コロイド製剤とは?凝析と塩析の見分け方を過去問で整理
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。コロイドは、親水コロイド・疎水コロイド・会合コロイド、凝析と塩析、保護コロイドと用語が多くて、混ざりやすい分野です。語呂合わせに頼らず、「粒子がなぜ安定しているのか」という理屈から整理します。国試の過去問も、問題番号つきで紹介します。
毎日の演習は国試必須問題チャレンジで、物理・化学・生物の全体の対策は物理・化学・生物の対策記事で確認できます。
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安定のしかたは? 疎水コロイドは粒子の電荷の反発、親水コロイドは粒子を包む水和で安定しています。
沈むのは? 疎水コロイドは少量の電解質で凝析、親水コロイドは多量の電解質で塩析します。
過去問は? 第105回〜第110回で、コロイドと分散系が出題されています(本文)。
凝析と塩析は、どう見分ける?
「どちらのコロイドか」と「電解質の量」の2つを確認します。疎水コロイドは少量の電解質で凝析、親水コロイドは多量の電解質で塩析します。2つのコロイドがなぜ安定しているのかを先に決めると、沈殿のしかたも自然に決まります。
| 親水コロイド | 疎水コロイド | |
|---|---|---|
| 安定している理由 | 粒子のまわりに水分子が多く結びつく(水和) | 粒子が同じ符号に帯電して、互いに反発する |
| 少量の電解質を加える | ほとんど変化しない | 凝析する(沈殿する) |
| 多量の電解質を加える | 塩析する(沈殿する) | 凝析する |
| 例 | タンパク質、デンプン、ゼラチン | 水酸化鉄(Ⅲ)、金コロイド、硫黄 |
- 凝析: 電解質を加えると、粒子と反対の符号のイオンが粒子のまわりに集まって電荷の反発が弱まり、粒子どうしが集まって沈みます。
- 塩析: 電解質のイオンが水分子を引きつけるため、粒子のまわりの水が減って粒子が集まり、沈みます。少量の電解質では起こりません。
- 保護コロイド: 少量加えると、電解質による凝析から疎水コロイドを守る親水コロイドです(IUPACの用語集の定義)。
コロイドとは?
ある物質の粒子が別の物質の中に散らばっている状態(分散系)のうち、粒子の大きさが分子より大きいものです。IUPAC(国際純正・応用化学連合)の用語集では、分子や粒子が少なくとも一方向で約1nmから1μmの大きさをもつ状態をコロイドと定義しています。含糖酸化鉄注射液、タンパク質の水溶液、石けん水、金コロイドが例です。
約1nm未満の分子やイオンが散らばったものは真の溶液(ブドウ糖注射液、食塩水)で、約1μmより大きい粒子の分散系は粗大分散系(懸濁剤、乳剤の多く)です。
コロイドには、どんな種類がある?
薬学の教科書では、分子コロイド、分散コロイド、会合コロイドの3つに分けて説明するのが一般的です。分類のしかたは教科書によって少し違います。
| 種類 | どんなコロイド? | 例 |
|---|---|---|
| 分子コロイド | 高分子1個がコロイドの大きさ。親水コロイドで、水に溶けて水和して安定 | タンパク質、デンプン、ゼラチン、寒天 |
| 分散コロイド | 水に溶けにくい物質の微粒子が分散。疎水コロイドで、粒子の電荷の反発で安定 | 水酸化鉄(Ⅲ)、金コロイド、硫黄 |
| 会合コロイド | 界面活性剤の分子が集まってミセルをつくる。濃度が臨界ミセル濃度を超えると形成される | 石けん、界面活性剤のミセル |
コロイドは、どんな性質をもつ?
コロイド粒子は、光を散らし、不規則に動き、電場の中で移動します。
- チンダル現象: 光を当てると、光の通り道が光って見えます。コロイド粒子が光を散乱するためです。
- ブラウン運動: 粒子が不規則にふるえるように動きます。熱運動している分散媒の分子が、粒子に不規則にぶつかるためです。
- 電気泳動: 電場をかけると、粒子が一方の電極へ移動します。粒子が正または負に帯電しているためで、移動する向きから電荷の符号がわかります。
- 透析: コロイド粒子は半透膜を通らず、小さな分子やイオンは通ります。半透膜の孔の大きさと粒子の大きさの違いによります。
過去問では、どう出る?
厚生労働省が公表している問題と正答のうち、実務ともつながる3題です。
- 第107回 問199(正答 1、3): コロイド性静脈注射用鉄剤(含糖酸化鉄)の問題です。正しいのは、疎水コロイドを形成する水酸化鉄(Ⅲ)を糖で安定化させた鉄剤であることと、コロイドを不安定化させないように、希釈する場合はpHの変化に注意が必要なことです。添付文書は、希釈が必要な場合は通常、用時10〜20%のブドウ糖注射液で5〜10倍にするとしていて、塩化ナトリウムを加える記載はありません。
- 第105回 問51(正答 3): 温水に溶けて粘稠なゾルとなり、冷やすとゲル化する天然由来の高分子はゼラチンです。流動性のあるコロイド(ゾル)が、冷えると全体が固まった状態(ゲル)になる性質を、親水コロイドの代表例で確認する問題です。
- 第109回 問182(正答 1、2): pHを変えたときのゼータ電位と平均粒子径のグラフを読む問題です。ゼータ電位が0に近いpH 5付近では、粒子どうしの反発がなくなり、最も凝集しやすくなります。
まず「疎水コロイドか親水コロイドか」で、安定の理由(電荷か水和か)を決め、そのあとに電解質の量で、凝析と塩析のどちらかを決めます。この順に考えれば、語呂合わせがなくても選べます。
くわしい条件
コロイドの定義の補足と粒子の大きさの目安
IUPACの用語集には、この大きさの境目は固定されておらず、調べる性質によって多少動くとも書かれています。散らばっている側を分散相、散らばる先を分散媒と呼びます。
| 分類 | 粒子の大きさの目安 | 例 |
|---|---|---|
| 真の溶液 | 約1nm未満(分子・イオン) | ブドウ糖注射液、食塩水 |
| コロイド分散系 | 約1nm〜1μm(IUPAC) | 含糖酸化鉄注射液、タンパク質の水溶液、石けん水、金コロイド |
| 粗大分散系 | 約1μmより大きい | 懸濁剤、乳剤の多く(放置すると沈降・分離しやすい) |
分類の補足
IUPACの分類では、会合コロイドと分子コロイドを合わせて親水性のコロイド(lyophilic colloid)として扱っています。
凝析と保護コロイドの補足
IUPACの用語集は、疎水性のゾルの凝析に必要な電解質の濃度が、反対符号のイオンの価数に強く左右されると説明しています(Schulze-Hardy則)。価数が大きいイオンほど、少ない量で凝析させます。保護コロイドは、疎水コロイドの粒子の表面を親水コロイドが覆い、水和した層で安定させるイメージです。
過去問の一覧
| 回・問 | 問われたこと | 正答 |
|---|---|---|
| 第105回 問51 | 温水に溶けてゾルになり、冷やすとゲル化する天然の高分子(ゼラチン) | 3 |
| 第106回 問196 | 妊娠検査薬(イムノクロマト)の記述のうち、誤っているものを選ぶ設問。選択肢1の「標識には主に金コロイドが用いられる」は正しい記述で、誤りは選択肢3 | 3 |
| 第107回 問49 | 分散系の分散相と分散媒の組合せ | 2 |
| 第107回 問179 | 沈降法による粒子径の測定とストークスの式 | 1、5 |
| 第107回 問199 | コロイド性静脈注射用鉄剤(含糖酸化鉄)。疎水コロイドを糖で安定化、希釈時のpHの変化に注意 | 1、3 |
| 第109回 問91 | 分子間相互作用。ミセル形成に働く力(疎水性相互作用) | 1、4 |
| 第109回 問182 | ゼータ電位と平均粒子径のグラフの読み取り | 1、2 |
| 第110回 問180 | 分散系医薬品と製剤の種類。含糖酸化鉄は分散コロイド、ドキソルビシンのリポソーム | 1、4 |
第107回 問49(分散相と分散媒の組合せ)
サスペンション・エマルション・エアゾール・フォーム(泡沫)・キセロゲルの5つについて、分散相と分散媒の組合せを選ぶ問題でした。正答は2のエマルションで、液体(分散相)が液体(分散媒)に分散した状態です。誤りの選択肢のうち、3のエアゾールと4のフォームは、分散相と分散媒を入れ替えたものです。エアゾールは液体または固体が気体に分散したもの、フォームは気体が液体に分散したものです。1のサスペンションは、分散媒を気体としている点が誤りで、実際は固体が液体に分散したものです。
第105回 問51(ゼラチン)の選択肢
選択肢は、アルブミン、結晶セルロース、ゼラチン、ヒプロメロース、ポビドンでした。
第109回 問91(ミセル形成の力)
分子間相互作用の問題で、「水中における界面活性剤のミセル形成はイオン結合による」という選択肢3が誤りでした。正答は1と4で、4は「疎水性相互作用は水溶液中のタンパク質の高次構造の形成及び安定化に寄与している」です。界面活性剤は、水になじむ部分と油になじむ部分をあわせもちます。水中では油になじむ部分が水を避けて内側に集まり、水になじむ部分が外側を向いたミセルをつくります。この「水を避けて集まる力」が疎水性相互作用です。
第109回 問182(ゼータ電位)の解説
バイオ医薬品の微粒子製剤について、グラフでは、ゼータ電位はpH 2付近で正の値、pH 5付近で0に近くなり、pH 8以上では負の値で一定になります。平均粒子径はpH 5付近で大きなピークをもっています。正答は1と2です。pH 2では粒子は正に帯電していて(選択肢1)、ゼータ電位が0に近いpH 5付近では粒子どうしの反発がなくなり、最も凝集しやすくなります(選択肢2)。pH 6付近は、ゼータ電位がまだ0ではないため「電気的に中性」とはいえません(選択肢3)。pH 8以上は、平均粒子径が小さいまま、負電荷で分散している領域です(選択肢4)。
第107回 問179(沈降法とストークスの式)
アンドレアゼンピペットの装置を使って、懸濁剤の粒子の大きさを測る内容でした。正答は1と5です。球形の粒子が液体中を沈む速さは、ストークスの式に従い、粒子の直径の2乗に比例し、粒子と分散媒の密度の差に比例し、分散媒の粘度に反比例します。選択肢4の「粒子径を1/3にすると沈降速度は1/3になる」は、2乗に比例するので1/9となり誤りです。選択肢5は、粘度が1.6倍で、粒子と分散媒の密度の差が1.0から0.8 g/cm3になると、速さが半分、つまり沈降時間が2倍になります。選択肢3の「コロイド粒子の粒子径を測定することができる」は誤りです。コロイド粒子は小さく、ブラウン運動の影響が大きいため、一般に、重力による沈降を使った測定には向きません。
第107回 問199(含糖酸化鉄)の誤りの選択肢
誤りの選択肢は、2(静脈注射後、コロイドはすぐに不安定化し、鉄イオンが遊離する)と、4(イオン強度を上げるために塩化ナトリウム液を加えて5%以上の塩濃度を維持する)です。添付文書の薬効薬理の項は、含糖酸化鉄が細網内皮系に取り入れられ、ここで徐々に解離してトランスフェリンの形になると書いています。選択肢2の「すぐに不安定化し」は、この記載と合いません。
第110回 問180(分散系医薬品)
分散系医薬品と製剤の種類(投与時)の組合せを2つ選ぶ問題でした。正答は、1(ドキシル注:リポソーム)と4(フェジン静注:分散コロイド)です。5のディプリバン注は、添付文書の剤形が乳濁性注射液(エマルション)で、サスペンションとの組合せは合いません。2のネオーラル内用液と3のリュープリンは、正答に含まれません。
よくある質問
疎水コロイドと親水コロイドは、何が違いますか?
水との親和性が違います。親水コロイドは粒子の周りに水分子が多く水和していて、電解質を多量に加えると塩析で沈殿します。疎水コロイドは水和が少なく、粒子の電荷による反発で安定しているため、少量の電解質で凝析します。親水コロイドの例はタンパク質やゼラチン、疎水コロイドの例は水酸化鉄(Ⅲ)です。
凝析と塩析は、どう見分けますか?
対象のコロイドと電解質の量で見分けます。疎水コロイドに少量の電解質を加えて沈殿するのが凝析、親水コロイドに多量の電解質を加えて沈殿するのが塩析です。凝析では、価数の大きい反対符号のイオンほど少ない量で効きます。
含糖酸化鉄注射液(フェジン静注)を希釈するとき、何に注意しますか?
添付文書(14.1 薬剤調製時の注意)には、pH等の変化により配合変化が起こりやすいので他の薬剤との配合に注意すること、希釈が必要な場合は通常、用時10〜20%のブドウ糖注射液で5〜10倍にすることと書かれています。塩化ナトリウムを加える記載はありません。

