酸性度の強さの順番|カルボン酸・フェノール・アルコールをpKaで比較
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。有機化学の「酸性度の強さの順番」は、語呂合わせで丸暗記しても、置換基がついた問題で手が止まりやすい分野です。カルボン酸・フェノール・アルコール・スルホン酸・アミンの順番を、pKaの目安と、その理由とあわせて整理します。国試の過去問3題も、問題番号つきで解説します。
毎日の演習は国試必須問題チャレンジで、物理・化学・生物の全体の対策は物理・化学・生物の対策記事で確認できます。
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順番は? 水中では、スルホン酸、カルボン酸、フェノール、アルコールの順に弱くなります。pKaの目安は、およそ-2、5、10、16です。
理由は? プロトンが外れたあとの共役塩基が、安定なほど強い酸です。
注意は? 順番は条件つきで、水中と気相ではアルコールの順番が逆になります。
酸性度の順番は?
酸性度はpKaで表し、pKaが小さいほど強い酸です。水中では、スルホン酸、カルボン酸、フェノール、アルコールの順に弱くなります。数値は目安で、文献や測定条件によって少し違います。
| 官能基 | 化合物の例 | pKaの目安(水中) |
|---|---|---|
| スルホン酸 | メタンスルホン酸 -1.86 | およそ -2〜-1 |
| カルボン酸 | ギ酸 3.75、酢酸 4.76 | 約3.7〜4.8 |
| フェノール | フェノール 9.99 | 約10 |
| アルコール | メタノール 15.3、エタノール 15.9 | 約15〜19 |
覚えるのは、この4つで十分です。pKaの目安がおよそ-2、5、10、16と、5〜7ずつ開いていると覚えると、問題文に化合物が出てきたときに位置を決めやすくなります。
なぜその順番になる?
酸(HA)がプロトン(H+)を放して共役塩基(A-)になるとき、A-が安定なほど、強い酸になります。安定性を決める理由は4つです。
- 共鳴: 負電荷が広がるほど安定です。カルボキシラートは負電荷が2つの酸素原子に分かれ、フェノキシドはベンゼン環に広がります。アルコキシドは酸素原子1つに局在するので、いちばん不安定です。
- 誘起効果: フッ素、塩素、ニトロ基などの電子を引きつける置換基は、負電荷を安定にします。酢酸(4.76)、クロロ酢酸(2.87)、トリフルオロ酢酸(0.3)の順に、酸が強くなります。置換基がカルボキシ基から離れるほど、効果は弱くなります。
- 原子の種類: 同じ族では、原子が大きいほど負電荷が広がって安定します。そのため、O-HよりS-Hのほうが強い酸で、メタンチオール(10.33)はメタノール(15.3)よりpKaが小さいです。
- 混成: s性が高い(sp、sp2、sp3の順)ほど、電子対が原子核に近く、安定になります。ピリジニウムイオン(窒素がsp2)は5.23、ピペリジニウムイオン(窒素がsp3)は11.12で、sp2のほうが強い酸です。
アミンは、どう比べる?
アミンは塩基として働くので、プロトンが付いた共役酸(アンモニウムイオン)のpKaで比べます。共役酸のpKaが大きいほど、もとのアミンの塩基性が強いことを意味します。たとえば、メチルアンモニウムイオンは10.66、アニリニウムイオンは4.6で、メチルアミンのほうが強い塩基です。
芳香族アミンの塩基性が弱いのは、窒素の非共有電子対がベンゼン環に共鳴で広がり、プロトンを受け取りにくいためです。
順番が逆になる条件は?
酸性度の順番は、比べる条件で変わります。代表例がアルコールです。水中では、メタノール(15.3)、エタノール(15.9)、tert-ブタノール(19.2)の順に強く、アルキル基が大きいほど弱い酸になります。気相では、この順番が逆になり、tert-ブタノールが最も強く、水が最も弱い酸です。
国試では、問題文に書かれた条件で判断します。
過去問では、どう出る?
厚生労働省が公表している問題と正答のうち、酸性度や共役酸のpKaを比べる3題です。
- 第110回 問8(正答 5): シクロヘキサノール、フェノール、p-アミノフェノール、p-クロロフェノール、p-ニトロフェノールから、最も酸性度が高いものを選ぶ問題です。正答はp-ニトロフェノール(7.15)です。ニトロ基は、共鳴と誘起効果の両方で電子を引きつけるので、フェノキシドの負電荷を最もよく安定させます。
- 第109回 問101(正答 5): アニリニウムイオンのパラ位に、水素、塩素、メトキシ基、メチル基、ニトロ基がついた5つから、pKaが最小のものを選ぶ問題です。正答はp-ニトロ体(1.01)です。ニトロ基が電子を最も強く引きつけるので、もとのアミンの窒素が最もプロトンを受け取りにくくなります。
- 第106回 問102(正答 4と5): 第一解離のみを比べて、酸性の強さの比較が正しい組を2つ選ぶ問題です。正しいのは、酢酸 < トリメチルアンモニオ基をもつカルボン酸(正に帯電した窒素が電子を引きつける)と、3-クロロ体 < 2-クロロ体(塩素がカルボキシ基に近いほど誘起効果が強い)です。
3題とも、共鳴、電子を引きつける置換基とその距離、原子の種類、混成の4つを順に確認すれば、答えにたどり着けます。
くわしい条件
pKaの一覧(水中・おもに25℃)
数値は目安で、文献や測定条件によって少し違います。たとえば酢酸には、4.55〜4.76の報告があります。
| 官能基 | 化合物の例 | pKaの目安(水中) |
|---|---|---|
| スルホン酸 | メタンスルホン酸 -1.86、p-トルエンスルホン酸 -1.34 | およそ -2〜-1 |
| カルボン酸(電子を引きつける置換基つき) | トリフルオロ酢酸 0.3、クロロ酢酸 2.87 | 0〜3 |
| カルボン酸 | ギ酸 3.75、安息香酸 4.2、酢酸 4.76、酪酸 4.82 | 約3.7〜4.8 |
| フェノール(電子を引きつける置換基つき) | p-ニトロフェノール 7.15、p-クロロフェノール 9.41 | 7〜9.5 |
| フェノール | フェノール 9.99 | 約10 |
| チオール | メタンチオール 10.33 | 約10 |
| アルコール | メタノール 15.3、エタノール 15.9、tert-ブタノール 19.2 | 約15〜19 |
| ケトンのα位の水素 | アセトン 20 | 約20 |
共鳴と誘起効果の補足
スルホン酸から生じるスルホン酸イオンは、負電荷が3つの酸素原子に広がります。広がる先が多く、酸素原子のような電気陰性度の高い原子が受け持つほど安定になり、酸としては強くなります。酢酸(4.76)がエタノール(15.9)よりも、pKaで10以上強いのは、この共鳴の差が主な理由です。
誘起効果は、結合を数本離れるほど弱くなります。塩素がカルボキシ基の隣(2位)にあるカルボン酸は、1つ離れた3位にあるものより強い酸です。
原子の種類と混成の補足
同じ周期では、電気陰性度が高い原子ほど、負電荷を引き受けやすくなります。一方で、周期表の同じ族を比べるときは、原子が大きいほど負電荷が広がって安定します。
共役塩基の電子対が入る軌道は、s性が高いほど原子核に近く、安定になります。そのため、同じ種類の酸なら、sp3よりsp2、sp2よりspの炭素や窒素に結合した水素のほうが外れやすくなります。
アミンの共役酸のpKa一覧
| 共役酸 | pKa(水中) | もとのアミン |
|---|---|---|
| p-ニトロアニリニウムイオン | 1.01 | p-ニトロアニリン(最も弱い塩基) |
| p-クロロアニリニウムイオン | 3.98 | p-クロロアニリン |
| アニリニウムイオン | 4.6 | アニリン |
| p-トルイジニウムイオン | 5.10 | p-トルイジン |
| ピリジニウムイオン | 5.23 | ピリジン |
| p-アニシジニウムイオン | 5.36 | p-アニシジン |
| アンモニウムイオン | 約9.2(アンモニアのpKb 4.751から換算) | アンモニア |
| メチルアンモニウムイオン | 10.66 | メチルアミン |
| ピペリジニウムイオン | 11.12 | ピペリジン(最も強い塩基) |
ベンゼン環に電子を引きつける置換基(ニトロ基、塩素)がつくと、芳香族アミンの塩基性はさらに弱くなり、電子を与える置換基(メチル基、メトキシ基)がつくと、アニリンより強くなります。
気相での酸性度(NIST)
NISTのデータベースでは、気相での脱プロトン化のエンタルピー(値が小さいほど強い酸)は、tert-ブタノールが約1568 kJ/mol、メタノールが約1597 kJ/mol、水が約1633 kJ/molと報告されています。
過去問の詳しい解説
第110回 問8: pKaの目安は、p-ニトロフェノールが7.15、p-クロロフェノールが9.41、フェノールが9.99、p-アミノフェノールが10.46で、アルコールのシクロヘキサノールは、メタノール15.3やエタノール15.9などのアルコールと同じく、これらよりさらに弱い酸です。アミノ基は電子を与える側に働き、酸性を弱めます。
第109回 問101: 共役酸のpKaは、p-ニトロ体が1.01、p-クロロ体が3.98、無置換のアニリニウムが4.6、p-メチル体が5.10、p-メトキシ体が5.36です。
第106回 問102: 「弱い < 強い」の向きで書かれた5組の比較です。選択肢1(CH3SH < CH3OH)は誤りです。S-HはO-Hより強い酸で、メタンチオールは10.33、メタノールは15.3です。選択肢2(ピリジニウム < ピペリジニウム)は誤りです。sp2窒素のピリジニウム(5.23)のほうが、ピペリジニウム(11.12)より強い酸です。選択肢3(CF3を3つもつアルコール < tert-ブタノール)は誤りです。トリフルオロメチル基(CF3)が電子を引きつけてアルコキシドを安定させるため、CF3を3つもつアルコールのほうが強い酸です。
ギ酸が酢酸より強い理由
ギ酸のpKaは3.75、酢酸は4.76です。酢酸ではメチル基の電子供与によって、カルボキシラートの負電荷がやや不安定になると説明されます。ギ酸にはその電子供与基がないため、共役塩基がより安定になります。
よくある質問
官能基の酸性度の強さは、どんな順番ですか?
水中での大まかな目安は、スルホン酸、カルボン酸、フェノール、アルコールの順で弱くなります。pKaの目安は、メタンスルホン酸が-1.86、酢酸が4.76、フェノールが9.99、エタノールが15.9です。同じ種類の中では、電子を引きつける置換基があるほど強くなります。
フェノールは、なぜアルコールより酸性が強いのですか?
プロトンが外れてできるフェノキシドの負電荷が、ベンゼン環に共鳴で広がって安定するからです。アルコールから生じるアルコキシドは、負電荷が酸素原子に局在します。共役塩基が安定なほど、もとの酸は強くなります。
アミンの強さは、酸性度でどう比べますか?
アミンは塩基として働くため、プロトンが付いた共役酸(アンモニウムイオン)のpKaで比べます。共役酸のpKaが大きいほど、そのアミンは強い塩基です。たとえば、メチルアンモニウムイオンは10.66、アニリニウムイオンは4.6で、メチルアミンのほうが強い塩基です。

