日局のシステム適合性|理論段数・シンメトリー係数・分離度の計算
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どーも、病院薬剤師のひゃくさんです。日本薬局方(日局)のクロマトグラフィーに出てくる、理論段数、シンメトリー係数、分離度の計算方法をまとめました。クロマトグラムから読んだ数値を式に入れて、基準値と比べれば判定できます。式は日局の一般試験法 2.00 クロマトグラフィー総論の記号のままで、数値例は自作です。
理論段数は? N = 5.54 × (tR / wh)²。whは、ピーク高さの中点でのピーク幅です。
シンメトリー係数は? AS = w0.05 / 2d。別に規定するもののほか、0.8~1.8です。
分離度は? RS = 1.18 × (tR2 − tR1) / (wh1 + wh2)。1.5以上で、ピークが完全に分離します。
システム適合性とは?
クロマトグラフィーに使う装置とカラムが、その試験を行うのに十分な性能で動いているかを、試験のたびに確かめる手順です。日局の2.01 液体クロマトグラフィーでは、規定された適合要件を満たさないとき、そのシステムで行った品質試験の結果を採用してはならないと書かれています。基本的に「システムの性能」と「システムの再現性」で評価します。
クロマトグラムから、何を読む?
横軸(時間)から読み取る4つの値を使います。横軸が分でも秒でも構いませんが、式の中では同じ単位にそろえます。
| 記号 | 意味 | 使う式 |
|---|---|---|
| tR | 保持時間(注入から最大ピークまでの時間) | 理論段数、分離度 |
| wh | ピーク高さの中点(h/2)でのピーク幅(半値幅) | 理論段数、分離度 |
| w0.05 | ピーク高さの1/20の高さでのピーク幅 | シンメトリー係数 |
| d | ピーク頂点から下ろした垂線と、1/20の高さでのピーク立ち上がり側の端までの距離 | シンメトリー係数 |
理論段数は、どう計算する?
理論段数は、カラム性能(カラム効率)を示す数値です。恒温、イソクラティック、又は等密度の条件で得たデータに限って、N = 5.54 × (tR / wh)² で求めます。
たとえば、保持時間6.40分、半値幅0.16分のピークなら、比は6.40 ÷ 0.16 = 40、2乗して1600、5.54をかけて8864段です。
同じ保持時間で半値幅が2倍(0.32分)になると、段数は4分の1(2216段)になります。医薬品各条のオキシブチニン塩酸塩の純度試験(類縁物質)には、システムの性能として、理論段数が5000段以上と書かれています。この例の0.16分は満たし、0.32分は満たしません。
シンメトリー係数は、どう計算する?
ピークの対称性を表す値で、テーリング係数とも呼ばれます。AS = w0.05 / 2d で求めます。AS = 1は左右対称で、1より大きいとピークがテーリング(立ち下がり側が伸びる)、1より小さいとリーディングしています。
たとえば、w0.05 = 0.30分、d = 0.12分なら、2d = 0.24、AS = 0.30 ÷ 0.24 = 1.25です。1より大きいのでテーリングしていて、0.8~1.8に入っています。
基準値は、別に規定するもののほか、0.8~1.8です。医薬品各条で、1.5以下のように上限を決めている試験もあり、その場合は各条の値が優先します。
分離度は、どう計算する?
隣り合う2つのピークがどれだけ離れているかを、ピークの幅と比べて表す値です。RS = 1.18 × (tR2 − tR1) / (wh1 + wh2) で求め、tR2 > tR1とします。1.5以上で、ピークが完全に分離します(ベースライン分離ともいいます)。
たとえば、tR1 = 5.20分、tR2 = 6.10分、半値幅0.20分と0.24分なら、保持時間の差が0.90分、半値幅の和が0.44分です。RS = 1.18 × 0.90 ÷ 0.44 = 2.41で、1.5以上なので、完全に分離しています。
分離度の基準値は、医薬品各条の試験ごとに決まっています。アナストロゾール錠の定量法のシステム適合性では、パラオキシ安息香酸エチル、アナストロゾールの順に溶出して、その分離度は4以上と書かれています。
再現性(%RSD)は、どう計算する?
標準溶液を繰り返し注入して、ピークレスポンス(ピーク面積など)のばらつきを、相対標準偏差(%RSD)で見ます。%RSD = 100 / ȳ × √{ Σ(yi − ȳ)² / (n − 1) } です。yiは測定値、ȳは平均値、nは測定回数です。
たとえば、6回注入して、ピーク面積が1000、1004、998、1003、996、999だったとします。平均は1000で、平均との差の2乗の和は46です。46 ÷ 5 = 9.2で、√9.2 = 3.03(標準偏差)、3.03 ÷ 1000 × 100 = 0.30%になります。オキシブチニン塩酸塩の純度試験(類縁物質)では、標準溶液を6回繰り返すとき、ピーク面積の相対標準偏差は2.0%以下と書かれているので、0.30%は基準内です。
国試では、どう解く?
クロマトグラムの数値が与えられたときは、式に入れて、基準値と比べて判定します。次の順で確認すると、計算ミスが減ります。
- どの値を求めるのか(N、AS、RS)を決め、式の記号と、問題で与えられた数値を対応させます。
- 幅が半値幅(h/2)なのか、1/20高さの幅なのかを見ます。N とRSは半値幅、ASは1/20高さの幅です。
- tRと幅の単位をそろえます。分と秒が混ざっていたら、どちらかに換算します。
- RSでは、tR2(後に出るピーク)から tR1を引きます。
- 求めた値を、問題文に書かれた基準値(または、局方の0.8~1.8、1.5以上)と比べます。
過去問を解くときは、薬剤師国家試験の過去問は何年分・何周?に、解く量と周回の考え方をまとめています。分析化学の機器分析は、分光分析法の光源とガスクロマトグラフィーの検出器の記事も合わせて読むと、検出器と装置の全体がつながります。参考書で体系的に確認したいときは、国試のおすすめ参考書・問題集を見てください。薬学生向けの記事は、薬学生のページにまとめています。模試の得点の位置は、薬ゼミ模試の平均点一覧で比べられます。
くわしい条件
システム適合性の規定
2.00でも、システム適合性が示されなければ、試料の分析は認められないとされています。2.01では、純度試験で「検出の確認」が加わることがあります。システムの性能は、定量法なら被検成分と分離確認用物質との分離度(必要なら溶出順)で決めるのが原則です。適当な分離確認用物質がない場合は、被検成分の理論段数やシンメトリー係数で規定してもよいと書かれています。
2.00の3.の規定は、液体クロマトグラフィーとガスクロマトグラフィーのみに適用されます。2.00の3.に、理論段数、保持係数(質量分布比)、システムの再現性、SN比、シンメトリー係数、分離度/ピークバレー比が、クロマトグラフィーシステムの性能評価に用いられることがあると列挙されています。2.01の6.には、適切な場合は2.00のシステム適合性の項目で評価することもできるが、2.01と2.00を組み合わせることはできないと書かれています。
保持時間とホールドアップタイム
tMはホールドアップタイムで、カラムに保持されない成分の溶出に必要な時間です。保持係数の式で使います。理論段数の式では、tRとwhが同じ単位であればよく、(tR/wh)は単位が消えて比になります。分離度の式も、分子と分母が同じ単位です。
理論段数の補足
理論段数は、被検成分だけでなく、カラム、カラム温度、移動相、保持時間によっても変わると書かれています。同じ装置でも、成分が違えば値が変わります。半値幅が0.20分なら5.54 × (6.40 ÷ 0.20)² = 5673段です。医薬品各条のオキシブチニン塩酸塩の純度試験(類縁物質)には、理論段数およびシンメトリー係数がそれぞれ5000段以上、1.5以下と書かれています。
2.00には、理論段高さ H = L / N も載っています。L はカラムの長さで、N と同じ長さの単位で扱います。カラム長が150 mm(150,000 μm)なら、H = 150,000 ÷ 8864 = 16.9 μmです。
シンメトリー係数の補足と数値の一覧
w0.05は、立ち上がり側の距離dと、立ち下がり側の距離を足した長さです。左右の距離が等しいとw0.05 = 2dになり、ASは1になります。立ち下がり側が長く伸びる(テーリング)ほど、ASは1より大きくなります。
| w0.05(分) | d(分) | AS | 0.8~1.8 |
|---|---|---|---|
| 0.18 | 0.12 | 0.75 | 外れる(リーディング) |
| 0.20 | 0.12 | 0.83 | 入る(わずかにリーディング) |
| 0.30 | 0.12 | 1.25 | 入る(テーリング) |
| 0.42 | 0.12 | 1.75 | 入る(テーリングが強い) |
| 0.44 | 0.12 | 1.83 | 外れる(テーリング) |
分離度の補足と数値の一覧
2つ目のピークの保持時間だけを変えて、半値幅は同じ(0.20分と0.24分)にすると、分離度は次のように変わります。
| tR2(分) | tR2 − tR1(分) | RS | 1.5以上 |
|---|---|---|---|
| 5.60 | 0.40 | 1.07 | 満たさない |
| 5.70 | 0.50 | 1.34 | 満たさない |
| 5.80 | 0.60 | 1.61 | 満たす |
| 6.10 | 0.90 | 2.41 | 満たす |
1.5は、局方が完全に分離する目安として示している値です。ピークが完全には分離せず、ベースライン分離が達成されないときは、ピークバレー比(p/v)がシステム適合性の適合要件の一つとして使われます。p/v = Hp / Hvで、Hpはマイナーピークの基線からの高さ、Hvはマイナーピークとメジャーピークの分離曲線の最下点(ピークの谷)の基線からの高さです。
再現性(%RSD)の補足
2.00では、標準溶液を連続して3回以上注入し、%RSDで表すとされています。yiは、ピーク面積、ピーク高さ、又は内標準法によるピーク面積比の測定値です。2.01では、繰り返し注入の回数は6回が原則です。ただし、グラジエント法を用いる場合や試料中に溶出が遅い成分が混在する場合など、1回の分析に時間がかかる場合には、6回注入時とほぼ同等のシステムの再現性が担保されるように、ばらつきの許容限度値を厳しく規定することで、回数を減らしてもよいとされています。
数値例の手順は、平均値 6000 ÷ 6 = 1000、平均からの差が0、+4、−2、+3、−4、−1、2乗の和が0 + 16 + 4 + 9 + 16 + 1 = 46です。
有効成分や添加剤の定量で、純物質の目標含量が100%で、システムの再現性の要件が規定されていないときは、2.00の表2.00-1の値を超えてはいけません。最大許容相対標準偏差は、%RSDmax = K × B × √n / t90%,n−1で決まります。Kは0.349、Bは(医薬品各条中の含量規格の上限 − 100)%、nは注入回数(3~6)、tは90%確率水準のステューデントのt値(両側検定、自由度n − 1)です。
| B(%) | n = 3 | n = 4 | n = 5 | n = 6 |
|---|---|---|---|---|
| 2.0 | 0.41 | 0.59 | 0.73 | 0.85 |
| 2.5 | 0.52 | 0.74 | 0.92 | 1.06 |
| 3.0 | 0.62 | 0.89 | 1.10 | 1.27 |
含量規格が98.0~102.0%なら、上限が102.0なのでB = 2.0です。6回注入した%RSDが0.85%以下なら、この表の基準を満たします。数値例の0.30%は満たします。
SN比・保持係数・分離係数
| 項目 | 式 | 記号の意味 | 数値例 |
|---|---|---|---|
| SN比 | S/N = 2H / h | Hは標準溶液のクロマトグラムの被検成分のピーク高さ。hはブランクを注入して得たノイズ幅 | H = 60、h = 4なら30。定量限界はSN比10に相当 |
| 保持係数 k | k = (tR − tM) / tM | tMはホールドアップタイム | tR = 5.20、tM = 1.00なら4.2 |
| 分離係数 α | α = k2 / k1 | 隣り合う2つのピークの保持係数の比。通常は1より大きい | k1 = 4.2、k2 = 5.1なら1.21 |
SN比の式のHとhは、どちらも、ピーク高さの中点におけるピーク幅の少なくとも5倍に相当する範囲で測ります。Hは標準溶液のクロマトグラムで、ピークの頂点から、その範囲で測って外挿した基線までの高さです。hはブランクを注入して得たノイズ幅で、可能なら標準溶液でピークが観察されるのと同じ位置で測ります。
よくある質問
理論段数の式で使う半値幅は、ピークのどの高さの幅ですか?
ピーク高さの中点(h/2)の位置で測ったピーク幅です。日局の2.00では、保持時間tRと半値幅whを同じ単位で表して、N = 5.54(tR/wh)²に入れると書かれています。
シンメトリー係数は、いくつなら適合ですか?
日局の2.00では、別に規定するもののほか、定量などに用いるピークのシンメトリー係数(テーリング係数)は0.8~1.8と書かれています。医薬品各条で、1.5以下や1.4以下のように別の値が決められている試験もあります。
分離度1.5は、何を意味しますか?
日局の2.00では、ピークが完全に分離するとは分離度1.5以上を意味し、ベースライン分離ともいうと書かれています。分離度の基準値そのものは、医薬品各条の試験ごとに決められています。
出典
- 第十九改正日本薬局方(令和8年4月10日 厚生労働省告示第193号)、一般試験法 2.00 クロマトグラフィー総論、2.01 液体クロマトグラフィー(厚生労働省掲載PDF)、医薬品各条のオキシブチニン塩酸塩とアナストロゾール錠(医薬品各条ア~チのPDF)。2026年10月2日に本文を確認。この記事の式と基準値は、この版の記載です。
- PMDA 第十九改正日本薬局方

