適応外の処方は保険で通る?審査情報提供事例の見方と55年通知
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。適応外の処方が保険診療で認められるのかという疑問と、審査情報提供事例の探し方・読み方を、公式の資料をもとに整理しました。
保険で通る? 一律には言えません。公式ページに、事例の適否は「画一的あるいは一律的に適用されるものではない」と書かれています。
事例はどこ? 審査情報提供事例のページで、審査の一般的な取扱いが公開されています。薬剤の事例は344事例あります(2026年10月2日確認)。
載っていないときは? 公式ページの説明文には、載っていない使用の取扱いは書かれていません。ガイドラインや添付文書を確認し、判断がつかない処方は処方医に問い合わせます。
適応外の処方は、保険で通る?
一律には言えません。厚生労働省の通知には、保険診療における医薬品の取扱いは、厚生労働大臣が承認した効能又は効果、用法及び用量(通知では「効能効果等」と略されています)によることとされている、と書かれています。添付文書の「効能又は効果」「用法及び用量」に書かれた範囲が基本になるということです。
適応外の処方は、この基本からはみ出した使い方です。はみ出していても、保険診療のなかで認められる場合があります。その取扱いに関わる通知が、昭和55年9月3日保発第51号の通知(55年通知)です。
55年通知の宛先は、社会保険診療報酬支払基金理事長です。有効性と安全性が確認された医薬品を薬理作用に基づいて処方した場合の取扱いを学術上誤りなく行うこと、承認された効能効果等を機械的に適用して都道府県の間でアンバランスを来さないようにすることを、審査をする側に求めています。通知の記の1と2には、薬剤名も病名も書かれていません。個別の薬と病名の組み合わせを許可する内容は含まれていません。
審査情報提供事例のページには、次の注意書きがあります。
「本提供事例に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意ください」
事例に載っている使い方であっても、審査は個別の診療内容を見て行われます。「必ず通る」とは言えません。通知の原文は、末尾の「くわしい条件」に入れました。
審査情報提供事例は、どこで探せる?
公開ページの運営主体は、現在のページ表記で「医療情報基盤・診療報酬審査支払機構」です。審査支払機関は、審査の透明性を高めるため、審査上の一般的な取扱いを「審査情報提供事例」として公開しています。薬剤の事例は、2026年10月2日時点のページで344事例あります。
薬剤の事例は、薬効コード別の一覧ページがあります。全事例をまとめたPDFも、「提供日順」と「薬効コード順」の2種類でダウンロードできます。
適応外使用の事例は、厚生労働省保険局医療課長・歯科医療管理官の通知「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」で周知されることがあります。通知の前文は、「くわしい条件」に入れました。
事例は、どう読む?
見る場所は3つです。使用例の病名・目的の文言、留意事項の条件(用量、併用、検査など)、承認されている効能・効果との違いです。事例に書かれた病名や用量と、手元の処方箋の内容が一致するかどうかを、1行ずつ見比べます。
実物4件のうち、禁忌が出てくる事例412と、用量の上限が示されている事例316を、ここに載せます。事例166と事例419は「くわしい条件」に入れました。事例番号と文言は、ページの記載をそのまま写しています。
メトホルミン塩酸塩【内服薬】(糖尿病5)
使用例 「原則として、「メトホルミン塩酸塩【内服薬】」を「緩徐進行1型糖尿病(probable)」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める。」 根拠 「薬理作用が同様であり、妥当と推定される。」
留意事項(2) 「インスリン依存状態の1型糖尿病に対する本剤の単独投与は禁忌である。このため、必ず内因性インスリン分泌能の残存を確認してから使用する。」 《令和8年2月25日新規》です。留意事項に、禁忌との関係と、使用前に確認すべきことが書かれている例です。
ガバペンチン【内服薬】(ペインクリニック1)
承認されている効能・効果 「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」
使用例 「原則として、「ガバペンチン【内服薬】」を「神経障害性疼痛」に対して「通常、成人には、ガバペンチンとして300mg~900mgを1日3回分割経口投与」として処方した場合、当該使用事例を審査上認める。」
根拠 「薬理作用が同様であり、妥当と推定される。」 留意事項 「当該使用例は、単剤での投与を認める。」と、1日最高投与量は2400mgまでとすること。
事例に載っていないときは、どうする?
事例に載っていない適応外使用について、公式ページの説明文は取扱いを述べていません。審査は各審査委員会の見解に基づいて行われ、個別の診療内容を見て判断されます。載っていないことを理由に「認められない」とも「認められる」とも、公開資料からは言えません。
たとえば、トラゾドン塩酸塩(レスリン、デジレル)は、添付文書の効能又は効果が「うつ病・うつ状態」の1つで、不眠症の適応はありません。審査情報提供事例(薬剤)の全事例PDF(薬効コード順)を2026年10月2日時点で全文検索すると、トラゾドン、レスリン、デジレル、不眠のいずれも0件でした。事例は追加されることがあるので、調べるたびに最新のページで確認します。
適応外の処方には、ガイドラインが選択肢に挙げているものがあります。内服のジルチアゼムは、頻脈性心房細動に使うのは添付文書上は適応外です。JCS/JHRS 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドラインの図16(心機能温存の欄)には、ベラパミル経口・ジルチアゼム経口が選択肢として挙げられています。
処方箋の疑わしい点を処方医に確かめる義務は、薬剤師法第24条に定められています。審査情報提供事例は審査上の取扱いの資料で、疑義照会の根拠法令とは別の制度です。疑義照会の組み立て方は、疑義照会の型(事実・根拠・依頼)の記事にまとめました。
調べる手順は?
- 処方された成分名・剤形と、病名または目的を確認する。処方箋と、添付文書の「効能又は効果」「用法及び用量」を見ます。
- 事例のPDF(薬効コード順)を成分名で検索する。審査情報提供事例(薬剤)の全事例PDFを使います。
- ヒットした事例の「使用例」の病名・剤形・用量を、処方と照らす。事例ページの使用例、留意事項を見ます。
- 留意事項の条件(用量の上限、単剤、事前検査など)を満たしているか見る。
- ヒットしなければ、ガイドラインや添付文書を確認する。判断がつかない処方は処方医に問い合わせます(薬剤師法第24条)。
事例PDFは27MBほどあります。ファイルサイズが大きいので、パソコンでの検索が向いています。事例は成分名(「ハロペリドール」「メトホルミン塩酸塩」など)で載っているため、成分名で検索します。
くわしい条件
55年通知の掲載形式
厚生労働省の法令等データベースに掲載されている通知は、昭和55年9月4日の保険発第69号(厚生省保険局医療課長から各都道府県民生主管部(局)保険・国民健康保険課(部)長あて)で、別添として昭和55年9月3日付の保発第51号(厚生省保険局長から社会保険診療報酬支払基金理事長あて)を周知しています。件名は「保険診療における医薬品の取扱いについて」です。
55年通知の原文(記の1と2)
1 「保険診療における医薬品の取扱いについては、厚生大臣が承認した効能又は効果、用法及び用量(以下「効能効果等」という。)によることとされているが、有効性及び安全性の確認された医薬品(副作用報告義務期間又は再審査の終了した医薬品をいう。)を薬理作用に基づいて処方した場合の取扱いについては、学術上誤りなきを期し一層の適正化を図ること。」
2 「診療報酬明細書の医薬品の審査に当たっては、厚生大臣の承認した効能効果等を機械的に適用することによって都道府県の間においてアンバランスを来すことのないようにすること。」
厚生労働省の法令等データベースでは、この通知が基にした昭和54年8月29日付の書簡は「略」とされています。通知の読み手は審査をする側です。
通知の対象は「有効性及び安全性の確認された医薬品」で、括弧書きで「副作用報告義務期間又は再審査の終了した医薬品をいう」と定義されています。再審査が終わっていない薬が対象に入るかどうかは、通知には書かれていません。
適応外使用の通知の前文
令和7年9月29日の保医発0929第1号は別添が2事例(406グリベンクラミド、407コルヒチン)、令和8年2月25日の保医発0225第1号は別添が408〜422の15事例(この記事で紹介する412と419を含む)です。
どちらの通知にも、55年通知を引いたうえで、診療報酬明細書の医薬品の審査に当たり「学術的に正しく、また、全国統一的な対応が求められている」と書かれています。続けて「これを踏まえ、今般、当該効能効果等の適応外使用の事例について、社会保険診療報酬支払基金が設置している『審査情報提供検討委員会』において検討が行われ、検討結果が取りまとめられたところである」とあり、「厚生労働省としては、別添の検討結果は妥当適切なものと考えているので、その取扱いに遺漏のないよう関係者に対し周知徹底を図られたい」と書かれています。
公式ページの説明
ページには、審査は各審査委員会の医学的・歯科医学的見解に基づいて行われていること、審査の公平・公正性に対する信頼を確保するため「審査における一般的な取扱いについて広く関係者に情報提供を行い、審査の透明性を高めることとしております」と書かれています。平成16年7月に「審査情報提供検討委員会」、平成23年6月に「審査情報提供歯科検討委員会」を設置したことも書かれています。
以前の支払基金のアドレス(ssk.or.jp)にアクセスすると、このページに転送されます。
掲載されている事例の数と探し方
掲載されている事例は、2026年10月2日時点のページで、医科が82事例、歯科が256事例、薬剤が344事例です。薬剤の事例は、薬効コード別(100番台の神経系及び感覚器官用医薬品から800番台の麻薬まで)の一覧ページがあります。トップのページには、医科・歯科・薬剤の区分にチェックを入れて探すサイト内検索もあります。
なお、同じ機構のサイトには「審査の一般的な取扱い(調剤)」のページもあります。こちらは調剤報酬請求の審査について、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則や調剤報酬点数表などを踏まえて薬学的見解に基づいて行われていること、示された適否が「すべての個別調剤内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではない」ことが書かれています(ページには令和8年10月の日付が付いています)。この記事で扱うのは、適応外使用の取扱いを載せた「審査情報提供事例(薬剤)」のほうです。
事例ページの項目
薬剤の事例ページには、次の項目が並んでいます(項目名は事例ページの表記です。事例によって項目の有無が違います)。
| 項目名 | 書かれていること |
|---|---|
| 標榜薬効(薬効コード) | 薬の分類と3桁のコード |
| 成分名・主な製品名 | 成分名と剤形(【内服薬】【注射薬】)、製品名 |
| 承認されている効能・効果 承認されている用法・用量 |
添付文書上の承認内容。事例の使い方との違いを見る基準になる |
| 薬理作用 | 薬理作用の記載 |
| 使用例 | 「原則として、『成分名』を『病名や目的』に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」の形で書かれた本体 |
| 使用例において審査上認める根拠 | 「薬理作用が同様であり、妥当と推定される」などの1〜2行 |
| 留意事項 | 用量、併用、事前の検査など、使用にあたっての条件(ない事例もある) |
| その他参考資料等 | ガイドラインや論文の名称(ない事例もある) |
医科や歯科の事例(検査、画像診断など)は、同じ機構のページで「取扱い」「取扱いを定めた理由」という項目名になっています。薬剤の事例は、上の表の「使用例」と「使用例において審査上認める根拠」が、その役目を果たしています。
事例316の補足
《平成30年2月26日新規》、最終更新日は2019年2月25日です。参考資料の1つに神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第2版が挙げられています。
事例166 ハロペリドール【内服薬】【注射薬】(神経11)
承認されている効能・効果 「統合失調症、躁病」
使用例 「原則として、「ハロペリドール【内服薬】【注射薬】」を「器質的疾患に伴うせん妄・精神運動興奮状態・易怒性」に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める。」 根拠 「薬理作用が同様と推定される。」 《平成23年9月26日新規》で、留意事項の欄はありません。
使用例に書かれているのは「器質的疾患に伴うせん妄」です。病名がせん妄でも、器質的疾患に伴うという条件が文言に入っています。
事例419 ボノプラザンフマル酸塩【内服薬】(消化器病1)
使用例 「原則として、「ボノプラザンフマル酸塩【内服薬】」を「CAM耐性ヘリコバクター・ピロリ菌の一次除菌を目的に」処方した場合、当該使用事例を審査上認める。」(CAMはクラリスロマイシンの略です。) 根拠 「薬理作用に基づいており、妥当と推定される。」
留意事項 (1)で用法・用量(ボノプラザン1回20mg、アモキシシリン水和物1回750mg(力価)、メトロニダゾール1回250mgの3剤を同時に1日2回、7日間)が示され、(2)に「ピロリ菌の感受性検査によりクラリスロマイシン耐性の存在が明らかであること。」と書かれています。参考資料は「H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2024年改訂版」です。《令和8年2月25日新規》です。
全事例PDFの詳細
審査情報提供事例(薬剤)の全事例PDF(薬効コード順)は、2026年10月2日時点で全690頁、《令和8年9月14日新規》の事例まで入っています。ファイルサイズは、薬効コード順が約27,162KB、提供日順が約18,654KBです。
よくある質問
適応外の処方は、保険で通りますか?
一律には言えません。55年通知は、有効性と安全性が確認された医薬品を薬理作用に基づいて処方した場合の取扱いを、学術上誤りなく行うよう審査側に求めています。審査情報提供事例のページには、事例に示された適否が「すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではない」と書かれているため、個別の診療内容ごとに判断されます。
審査情報提供事例は、どこで探せますか?
医療情報基盤・診療報酬審査支払機構のサイトに「審査情報提供事例」のページがあり、医科・歯科・薬剤の区分で検索できます。薬剤は、薬効コード別の一覧ページと、「提供日順」「薬効コード順」の全事例PDFが公開されています。
事例に載っていない適応外使用は、認められませんか?
公式ページの説明文には、載っていない使用の取扱いは書かれていません。載っていないことだけで認否を決めることはできないため、ガイドラインや添付文書を確認し、判断がつかない処方は処方医に問い合わせます。
出典
- 厚生労働省 法令等データベース 保険診療における医薬品の取扱いについて(昭和55年9月4日保険発第69号、別添: 昭和55年9月3日保発第51号)(2026年8月1日に全文取得、10月2日に再確認)
- 厚生労働省保険局医療課長・歯科医療管理官 保医発0929第1号 医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(令和7年9月29日)(全日本病院協会の掲載PDFで2026年10月2日確認。別添は406グリベンクラミド、407コルヒチンの2事例)
- 医療情報基盤・診療報酬審査支払機構 審査情報提供事例(2026年10月2日確認)
- 同 審査情報提供事例(薬剤)、事例316(ガバペンチン)、事例166(ハロペリドール)、事例412(メトホルミン塩酸塩)、事例419(ボノプラザンフマル酸塩)
- 同 審査の一般的な取扱い(調剤)(2026年10月2日確認)
- 厚生労働省保険局医療課長・歯科医療管理官 保医発0225第1号 医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(令和8年2月25日)(掲載PDFで2026年10月2日確認。別添は408〜422の15事例)
- 審査情報提供事例(薬剤)全事例PDF(薬効コード順、全690頁、《令和8年9月14日新規》の事例まで。2026年10月2日に全文検索)。トラゾドン塩酸塩の添付文書(レスリン錠、デジレル錠)、JCS/JHRS 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン(図16)。

