疑義照会の書き方は事実・根拠・依頼の型で(ヒヤリ・ハット年報つき)
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。疑義照会は、処方箋の疑わしい点を処方医に確かめる業務です。この記事では、根拠になる条文と、「事実・根拠・依頼」の3項目で組み立てる伝え方の型を、薬局ヒヤリ・ハット事例の年報に載っている事例で整理しました。
法律で決まっている? 薬剤師法第24条は、処方箋中に疑わしい点があるとき、処方医に問い合わせて確かめた後でなければ調剤してはならないと定めています。回答の内容は処方箋に記入します。
どう伝える? 事実・根拠・依頼の3項目で伝えます。依頼は、削除・変更・確認のどれを求めるのかを1つに絞ります。
何が多い? 疑義照会や処方医への情報提供に関する報告は、2025年年報で94,872件、報告全体の82.6%です。照会内容は投与量が25.0%で最も多くなっています。
疑義照会は、法律で決まっている?
決まっています。薬剤師法第24条は、次のように定めています。
「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない。」
疑わしい点があるのに問い合わせないまま調剤することが、条文で禁じられています。問い合わせた後も、確かめ終わるまでは調剤できません。
疑義照会は、何をどの順で伝える?
「事実・根拠・依頼」は、この記事の筆者が整理した型です。疑義照会の組み立ての一案として、事実、根拠、依頼の3項目を順に並べる形を示します。電話でもFAXでも、中身は同じ3項目です。
| 項目 | 書くこと |
|---|---|
| 事実 | 処方箋と患者情報に、何がどう書かれているか |
| 根拠 | 疑わしいと考える理由と、その出どころ |
| 依頼 | 処方医に何をしてほしいか |
処方医が、どの患者のどの処方の話か分かるように、患者の識別(氏名・年齢)と、問題にしている薬剤名を最初に伝えます。事実の欄には「処方箋にこう書かれている」「薬歴にこう記録されている」のように、書かれている内容を主語にして並べます。
根拠の欄には、添付文書の項番や記載をそのまま引きます。依頼の欄は、削除なのか変更なのか確認なのかを1つに絞り、変更を求めるときは具体的な変更案(薬剤名・規格・用量)を添えます。
電話やFAXの前に、3項目を箇条書きでメモしておくと、伝え漏れを減らせます(筆者の提案です)。各項目に入れる情報の例は、「くわしい条件」に入れました。
年報の事例は、型に当てはめるとどうなる?
2025年年報には、第33回報告書の分析テーマ「リフィル処方箋に関する事例」について、「事例から学ぶ」(図表Ⅰ-4)が掲載されています。そのなかの疑義照会や処方医への情報提供に関する事例4件のうち、2件をここに載せます。残り2件は「くわしい条件」に入れました。
10歳代の小児にモンテルカスト錠10mg
年報の記述 10歳代の小児患者にモンテルカスト錠10mgがリフィル可で処方された。通常、6歳以上の小児に気管支喘息でモンテルカストを使用する場合は5mgを1日1回服用するため、1回目の調剤時に疑義照会を行った。その結果、モンテルカストチュアブル錠5mg「日医工」に変更になった。
型に当てはめるなら 事実は「10歳代の小児にモンテルカスト錠10mgの処方」、根拠は「6歳以上の小児で気管支喘息に使う場合の通常用量は5mg1日1回」、依頼は用量(規格)の確認と変更です。
向精神薬3剤がリフィル処方箋で処方された
年報の記述 50歳代の患者に初めてリフィル処方箋が発行され、処方された薬剤は向精神薬の3剤だった。投与日数制限が設けられている薬剤はリフィル対象外であるため、薬剤師が処方医に疑義照会を行った結果、リフィル指示は取り消しになった。
型に当てはめるなら 事実は「向精神薬3剤がリフィル可で処方された」、根拠は「投与日数制限のある薬剤はリフィル対象外」、依頼はリフィル指示の確認です。
回答は、どこに記録する?
処方箋に記入します。施行規則第15条第三号により、疑義照会の回答の内容は処方箋に記入する事項です。リフィル以外の処方箋でも、回答の内容を記入する義務は条文に定められています。
年報には、この記入が漏れた事例も載っています。10歳代の小児にモンテルカスト錠10mgがリフィル可で処方され、1回目の調剤時の疑義照会でモンテルカストチュアブル錠5mg「日医工」に変更になりましたが、その旨を備考欄に記載せずに処方箋を患者に返却しました。2回目の調剤を担当した薬局が、1回目に交付した薬剤を確認するために連絡してきたことで、記載漏れが分かっています。
リフィル処方箋は複数回の調剤に使われるため、変更の内容を処方箋に書いておくことが、次の調剤を担当する薬局への情報になります。薬剤師法第26条や調剤録の扱いは、「くわしい条件」に入れました。
どんな照会が多い?
日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の2025年年報では、疑義照会や処方医への情報提供に関する事例が94,872件で、報告全体114,904件の82.6%を占めています。何について照会したかは、行った事例と誤りがあった事例を合わせた94,473件のうち、投与量が23,601件(25.0%)で最も多くなっています。
これらの数字は薬局から報告された事例の集計で、全国で行われた疑義照会の件数そのものではありません。そのほかの数字は、「くわしい条件」に入れました。
疑義照会を行わなかった事例は?
年報の図表Ⅱ-3-21では、疑義照会や処方医への情報提供を「行うべきところ行わなかった」事例が399件(0.4%)報告されています。図表Ⅱ-3-28の「すべきであった内容」は、投与量75件が最も多くなっています。内訳と発生要因は、「くわしい条件」に入れました。
事例は、どこで探す?
事業のサイト(薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業)には、年報、報告書、「共有すべき事例」、「事例から学ぶ」のページがあります。「共有すべき事例」は、報告された事例のなかから、特に広く医療安全対策に有用な情報として共有することが必要と思われる事例を選定し、事例のポイントを付けて掲載したもので、キーワードで検索できます。
薬局での勉強会や新人の教育には、年報の図表Ⅱ-3-23(事例の内容)と、共有すべき事例を組み合わせると、どの項目の照会が多いかを件数で、実際の事例を共有すべき事例で確認できます。
薬の勉強や、現場で迷ったことの相談をしたい人向けに、オンラインコミュニティ「ひゃくさんとまなぶ薬のこと」を開いています。
くわしい条件
回答の記録に関する条文と通知
薬剤師法第26条は、調剤したとき処方箋に、調剤済みの旨又は調剤量、調剤年月日その他厚生労働省令で定める事項を記入し、記名押印又は署名することを定めています。その省令が施行規則第15条で、次の事項が挙げられています。「三 法第二十四条の規定により医師、歯科医師又は獣医師に疑わしい点を確かめた場合には、その回答の内容」
疑義照会の回答の内容は、処方箋に記入する事項です。調剤録の記入事項(施行規則第16条)にも、同じ内容が第十号として挙がっています。ただし、その調剤で処方箋が調剤済みになった場合は、第一号、第三号、第五号及び第六号の事項だけを記入すれば足りるとされています。調剤録については、調剤済みの処方箋や薬剤服用歴等に必要事項が記載されていれば規定を満たすとする通知があります(薬生総発0831第6号、令和2年8月31日、記の2の(1))。
事実・根拠・依頼に入れる情報の例
- 事実 患者の年齢、処方された薬剤名・規格・用法・用量・日数、病名、腎機能などの検査値、併用薬、薬歴で確認した事項
- 根拠 添付文書の該当項目(用法及び用量、禁忌、併用禁忌など)、ガイドライン、同じ薬効の薬がすでに処方されている事実
- 依頼 削除、変更(変更案を添える)、用量・用法の確認、日数の確認、処方意図の確認
年報の「結果」の区分(削除、他成分への変更、減量、増量、用法変更など)が、依頼の形の候補になります。
事例3 同じ医療機関からリフィル処方箋が重複した
年報の記述 80歳代の患者にアジルサルタン錠20mg「サワイ」、ラベプラゾールNa錠10mg「サワイ」がリフィル可2回で処方された。2回目の調剤予定日に、患者は勘違いして医療機関を受診した。処方医は前回診察時にリフィル可2回で処方したことを失念し、今回もリフィル可2回の処方箋を発行した。処方箋を応需した薬剤師がリフィル処方箋の重複に気付き疑義照会を行ったところ、今回の処方箋は発行取り消しとなり、前回発行されたリフィル処方箋で2回目の調剤を行った。
型に当てはめるなら 事実は「同じ薬剤・同じ回数のリフィル処方箋が重複して発行されている」です。年報には、薬剤師が重複に気付いた経緯が書かれているだけで、根拠として何を示したかの記載はありません。依頼は、今回の処方箋の扱いの確認です。
事例4 次回受診日とリフィル回数がずれていた
年報の記述 20歳代の患者にシダキュアスギ花粉舌下錠5,000JAU 28日分リフィル可2回が処方された。薬剤師は患者から、次回の受診日は84日後であることを聴取した。リフィル回数の間違いの可能性を疑った薬剤師が処方医に疑義照会を行ったところ、リフィル可3回に変更になった。
型に当てはめるなら 事実は「28日分・リフィル可2回の処方と、患者から聴取した次回受診日84日後」、依頼はリフィル回数の確認です。
4件の照会のきっかけは、それぞれ違います。事例1は通常の用量との違い、事例2は投与日数制限のある薬剤がリフィル対象外であるという制度上の条件、事例3はリフィル処方箋の重複、事例4は患者から聴取した次回受診日です。事実と根拠を分けて並べておくと、依頼の中身を整理しやすいと考えます(筆者の提案です)。
年報の数字(2025年年報)
日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業は、薬局から報告された事例を分析して提供する事業で、2025年12月末の参加薬局数は49,310施設です(2025年年報 図表Ⅱ-1-1)。報告の対象は、調剤に関するヒヤリ・ハット事例、疑義照会や処方医への情報提供に関する事例、特定保険医療材料等に関する事例、一般用医薬品等の販売に関する事例です。以下の数字は薬局から報告された事例の集計で、全国で行われた疑義照会の件数そのものではありません。
| 項目(2025年年報の図表) | 数字 |
|---|---|
| 報告件数の内訳(図表Ⅰ-2) | 合計114,904件のうち、疑義照会や処方医への情報提供に関する事例が94,872件(82.6%)、調剤に関する事例が19,821件(17.3%) |
| 疑義照会や処方医への情報提供(図表Ⅱ-3-21) | 行った94,272件、行ったが当薬局の問い合わせた内容に誤りがあった201件、行うべきところ行わなかった399件 |
| 発見場面(図表Ⅱ-3-22) | 処方監査61,883件(65.5%)、調製〜交付30,459件、交付後(経過観察中や在宅患者への訪問時も含む)2,131件 |
| 情報提供の手段(図表Ⅱ-3-27) | 電話85,501件(90.5%)、FAX6,398件、服薬情報提供書1,287件、ICT186件、その他1,101件 |
図表Ⅱ-3-22以降は、行った事例と誤りがあった事例を合わせた94,473件が母数です(割合は筆者が計算しました)。
何について照会したか(図表Ⅱ-3-23 事例の内容)
| 事例の内容 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 投与量 | 23,601 | 25.0% |
| 同効薬の重複 | 12,713 | 13.5% |
| 病態禁忌 | 8,644 | 9.1% |
| 同成分の重複 | 8,611 | 9.1% |
| 相互作用 | 8,107 | 8.6% |
| 副作用歴 | 6,736 | 7.1% |
| 用法 | 6,459 | 6.8% |
| 薬剤名 | 3,794 | 4.0% |
「その他」を除く上位8項目だけを載せています。そのほかに、アレルギー・患者の体質、処方漏れ、投与日数、副作用の発現、記載事項の不備(391件)などの項目があり、合計は94,473件です。
照会の結果(図表Ⅱ-3-24) 薬剤削除26,706件(28.3%)、薬剤変更(他成分への変更)25,902件(27.4%)、薬剤減量(1回量または1日量)15,698件(16.6%)、薬剤増量7,592件(8.0%)、用法変更6,537件(6.9%)、変更なし1,786件(1.9%)などでした。
判断した理由(図表Ⅱ-3-26) 当該処方箋のみで判断した事例が25,694件で、残りは処方箋とその他の情報で判断した事例です。その他の情報は複数回答で、薬局で管理している情報(薬剤服用歴)31,003件、患者・家族から聴取した情報25,716件、お薬手帳25,086件、患者の現疾患・副作用歴等10,514件などでした。処方箋のみで判断した事例は27.2%(筆者が計算)で、残りの約7割は、処方箋以外の情報も使って判断した事例です。
仮に変更前の処方どおりに服用した場合の患者への影響(図表Ⅱ-3-25) 「患者に健康被害が生じたと推測される」が63,873件(67.6%)、「適正な治療効果を得られなかったと推測される」が22,698件、「患者に影響はなかったと推測される」が7,902件でした。この区分は、報告した薬局による推測です。
行わなかった事例の内訳と発生要因
図表Ⅱ-3-28の「すべきであった内容」は、投与量75件、同効薬の重複47件、相互作用47件、用法43件、病態禁忌33件、同成分の重複30件の順で多くなっています(そのほか「その他」が32件)。行った事例(図表Ⅱ-3-23)で上位の項目のうち、投与量、同効薬の重複、同成分の重複、相互作用、用法、病態禁忌は、行わなかった事例でも件数が多い項目です。副作用歴は、行った事例では6,736件ありましたが、行わなかった事例では12件でした。
図表Ⅱ-3-20の発生要因のうち、推定される医療機関側の要因(複数回答)では、処方内容の確認不足が36,024件、患者とのコミュニケーション不足・齟齬が34,094件、知識不足が14,509件、カルテ記載の不備が12,362件でした。この表は、疑義照会や処方医への情報提供に関する事例の発生要因です。
共有すべき事例の件数
2025年に提供された共有すべき事例は35件で、そのうち「疑義照会・処方医への情報提供」の区分が21件です(2025年年報 図表Ⅰ-5)。
よくある質問
疑義照会は法律で決められているのですか?
はい。薬剤師法第24条に、薬剤師は処方せん中に疑わしい点があるときは、処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならないと定められています。
疑義照会の回答は、どこに記録しますか?
薬剤師法施行規則第15条第三号に、疑わしい点を確かめた場合には「その回答の内容」を処方箋に記入すると定められています。調剤録の記入事項にも同じ内容が挙がっており(施行規則第16条第十号)、調剤録は、調剤済みの処方箋や薬剤服用歴等に必要事項が記載されていれば規定を満たすとする通知があります(薬生総発0831第6号 記の2の(1))。
疑義照会は、電話とFAXのどちらが多いですか?
薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の2025年年報(図表Ⅱ-3-27)では、疑義照会や情報提供を行った94,473件のうち、電話が85,501件(90.5%)、FAXが6,398件でした。
出典
- 薬生総発0831第6号(令和2年8月31日)の記の2の(1)。福井県掲載のPDF(2026年10月2日確認)。調剤録の記入事項は薬剤師法施行規則第16条第十号(e-Gov法令検索で2026年10月2日に条文を確認)。
- 薬剤師法(昭和35年法律第146号)第24条、第26条、薬剤師法施行規則(昭和36年厚生省令第5号)第15条(e-Gov法令検索。2026年9月18日に条文を取得して確認)。薬剤師法
- 日本医療機能評価機構 薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 2025年年報(図表Ⅰ-2、Ⅰ-4、Ⅰ-5、Ⅱ-1-1、Ⅱ-3-20〜28。2026年10月2日確認)
- 同 共有すべき事例、同 年報一覧(2026年10月2日確認)

