷の濃度(次の投与の直前)は、ピーク濃度に e−kτ をかけた値なので、谷でも同じ比になります。
計算手順と数値例
計算は4つの手順です。(1)半減期から k = 0.693 ÷ 半減期を出す。(2)kτを出す。(3)e−kτを出す。(4)1/(1−e−kτ)を出す。kτ = 0.693 × τ / 半減期なので、τ/半減期が分かれば k を別に出す必要はありません。
半減期12時間の薬を12時間ごとに投与する場合は、k = 0.693 ÷ 12 = 0.0578(1/時間)、kτ = 0.0578 × 12 = 0.693、e−0.693 = 0.5、R = 1 ÷ (1 − 0.5) = 2です。
半減期6時間の薬を24時間ごとに投与する場合は、τ/半減期 = 24 ÷ 6 = 4、e−kτ = (1/2)4 = 0.0625、R = 1 ÷ (1 − 0.0625) = 1.067です。蓄積率は約1.07で、1回目より約7%高いだけです。
蓄積率の早見表(全体)
| τ ÷ 半減期 | e−kτ | 蓄積率 R |
|---|---|---|
| 0.25(半減期の4分の1ごと) | 0.8409 | 6.29 |
| 0.5 | 0.7071 | 3.41 |
| 1(半減期ごと) | 0.5 | 2.00 |
| 2 | 0.25 | 1.33 |
| 4 | 0.0625 | 1.07 |
定常状態への到達率の表
n回目の投与直後のピーク濃度が定常状態のピーク濃度の何割かは、1 − e−nkτ です。nτは、初回投与から、n回目の投与間隔の終わり(n+1回目の投与の直前)までの時間です。この時間をtと書くと、1 − e−kt = 1 − (1/2)t/半減期 になります。n回目の投与直後のピーク濃度と、n回目の投与間隔の終わりの谷濃度は、どちらも定常状態の同じ割合です。
| t = nτ(半減期の何倍) | (1/2)の何乗 | 到達率 1 − (1/2)の何乗 |
|---|---|---|
| 1 | 0.5 | 50% |
| 2 | 0.25 | 75% |
| 3 | 0.125 | 87.5% |
| 3.32 | 0.1 | 90% |
| 4 | 0.0625 | 93.75% |
| 5 | 0.03125 | 96.9% |
半減期の4倍では 1 − 0.0625 = 0.9375(93.75%)、5倍では 1 − 0.03125 = 0.96875(96.9%)です。90%に届く倍率は、(1/2)x = 0.1 を解いて、x = log 10 ÷ log 2 = 3.32です。半減期の4~5倍で約94~97%に届く、というのはこの計算の結果です。
到達率の数値例(半減期24時間、12時間ごと)
90%に届く時間は半減期の3.32倍で、3.32 × 24 = 79.7時間です。nτがこの時間以上になる最小のnを探します。79.7 ÷ 12 = 6.6なので、整数に切り上げて7です。確かめると、n = 7のとき、t = 7 × 12 = 84時間(半減期の3.5倍)で、1 − (1/2)3.5 = 91.2%です。95%に届く時間は半減期の4.32倍です。4.32 × 24 ÷ 12 = 8.6なので、n = 9です。n = 9のとき、t = 108時間(半減期の4.5倍)で、1 − (1/2)4.5 = 95.6%です。
この例で蓄積率Rは3.41でした。n回目のピーク濃度が1回目の何倍かは、R × 到達率で出ます。4回目は3.414 × 0.75 = 2.56倍、8回目は3.414 × 0.9375 = 3.20倍です。蓄積率の3.41倍に向かって、少しずつ近づいていきます。
厚生労働省の通知にある累積係数
厚生労働省の通知「医薬品の臨床薬物動態試験について」(平成13年6月1日 医薬審発第796号)の註2では、定常状態と単回投与時のAUC、Cmax、Cmin、Cavのそれぞれについて比を求め、その比を累積係数と呼ぶとされています。単回投与時の薬物動態パラメータから計算した累積係数をR、実際に反復投与して得た累積係数をRobsと表します。この記事では、Rを蓄積率(累積係数)と呼びます。
同じ通知には、RobsがRより大きいときは、定常状態付近での薬物動態の非線形性、被験薬もしくはその代謝物による酵素やトランスポーターの阻害やダウンレギュレーション、被験薬による肝、腎などへの障害などが考えられ、このような場合、蓄積性があると言うと書かれています。RobsがRより小さいときは、定常状態付近での薬物動態の非線形性、被験薬もしくはその代謝物による酵素やトランスポーターの誘導、被験薬の投与部位での溶解性の不足などが考えられるとされています。予測値Rは、コンパートメントモデルに基づく数式か、重ね合わせ法で求められます。
式が成り立つ条件の補足
この式は、静脈内に投与する場合を前提にしています。半減期が延びると、定常状態に届くまでの時間も同じ倍率で延びます。到達率が半減期の数で決まるためです。
よくある質問
蓄積率の式 R = 1/(1−e^(−kτ)) は、何を表していますか?
同じ量を同じ間隔τで繰り返し投与して、定常状態になったときの血中濃度が、1回目の何倍になるかを表します。kは消失速度定数で、半減期から k = 0.693 ÷ 半減期で求めます。静脈内に1回で投与し、体を1つの容器とみなす1-コンパートメントモデルで、消失が一次速度式に従う場合の式です。
定常状態には、半減期の何倍の時間で届きますか?
計算では、半減期の4倍の時間で93.75%、5倍で96.9%に届きます。半減期1回分で50%、2回分で75%、3回分で87.5%です。90%に届くのは、半減期の約3.3倍です。この割合は、投与間隔の長さに関係なく、時間が半減期の何倍かだけで決まります。
投与間隔を半減期より長くすると、蓄積しませんか?
投与間隔が半減期の何倍でも、式の分母1−e^(−kτ)は1より小さいので、計算上の蓄積率Rは必ず1より大きくなります。ただし、投与間隔が長いほど蓄積率は1に近づきます。投与間隔が半減期の2倍なら約1.33、4倍なら約1.07です。通知で蓄積性があると言うのは、実測の累積係数Robsが、この式で予測したRより大きい場合です。蓄積率Rが1より大きいことそのものとは、別の意味です。
出典
- 厚生労働省 医薬品の臨床薬物動態試験について(平成13年6月1日 医薬審発第796号) 註2(累積係数、R、Robs)。2026年10月2日に本文を確認。
- 蓄積率 R = 1/(1−e−kτ) と到達率 1−e−nkτ は、くわしい条件の「式の導き方」で、一次消失の重ね合わせから導いた式です。

